「龍神の雨」

三遊亭圓楽（５代目）師匠が肺癌にて、７６歳で亡くなられた。圓楽師匠と言えば、亡き父親が教えてくれた逸話を思い出す。幼い頃から病弱だった圓楽師匠は、１９７２年にスチュワーデスだった実妹を日本航空ニューデリー墜落事故で亡くされて以降、「人の命の儚さ」を痛感された様で、「自分も長くは生きられない。」といった発言をされたと言う。うろ覚えだが、御自身では「４０～５０代での死」を予感されていたのではなかったかと。それよりは長く生を得られた訳だが、もっと頑張って欲しかっただけに残念だ。

圓楽師匠で多くが思い浮かべるのは、やはり「笑点」だろう。＊１一定年齢より下の方だと同番組で４代目の司会を担当されていた姿が印象深いのだろうが、自分の場合は三波伸介氏が３代目の司会を務められ、圓楽師匠が大喜利メンバーの長老格で出演されていた頃の姿が印象深い。「ボクちゃん」と気障な台詞を吐く三遊亭小圓遊（４代目）師匠と、現在は「笑点」で５代目の司会を務めておられる桂歌丸師匠との“喧嘩”が面白くて見始めた同番組だったが、全体の雰囲気をピリリと締めていたのは圓楽師匠だった。合掌。

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降り頻る雨よ、願わくば、僕等の罪の全てを洗い流してくれ。

全ては雨のせいだった。雨が全てを狂わせた。雨さえ降らなければ・・・。血の繋がらない親と暮らす二組の兄弟は、それぞれに悩みを抱え、死の疑惑と戦っていた。些細な勘違いと思い込みが、新たな悪意を引き寄せ、二組の兄弟を交錯させる。両親の死の真実は何処に？

全ての疑念と罪を呑み込んで、今未曾有の台風が訪れる。
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「疑心暗鬼を生ず」という有名な諺。「疑いの心が強くなると、何でも無い事に迄恐れたり、怪しく思えてしまう。」という意味だが、道尾秀介氏の小説「龍神の雨」はそういった人間の性をテーマとしている。過去の強烈な出来事から、疑心が更なる疑心を生んで行く。そうなってしまうと疑心を抱いた相手の行為は全て怪しく、そして悪意に満ちた物にしか見えなくなる。程度の差は在るにせよ、そういった経験をした方も少なくない事だろう。

読者をストーリーに引き込む術を熟知している道尾氏だけに、この作品も一気に読み進ませる魅力が在る。「次はどういう展開が待っているのだろう？」という好奇心を、これでもかと擽る内容。唯、十八番の「意外などんでん返し」という点に於いては、他作品よりも弱さを感じた。それなりにミステリーを読んでいる人にとっては、そのキャラクター設定から「真の犯人」に見当を付けるのは、それ程困難では無い気がする。それに結末がやや尻窄みというか、消化不良気味なのも残念な所。

総合評価は星３つ。

＊１　こちらには、笑点の歴史が簡潔に纏められている。