福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

原発事故後の状況をポジティブに生かして戦後レジームを清算するためのひかえめな提案

2013-04-01 00:03:05 | 新聞
東京電力が福一原発の事故処理計画を発表した時、ニューヨークタイムズはそれをambitious=「実現性の怪しい大言壮語」と評し、彼らの詐欺師的・山師的ごまかしをやんわりと諷していた。それに対して、今回、アメリカの政策系シンクタンク『スウィンドラーズ・インスティチュート』が極秘で安倍首相に提出した報告書は、『ひかえめな提案Modest proposal』と題されており、何よりも具体性・実現可能性を基本に構想されたものだ・・・

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放射能汚染の全国拡散によって国家的求心力を高め支配関係の安定と経済成長を通して強いニッポンの再生を実現するための現実的かつ慎重でひかえめな提案


米国マサチューセッツ州ミレンドウ、
スウィンドラーズ・インスティチュート上席研究員 ジョナサン・スマッグ

日本国内閣総理大臣 安倍晋三閣下、

閣下の賢明なるご指揮によってやや明るさを取り戻しつつあるとはいえ、閣下の故国、日いずる国の現状は、われわれ同盟国にとっても、依然、深い憂慮の対象であります。原発事故の無残な後遺症を大胆に乗り越えることなしに、経済大国ニッポンの真の復活はあり得ないというのが、残念ながら市場の一貫した見方でもあります。かかる現状を一気に打破し、資本と国民の、自由で活力ある生産活動を阻んでいる東電福一原発の亡霊を完膚なきまでに殲滅し尽くす具体的な方策を以下にご提案いたします。これらの提案は、現実性を第一に、慎重にその実現可能と実質的な効果を吟味した最低限のごくひかえめな政策にその範囲を限っております。できもしないことを声高に述べることは、ひとえに市場の信用の喪失に直結するからであります。

単刀直入に申し上げて、今、閣下のニッポンに必要なのは、放射能汚染の一般的拡散であります。これ以外には東電福一原発の過酷事故を乗り越える手段は存在しません。原発周辺のごく一部の地域を除いて、福島県の諸地域が他のニッポンの諸地域となんの差異もなくなること、福島で生きることも他の場所で生きることも、ニッポンで生きる限り何の違いもなくなること、こうしたニッポンのフクシマ化こそ祖国の一致した活力を再生させる唯一の手段であります。それにはまず、事故現場でたまりにたまった汚染水の海洋投棄を全国に広げることが第一であります。以下に述べますように、放射能汚染の一般的拡散は、物理的な操作であると同時に、大衆の精神に働きかける国民運動とならなければなりませんので、まず、「汚染水」などという呼称を廃止し、これを、マスコミ的には福島第一原発『浄化水』『御用水』『みそぎ水』などと呼び、公文書などでは『非常冷却水』と改めるのが適当でありましょう。そして、環境省が主管して『福島非常冷却水大洋還流特別事業』を震災復興の最優先事項に位置づけ、多くの関連事業者の積極的な協力を得るべく、多額の予算措置を取るべきでありましょう。この特別事業では、原発サイト内の無数のタンクにたまっている放射能汚染水、じゃなかった、非常冷却水を、全国各地に、60ないし100か所ほど建設する『非常冷却水清浄化施設』に分散して運搬し、そこにおいて現地の海水の大量の添加を主とする清浄化プロセスを経たのち、放出基準を満たした正常に清浄な『浄化済み冷却水』を粛々と海洋に還流するものです。還流の地点は、全国の海岸線のできるだけ多くの場所、すべての港湾、すべての漁港、すべての海水浴場、すべての海浜公園、すべての釣りスポット等を網羅し、全国6500ないし14000の海岸地点を選定するのが適切でありましょう。とりわけ、海岸の観光名所では、大々的な還流キャンペーンを行って、現地の観光業の振興にも役立てるべきでありましょう。領土問題が取りざたされている尖閣諸島等の海域にも、やや希釈度を下げた強めの純国産の国粋的『浄化済み冷却水』を還流すれば、諸外国のリアンクションを全く意に介さない頑強な主権の行使を誇示することができ、また、相手国漁船の当該海域における操業や相手国ナショナリストの放射性海域への接近を抑止することができ、さらに、より本質的には、相手国が当該水域を経済水域として権益請求することも無意味にしてしまうでしょう。上陸を阻止するためには、放射性廃棄物の再利用による港湾建設をはじめ、陸上にも放射能関連施設を整備し、そこから、日夜、発散する放射線によって領土の保全を図るのが適切かと思われます。ちなみに、沖縄にも『本土並み』の放射能関連施設を潤沢な予算を行使して十分に建設し、非常冷却水の大洋還流も、珊瑚礁の保護等、環境保全に十分に配慮しつつ『最低でも県外』と同レベルの質と量を確保すべきであると考えます。沖縄差別は許されません。すでに沖縄は、本土との格差を象徴していた異常な『長寿県』という社会・経済的遅滞を脱し、全国レベルの死を享受しつつありますが、今回の放射能全国拡散政策はそうした進歩をいっそう加速させるでありましょう。

閣下もお気づきの通り、放射能の全国拡散は、外交・軍事的にも大きなポテンシャルを秘めております。上に示唆したように、国土の放射能汚染は敵の侵略に対する新しい核の抑止力となります。だれもそんなところをほしがらないからです。また、放射能汚染をものともしない国民の形成は、核兵器使用の効果に疑念を生じさせ、さらに、自国の国土と国民をあえて放射能汚染にさらすことを辞さない国家権力の確固たる姿勢は、いざとなれば、潤沢に保有する核物質を無際限に環境に放出して、地球そのものと無理心中を図る究極の『焦土作戦』をこの権力がそのオプションに持っていることを遺憾なく示し、世界の巨大核権力の心肝を寒からしめることでありましょう。これこそ、わがインスティチュート軍事・戦略部門の初代ディレクター、ストレンジラブ博士の『宿命の日』兵器構想につらなる最終自爆テロでありますが、軍国ニッポン・ファシストの直系の嫡子たる閣下こそ、貴国がこのような宇宙的カミカゼ攻撃の能力を持つことを誰よりも説得的に国際社会に理解させることができます。より短期的・日常的なレベルでは、閣下のご創設になる『国防軍』には、累積被ばく線量の高い青年を優先的に徴用すべきでありましょう。明日をも知らぬ命しらずの若者たちの大和魂は、地球をまたにかけて、世界史に大きな爪痕を残す大活躍を展開するでしょう。

海洋還流の記念すべき第一回目の式典は、伊勢あるいは出雲の海岸に、天皇・皇后両陛下ご臨界のもとでとり行うのがよろしいでしょう。君が代斉唱の後には、式の趣旨を見事に表象した国民的唱歌、『椰子の実』の斉唱もよろしいでしょう。

名も知らぬ 遠き島より
流れ寄る 椰子の実一つ
故郷(ふるさと)の岸を 離れて
汝(なれ)はそも 波に幾月(いくつき)


畏れ多くも両陛下におかれましては、式典に際して、御製・御歌をご披露なされます。

天皇陛下御製
わだつみの絆尊し目路はるか浄めの水の果てもなきかな
皇后陛下御歌
黄泉の火のあがりし岸のみそぎ水いざ注ぎもどせ波のまにまに

内閣総理大臣詠進
子も母もたれもどこへも逃がしゃせぬ愚かな国と言うならば言え

放射性物質を全国各地に拡散するという国策は、ガレキの全国焼却処理では期待された効果を発揮することができませんでしたが、非常冷却水の全国的大洋還流においては、コスト・ベネフィット的観点からも完璧な公共環境政策を実現しております。この政策を断行すれば、原発事故で発生した放射性廃棄物の無期限中間貯蔵施設も、近隣の関東諸県ばかりでなく、全国津々浦々に展開することが可能となりましょう。さらに、懸案の問題、すなわち、各原発でたまりにたまった使用済み核燃料を、全国に分散保管するという原発延命にとって不可欠の政策も容易に実行可能となりましょう。

非常冷却水の大洋還流は、言うまでもなく環境放射線量を全国的に格段に高めます。また、上述した各種の分散保管施設も、運搬時のトラブル、施設の不備、その他想定外の要因で、多くの放射性物質を環境中に放出するでしょう。結果として、ニッポン国の各地の放射能汚染は福島の各地とそん色のないものになり、国土の本質的統一と国民の基本的平等が実現されます。もはや福島の健康被害は問題になりません。どのような疫学的比較調査も何の有意差も生みださないでしょう。風評被害という問題も原理的に成立しません。どれもこれも皆同じだからです。福島の人々に対するいわれのない差別も解消します。だれもかれも皆同じだからです。福島の少女たちは、自分は結婚できるだろうか、などと悩む必要はありません、なぜなら、彼女たちに向かって、『ボクだって君と同じに被曝しているんだ、いや、君以上に被曝しているんだ、これからだって、ずっとずっと死ぬまで君と一緒に被曝してゆくんだ!』と堂々と愛を語る健全な青年たちが全国に後を絶たないからです。愛は被曝を超える!愛の鎖は放射線でも切断されない!そして出生前検診を充実させれば、二人の間には健康な子どもしか生まれてくることはないのです。

しかし、そのように国土が汚染されては、農魚業製品が売れなくなりはしないか?国民の健康が損なわれては、生産活動に支障があらわれたりしないか?と、閣下はご心配でありましょうか。そのようなご心配は、軍国主義ファシストの純血を引く天性の支配者の閣下にふさわしからぬご杞憂と申し上げねばなりません。

ご友人の麻生先生がおっしゃいましたように、国民の寿命がいたずらに長くなり、老人がだらだらと生存し続けるのは国家の損失であります。放射線に由来するがんがおもに老年期に発生する確率が高いという事実は朗報であります。老人が早期にこの世を去れば、年金や医療保険の支出をそれだけ減らすことができます。そもそも生産活動に貢献しない老人の存在は経済成長にとって、重大な足かせです。相続税を適切に強化すれば、老人たちに国家への最後の貢献の機会を与えることもできます。

老人はともかく、それでは、若年でがん死するのは悲惨でしょうか。そんなことはありますまい。半世紀を超える欺瞞とへつらい、不実と屈辱の記憶にさいなまれ、冷え冷えとした孤独と振り払いようもない悔恨―どうして今まで自殺していなかったのか、どうしてそもそも生まれてしまったのか―のなかで迎える老人の死、はたまた、親のないことを自己責任で生きねばならない、いたいけな幼子の将来を案じ、不可抗力への悶々とした絶望的な呪詛のなかで迎える中年の死に比べ、悲嘆と同情にかこまれて惜しまれつつ迎える若年の死―君の学校の机には花が飾られている―は、どんなに望ましく美しいことか。純粋で潔癖な輝かしい死を与えたもうた放射線に君はどれほど感謝の念をささげることか。なるほど、肉体が放射線に屈する前に、自ら命を絶つ若者も増えるかもしれない。が、それは、社会統計的に大変望ましい。自殺の原因として放射線への不安が一般化されていれば、いじめ自殺や体罰自殺をそれとして同定することはより困難となり、教育現場の健全性が容易に維持されるからであります。

農業・漁業の産品に含まれる放射性物質を恐れるむきは、外国産の食材を購入すればよろしい。今後、広範に発展させられる自由貿易体制では、安価で放射能汚染のない外国産食料品が氾濫する。そんなことになったら、国内の一次産業は壊滅するではないか?そう、それでいい。日本の農漁業は一度すべて灰燼に帰し、その後、グローバル資本主義的な大規模経営に再編されてよみがえるでしょう。その時は、外国産を下回る低価格を実現できるでしょう。放射能汚染がその低価格を保証します。そうなれば、すでに日常的な放射線環境に慣れ、いわば放射能づけになった国民は、喜んで安価な国産品を消費するでありましょう。さらに、自由貿易体制が確立した自由で競争的な食品安全基準にしたがって、放射線以外にも健康被害をもたらす様々な物質が食料品にあふれることになりますから、たとえ健康被害があってもその原因を同定することは不可能となるでしょう。放射性物質の存在は、その決定的・運命的・呪術的性格を失います。他のリスクの存在によって相対化されます。リスク=ゼロは存在しない。リスクはあそこにもここにもある。こうして放射能と他の有害物質とはたがいに免罪しあうのです。

しかし、そんなことになっては、老人・若年人口だけでなく、大切な労働力たる壮年の人口の減少も招きかねないではないか、という懸念に対しては、こう言うだけで十分でありましょう。

“I don’t care!” (翻訳不能)

労働人口が減少するなら、低賃金の外国人労働者を導入すればよい(低賃金なので、もちろん低価格の汚染食料品の消費者となる)。労働力の自由な移動も自由貿易体制のかなめの一つです。問題は、日本人の数が増えるか減るかではありません。大切なのは国土や国民ではなく、資本と資本が自由に活動できるシステムであるのは、閣下のよくご存じの通りであります。

むろん、閣下のお孫さんはじめとして、指導者層の子弟については、早くから日本国外の西欧文化圏で、ニュークリアフリーの食品を与えて養育する必要があります。未来の指導者には豊富な知識の養成と、多様な経験が不可欠で、それには健康で長生きする必要があるからです。また、早期からの外国生活を通して、精神的・文化的に、時には血統的にも日本の指導層は白化し、ニッポン列島は大陸の黄禍勢力に対する強力な防波堤となるでしょう。

放射能汚染水の全国拡散放出と相まって、一連の放射性物質の日常化、Atom for everyday life推進が望ましいと思われます。放射性廃棄物リサイクル事業においては、放射性廃棄物を適切に再利用して、建材・食器・家具・日用品を生産し、安価で市場に提供する。放射能添加産品の開発・販売を政府が積極的に後押しする。医薬品、化粧品、サプリ等(ウラン添加済み『リポビタンU』、『ユンケル臨界』、クラシックなラジウム化粧水、セシウム歯磨き(放射能で鍛えた歯茎は歯周病でも出血しない!))。医療分野では、放射線検診・放射線治療を大幅に拡充する。放射線検診・治療の診療報酬を大幅に引き上げ、健康維持のための放射線被曝、健康によい放射線、という日常経験を重層化する。がん治療は放射線で!というキャンペーン推進(『切りもせず薬もいらぬ放射線!』)、放射線で発生したがんは放射線で、毒は毒をもって制す、等。東大・京大医学部に「ホルミシス学科」を新設し、放射線安全思想の普及に努める(こうしたキワモノ学科には、他の学科には合格しない偏差値層が入学するだろうが、こうした落ちこぼれエリートたちこそ、国家の忠実な下僕となって働くであろう)。教育課程での放射線安全教育の確立。道徳科目だけでなく、理系科目はむろん、社会科・国語においても国民原子力思想の涵養が求められる。映画・テレビドラマの制作、ポップソングによる暗示など文化領域でも多くの課題がある。

翻訳:賀来 雄大 (東京電力原子力エネルギープロパガンダ研究所)
協力:寺谷会 行菜 (放射線医学総合研究所・被曝精神病理研究班)

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