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何時もより遅めの通勤途中、僕は駅のホームで偶然、高校の同級生・二和美咲(ふたわ みさき)の姿を目撃した。他人の空似では無く、18歳の儘の彼女を。
誰も不思議に感じない様だが、彼女に恋していた僕だけが、違和感を拭えない。彼女が18歳に留まる原因は、最初の高校3年生の日々に在る?僕は友人や恩師を訪ね、調べ始めた。
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昨年、小説「六人の嘘つきな大学生」で注目を集めた浅倉秋成氏。文壇デビューは2012年という事なので、今年で10年目を迎えた事になる。だが、「浅倉秋成」の名前で上梓された作品は6冊だけなので、作家としては寡作の部類に入るだろう。そんな彼が3年前に上梓した作品「九度目の十八歳を迎えた君と」を読んだ。
「印刷会社に勤務する間瀬(ませ)は、或る日の朝、駅のホームで高校時代の同級生・二和美咲を偶然見掛ける。卒業から“9年”近く経とうとしているのに、彼女は当時と全く変わらない姿だった。制服を着用した美咲は、今も母校に高校3年生として通い続けている。彼女の見た目が当時と全く変わらない事を含め、周囲の人達は全く不思議に感じていない。なのに、何故、自分だけは違和感を持てたのか?」というストーリ。
ミステリーというよりも、SFといった感じの作品。「常識では考えられない設定。」を採るミステリーが近年増えているが、此の「九度目の十八歳を迎えた君と」も、其の範疇に入る。
主人公の間瀬が、兎に角まどろっこしい。学生時代もそうだが、今の彼の言動に苛々感が募る。“空回り”という言葉が作中で屡用いられているが、“度を過ぎた空回り”で在り、「どうして、もっとスッと自分を出さないのか?」とまどろっこしく感じるし、苛々してしまうのだ。
“美咲が年を重ねない理由”は、SFとしては「在り。」だと思う。でも、ミステリーとしてはどうか。“謎解き”の部分がもっと魅力的なら「在り。」だろうが、個人的にはピンと来なかった。「六人の嘘つきな大学生」では、「そんな動機で“問題”を起こしたのだとしたら、犯人は余りにピュア過ぎる。」と感じたが、今回も似た感じが在る。“部室の謎”に付いては、「そういう事だったのか。」と思わされたが。
色んな面で“中途半端さ”や“御都合主義”を感じてしまい、集中して読み通せなかった。総合評価は、星3つとする。