ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「下北サンデーズ」

2006年08月29日 | 書籍関連
本題に入る前に一寸した情報を書いてみたい。”力道山の最後の弟子”と呼ばれ、現在は大日本プロレスの社長兼ちゃんこ屋の店主でも在るグレート小鹿氏が、何とブログ運営をされているとの事。ブログ全盛の現代とはいえ、あのグレート小鹿氏がPCの前に座り、キーボードを叩きながら記事を更新しているかと思うと何だか愛おしさすら感じてしまう。

当該ブログ名は「小鹿注意報!」との事で早速覗かせて戴いたが、プロレスの懐かしい話や裏話が載っていて面白い。又「文は人なり。」と言われるが、彼の文章からは意外な程の繊細さが滲み出ているのも魅力。プロレス創成期の生き証人として、今後も興味深い記事の披露を期待したい。

話はガラッと変わるが、石田衣良氏の近作「下北サンデーズ」を読破した。この作品、上戸彩さん主演でドラマ化されて現在も放送中なので、タイトルだけでも御存知の方は結構居られるのではないだろうか。

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大小様々な劇場が存在し、別名”劇場の街”と称される下北沢が舞台。この地の小劇場でずっと芝居を続けて来たマイナーな小劇団「下北サンデーズ」に、或る日一人の女子大生・里中ゆいかが入団する所からストーリーは始まる。脚本家としての才能は高いのだが、劇団員の女性に手を出しまくる等女癖の悪い座長・あくたがわ翼。不細工役を一手に引き受けるコミック・リリーフにして、心には学歴コンプレックスを常に抱えた馳背川「サンボ」現。*1実生活ではホスト・クラブでアルバイトをし、舞台では軽薄な二枚目役を得意としているジョー大杉は、中年という身で在りながら先の見えない役者生活を過ごしている事に、焦りを感じている。内気な青年役で大人しい女性ファンを掴んでいる八神誠一は、資産家の息子で在りながら何処か心に影を感じさせる人物。他の劇団員達も同様に個性派揃い。八神を除いた皆は一様に貧乏なのだが、夢や希望を追い駆けて日々芝居に励んでいた。

やがて「下北サンデーズ」に”風”が吹き始め、演じる場はより大きな舞台へと移行。劇団として徐々にステップ・アップする一方で、劇団員の間には微妙な不協和音が生じて行く・・・。
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4ヶ月前に出版された「眠れぬ真珠」では、文章の瑞々しさが影を潜めてしまったかに感じられた石田氏。前作の「灰色のピーターパン 池袋ウエストゲートパーク6」で、相変わらずの””比喩のマジシャン”ぶりを見せ付けてくれてホッとしたのだが、今回のこの作品には正直ガッカリさせられた。文章も凡庸ならば、ストーリー展開も在り来たりの一語に尽きる。特にエンディングの余りのベタさ加減*2には、「石田氏、どうしちゃったんだろう?」と思わずには居られなかった。恐らく従来とは異なった、新たな文章スタイルを模索しているのだとは思うが、あの文章の瑞々しさこそが石田氏の最大の魅力なのだから、余り小細工を弄さない方が良いのではないか。

総合評価は星2つとしたい。

*1 馳背川「サンボ」現のキャラクターが、どうにも阿部サダヲ氏とオーバーラップしてしまう。

*2 この作品で唯一心に残ったのは、「やっぱり貴方は女優ね。こういう時に全部を投げ出せる。そういう人間にだけ、神様が舞台の輝きをくれるものなの。」という台詞。思いっきりベタな台詞では在るが・・・。

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1 コメント

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石田衣良氏 (自選孝)
2006-09-03 01:11:21
お久しぶりです。「下北サンデーズ」の書評、拝見致しました。



石田衣良氏の作品をよく読んでおられるgiants-55さんが辛口評価をされるとなると、やはり作品の魅力不足は否めないのでしょうかね。まああとは自分で実際に読んでみてどうかですけど。



本は読んでいませんが、ドラマの方は観ていました。ですが回を追うごとに乗れなくなり、6話を最後に観るのを止めてしまいました。題材が小劇場という事で、興味があったのですが。



石田氏と言えば、これまたドラマの原作としても有名な「池袋ウエストゲートパーク」や「アキハバラ@DEEP」の評価は高いと思うのですが、作品によってバラつきがあるのでしょうかね。まあ読む人によって印象は違うでしょうけど。



私は石田氏の作品についてよく知らないのですが、初期の頃の作品や、「1ポンドの悲しみ」「40 翼ふたたび」と言った、giants-55さんがかつて紹介された事のある本を読むと、魅力が分かるかも知れませんね。
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