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「魔眼の匣の殺人」から数ヶ月後。神紅大学ミステリ愛好会の葉村譲(はむら ゆずる)と剣崎比留子(けんざき ひるこ)が、突然の依頼で連れて行かれた先は、“生ける廃墟"として人気を博す地方のテーマ・パークだった。園内に聳える異様な建物「兇人邸」に、比留子達が追う班目機関の研究成果が隠されていると言う。深夜、依頼主達と共に兇人邸に潜入した2人を、“異形の存在"による無慈悲な殺戮が待ち受けていた。
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4年前、「2018本格ミステリ・ベスト10」、「2017週刊文春ミステリーベスト10」、そして「このミステリーがすごい!2018年版【国内編】」と、自分が注目している“ミステリー関連の年間ブック・ランキング”の3つ全てで1位となった小説「屍人荘の殺人」。著者・今村昌弘氏は以降、「『屍人荘の殺人』シリーズ」として第2弾「魔眼の匣の殺人」を上梓していたが、3ヶ月前に第3弾として上梓されたのが、今回読了した「兇人邸の殺人」。
其れなりに来援客が訪れている“現役の”テーマ・パーク「馬越ドリームシティ」内に在る「兇人邸」が、此の作品の舞台となっている。非人道的な研究を行う組織として戦後に設立され、1985年に解体された班目機関。其処に属していた“マッド・サイエンティスト”の不木玄助(ふぎけんすけ)が所有する兇人邸は、外部からの侵入者を阻み、内部で“巨人”を“飼って”いる。そんな兇人邸に、或る目的の為侵入した葉村達だったが、「次々と人を狩り、其の首を切り落とす、非常に凶暴な巨人。」によって逃げ場を失って行く。そんなパニック映画&ホラー映画を合わせた様な世界観を持つ、クローズド・サークルを題材とした作品。
猟奇的な場面が結構在り、そういうのが苦手な人も居る事だろう。又、冒頭に見取り図が描かれているとはいえ、兇人邸の内部構造が非常に複雑。謎を解いて行く上で、其の構造を“立体的に”理解している必要が在る為、逐一見取り図で確認するのがしなければならないのが面倒。
登場人物達の心理描写は巧みなれど、トリックの説明がくどくどしいのが難。葉村達が邸外に出られない理由が色々記されていたけれど、終わってみれば「あっさり出たなあ。」という違和感も在る。続編の存在を確実視させる終わり方で、「読みたい。」とは思わせるが・・・。
総合評価は、星3.5個とする。