以前に記事のタイトルにもしたが、イソップ物語に「ずるいコウモリ」という話が在る。鳥と獣の間で争い事が起こった際、鳥の側に行っては「自分は鳥類だから鳥の味方だ。」と言い、又、獣の側に行っては「自分は獣類だから獣の味方だ。」と言う等、己が身体形状を利用して、その時々で強い側に付き弱い側から離れるという日和見主義を決め込むコウモリだったが、争いが終結した際、鳥獣双方にその狡猾さが露呈してしまい、誰からも相手にされなくなってしまったという寓話。この場合のコウモリには、自業自得という感が在る。では「自分は鳥類(乃至は獣類)だ。」と首尾一貫主張し続けているのに、どちらからも端から相手にされないどころか、どちらからも「御前は俺達の仲間では無い。敵なのだ。」と差別され続けたとしたら・・・。
*************************************
アメリカで生まれ育った若き日系二世。1人はアメリカを「祖国」として選び、1人は日本へ「帰化」をした。戦勝国と敗戦国に引き裂かれた8月15日、2人の悪夢はその日から始まる。共に日系二世で在り乍ら、闇市の中を片や逃げ、片や相手を追う立場となり・・・。
*************************************
翔田寛氏の近刊本「祖国なき忠誠」は、上記した梗概の如く、2人の日系二世を中心に描かれている。1人は自らをアメリカ人として、そしてもう1人は自らを日本人として、国家に対して只管忠誠を図ろうと努力するも、共に同国籍の人々から「余所者」扱いを受け続ける。この他にも「母親が韓国人、父親は日本人」という在日韓国人の青年も登場するが、彼も日本に於ける朝鮮人社会の中では「父親が日本人。」という理由で幼少時から「余所者」扱いを受けており、「祖国の一員となりたい。」と強く願っているのに「迫害」され続けなければならない者の苦しみや哀しみが溢れている。常に余所者として扱われ、己が存在意義を見い出せない苦しみというのは、筆舌に尽くし難い事だろう。
敗戦直後の日本の複雑な状況が、この小説からはひしひしと伝わって来る。戦前から戦時中を通じて出来上がって行った「アメリカ人・日本人・韓国人」という人種間の怨讐の念は、「8月15日の日本の敗戦を以て、全て手打ちに。」という訳にいかなかったのは自明の理とも言える。より多くの人間が自分自身を相手側の立場に置き換える事が出来たなら、「同じ差別をされたら、どう感じるか?」を思い浮かべる事が出来たなら、不毛な差別合戦は減るだろうに・・・。
アメリカ国籍を有する日系二世が、日本国籍を有する日系二世を戦犯として執拗に追う理由が今一つ理解出来なかったのだが、最後の最後でその“真の理由”が明らかとなり、「そうだったのか・・・。」と新たな哀しみを感じさせられた。
総合評価は星4つ。
*************************************
アメリカで生まれ育った若き日系二世。1人はアメリカを「祖国」として選び、1人は日本へ「帰化」をした。戦勝国と敗戦国に引き裂かれた8月15日、2人の悪夢はその日から始まる。共に日系二世で在り乍ら、闇市の中を片や逃げ、片や相手を追う立場となり・・・。
*************************************
翔田寛氏の近刊本「祖国なき忠誠」は、上記した梗概の如く、2人の日系二世を中心に描かれている。1人は自らをアメリカ人として、そしてもう1人は自らを日本人として、国家に対して只管忠誠を図ろうと努力するも、共に同国籍の人々から「余所者」扱いを受け続ける。この他にも「母親が韓国人、父親は日本人」という在日韓国人の青年も登場するが、彼も日本に於ける朝鮮人社会の中では「父親が日本人。」という理由で幼少時から「余所者」扱いを受けており、「祖国の一員となりたい。」と強く願っているのに「迫害」され続けなければならない者の苦しみや哀しみが溢れている。常に余所者として扱われ、己が存在意義を見い出せない苦しみというのは、筆舌に尽くし難い事だろう。
敗戦直後の日本の複雑な状況が、この小説からはひしひしと伝わって来る。戦前から戦時中を通じて出来上がって行った「アメリカ人・日本人・韓国人」という人種間の怨讐の念は、「8月15日の日本の敗戦を以て、全て手打ちに。」という訳にいかなかったのは自明の理とも言える。より多くの人間が自分自身を相手側の立場に置き換える事が出来たなら、「同じ差別をされたら、どう感じるか?」を思い浮かべる事が出来たなら、不毛な差別合戦は減るだろうに・・・。
アメリカ国籍を有する日系二世が、日本国籍を有する日系二世を戦犯として執拗に追う理由が今一つ理解出来なかったのだが、最後の最後でその“真の理由”が明らかとなり、「そうだったのか・・・。」と新たな哀しみを感じさせられた。
総合評価は星4つ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC442%E9%80%A3%E9%9A%8A%E6%88%A6%E9%97%98%E5%9B%A3
「投げ込まれた手榴弾から自軍を守る為、その上に自らの身体を投げ出して戦死、名誉勲章を得た日系アメリカ人が居た。」といった記述がこの小説に在り、恥ずかし乍らそれで第442連隊戦闘団の事を知りました。己がアイデンティティーに悩み、その“組織“の一員として認めて貰える様に必死に取り組む。普通ならば周りから評価される事でも、“二つの祖国”を持つが故に評価されない哀しみ。色々考えさせられる小説でした。