ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

伝える力

2011年03月18日 | TV番組関連

一昔前の「家電製品の取扱説明書」は、本当に酷かった。「小難しいテクニカル・ターム(専門用語)延々羅列されているだけ。」といった感じで、一通り読んでも「だから何なの?」とサッパリ判らない事も珍しくなかった。技術系の人間が専ら取扱説明書の作成に関わっていたのかもしれないが、「自分が知っている事は、当然読む人間も判っている。」という読み手を無視した、自分本位な感じがしたもの。

 

今回の大震災では閣僚東京電力関係者の会見が何度も行われているが、視聴している側からすると「良く判らないなあ。」と感じてしまう事が多い。未曾有の大惨事という事で現場が混乱を来してしまうのは理解出来なくも無いけれど、「良く判らないなあ。」と視聴者サイドに感じさせてしまう大きな要因は、自分本位な発表が少なくないからではないだろうか。最初は判り辛かった枝野幸男官房長官の会見も、具体的な例示をする等、大分改善はされて来た様に感じるが、東電関係者の其れは相変わらず判り辛い点が少なくない。テクニカル・タームや数値を口にするのも重要だろうが、見ている側が最も知りたいのは「安全なのかどうなのか?」の筈。彼等の会見には、一昔前の家電製品の取扱説明書と似た部分を感じてしまう。「何とか被害を出さない様に。」と頑張ってくれている彼等に「ああだこうだ。」と言うのは辛いけれど、もう少し視聴者サイドの立場に立った説明を御願いしたい。

 

一昨日の夜、テレビ朝日系列で生放送された「そうだったのか!池上彰の学べるニュース 3時間スペシャル」では、今回の大震災に付いて取り上げていた。常日頃より「池上彰氏の解説の判り易さ」は認識していたものの、此の日の放送は其の認識を一層強くする内容。「『被曝』と『被爆』の違い。」、「『ミリシーベルト』や『マイクロシーベルト』といった、生体への被曝の大きさの単位。」、「『放射線』、『放射性物質』、『放射能』等の違い。」等々を非常に判り易く解説していた。(簡潔纏められている此方参照の事。)元々知識の在る人にとっては何でもない事かもしれないが、自分の様に生半可な知識しかない人間にとっては、とても在り難い番組だったのは言うも無い。

 

群盲象を評す」という故事が在る。「多くの盲人が(見た事の無い)象(という存在)を撫で自分の手に触れた部分だけで『の様だ。』、『いや、の様だ。』、『いやいや、太鼓の様だ。』等と互いに主張して譲らなかった。」事から、「『凡人は、大人物や大事業の一部しか理解出来ない。』という喩えだ。

 

喩えから離れてしまうが、「象」を初めて撫でた盲人達は嘸かし不安だったろう。何しろ「見た事の無い存在」を、初めて撫でた訳だから。原子力発電所」や「放射能」といった事柄に付いては、多くの国民が「象という存在を初めて撫でた盲人達」と同じ立場に在る様にも思える。「原発は怖い。」とか「放射能は怖い。」といった恐怖感は大なり小なり持っているけれど、意外と其れ等に関する詳しい知識は持ち得ていないから。

 

池上氏の判り易い解説によって、原発等への恐怖感が無くなった訳では無い。「矢張り原発等は怖い。」とい思いを強くした人も少なくないだろう。でも「良く判らないままの恐怖感」と、「色々知り、具体的に何が問題なのか判った上での恐怖感」では、心構えも対処法も全く違う筈だ。

 

 今回の大震災を受けた一連の報道の中には、「視聴者に恐怖心を与えるコメントを、何とか専門家から引き出そうとしているのではないか?」と思ってしまう様なニュースキャスター居る。「恐怖感を与えようが何だろうが、危険性の在る事柄を隠すべきでは無い。」とは思っているが、専門家が否定しているのにも拘らず執拗に「恐怖心を与える様なコメントを引き出そう。」とするは最悪でしか無い。其の点、池上氏は専門家に対して冷静且つ的を射た質問をし、視聴者が知りたいで在ろう事柄を上手く引き出していた。簡潔に内容を纏める能力も素晴らしく、専門家も説明し易かったのではなかろうか。

 

「伝える力とは何なのか?」。其の答えを見せ付けられた様な3時間で、「此の番組を多くの国民が見たならば、無用な不安は消え去るだろうに。」と思わずにはいられなかった。


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