以前にも書いたけれど、大学生の頃迄はちょこちょこパチンコを嗜んでいた。当時は“ヒコーキ台”や“チューリップ台”が主で、2千円も在ればそこそこ遊べたもの。しかし店内に充満する煙草の煙が耐え切れなくなった事、そして何よりも射幸心を煽り立てる“フィーバー台”の登場により、そこそこ遊ぶにも結構な金銭が必要になった事(それ迄は「千円」で済んだのが、「5千円」位必要になった“感覚”。)が、パチンコ屋から自分の足を遠ざける事に。だからパチンコに関する知識が全く無い訳では無いけれど、最近のパチンコ事情に関する知識は皆無に等しい。
第8回「『このミステリーがすごい!』大賞」で優秀賞を受賞した作品「パチプロ・コード」。1972年生まれという著者・伽古屋圭市氏のプロフィールは、「公務員退職後、全国を放浪し、パチプロとして生計を立てる。」となっている。なかなかユニークなプロフィールで在り、己が得意分野を小説に活かしたとも言える訳だ。
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痴漢冤罪事件で会社から馘首されてしまった山岸卓郎。新しい職を捜すもなかなか見付からず、パチプロとして何と無く日々を送っていた或る日、何時もの如くパチンコに興じている最中に謎の美女“シエナ”に見込まれ、大当たりを引く為の違法なセットロム(裏基盤)「ゴト」を用いて一儲けする事になった。更にもう一人の仲間、左頬に10cm近い生々しい切り傷の在る二枚目“ゼンデン”に引き合わされ、暗号の解読を求められる。それは、二人に裏ロム販売を指示していた黒幕の“ホゲ”が売上金を独り占めして姿を消し、金庫に残していった物ものだった。仲間に加わった卓郎は暗号解読に乗り出すが・・・。
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パチンコ用語が次々に登場するけれど、パチンコに関する知識が皆無の読者にも判り易く説明が為されている。くどくどしい説明調の記述では無く、サラリと記されているのは「上手いなあ。」と感じた。読み始めてから暫くは「シエナ」や「ゼンデン」という人名(勿論、仮名だが。)に違和感を覚えたし、「パチンコ業界という“限られた空間”での話を描いただけの話かあ・・・。」というかったるさも感じていたが、暗号を解読して行く展開になった辺りから話はドンドン面白くなって行く。主人公の卓郎が元プログラマーという設定も在って、理系テーストな記述も多く、典型的な文系人間の自分なんぞは「えっと、これはどういう意味だ?」と何度か読み直す事は在ったけれど、それでも「成る程ねえ。」とストーリーに引き込まれていったのだから。
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・ 客や市場に背を背を向け、そのときどきの政治判断、あるいは気まぐれとしか思えない無意味な規制を繰り返しているのが、今のパチンコ業界の実態である。なんら大局的見地もなく、一貫性もなく、恣意的に都度都度おこなわれる規制は、メーカーと役人だけを肥えさせ、しわ寄せはまず弱小の店舗に押し寄せる。次いで客に、ひいては業界全体の縮小に繋がっている。
・ この手の攻略法詐欺、打ち子詐欺は、想像以上に巷に氾濫していた。ネットや雑誌に堂々と広告も出している。その背景には、攻略法販売を刑事事件として扱う難しさがあった。刑法における詐欺罪とは「相手を故意に錯誤に陥らせ、金品や利益を得る行為」である。この説明に異論を唱えるものは誰もいないだろう。しかし、この「相手を故意に錯誤に陥らせ」だかどうかが厄介なのである。たとえば金を振り込ませ、なにも送ってこなければ、または明らかに別のものが送られてくれば、簡単に詐欺罪は適用される。しかし彼らは、ちゃんと攻略法と称するものを送ってくる。打ち子詐欺とて同様である。彼らはちゃんと攻略の手順を教え、店を斡旋している。たとえそれがどんないい加減なものでも、彼らが「確実に有効な攻略法だ」と主張すれば、これは詐欺でなくなる。「相手を故意に錯誤に陥らせ」たわけではなくなるのだ。(中略)社会通念上明らかに詐欺と呼べるものが黙認され続けている現状は、やはり異常とも言えるのではないだろうか。
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パチンコに関してのみで無く、社会に巣くう問題点へも鋭く批判の目を向けている。単なるパチンコ礼讃のストーリーでは無いし、そういった辛辣とも言える指摘をし乍ら、ユーモラスな文章で読み手に堅苦しさを与えていない。実社会に存在していたら「何だこいつ!」と思ってしまう様な“悪人達”も、小説の中では個性的なキャラクターとして自立しているし。
毎年の様に「『このミステリーがすごい!』大賞」の最終選考委員達は「回を重ねる毎に、応募者のレベルが上がっている。」といった選評をして来たけれど、個人的には疑問を感じていた。第4回の大賞を受賞した作品「チーム・バチスタの栄光」は格段にレベルの高さを感じたけれど、それ以降の回の受賞作品の中には「何でこの程度の作品が受賞するのか?」という物が結構在ったので。(第8回の大賞受賞作品「トギオ」なんぞは、自分的には最低のレベルだったし。)しかし、この「パチプロ・コード」は久し振りに「面白い!」と感じさせてくれる内容だった。星4つ迄は行かないけれど、総合評価は星3.5個としたい。
第8回「『このミステリーがすごい!』大賞」で優秀賞を受賞した作品「パチプロ・コード」。1972年生まれという著者・伽古屋圭市氏のプロフィールは、「公務員退職後、全国を放浪し、パチプロとして生計を立てる。」となっている。なかなかユニークなプロフィールで在り、己が得意分野を小説に活かしたとも言える訳だ。
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痴漢冤罪事件で会社から馘首されてしまった山岸卓郎。新しい職を捜すもなかなか見付からず、パチプロとして何と無く日々を送っていた或る日、何時もの如くパチンコに興じている最中に謎の美女“シエナ”に見込まれ、大当たりを引く為の違法なセットロム(裏基盤)「ゴト」を用いて一儲けする事になった。更にもう一人の仲間、左頬に10cm近い生々しい切り傷の在る二枚目“ゼンデン”に引き合わされ、暗号の解読を求められる。それは、二人に裏ロム販売を指示していた黒幕の“ホゲ”が売上金を独り占めして姿を消し、金庫に残していった物ものだった。仲間に加わった卓郎は暗号解読に乗り出すが・・・。
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パチンコ用語が次々に登場するけれど、パチンコに関する知識が皆無の読者にも判り易く説明が為されている。くどくどしい説明調の記述では無く、サラリと記されているのは「上手いなあ。」と感じた。読み始めてから暫くは「シエナ」や「ゼンデン」という人名(勿論、仮名だが。)に違和感を覚えたし、「パチンコ業界という“限られた空間”での話を描いただけの話かあ・・・。」というかったるさも感じていたが、暗号を解読して行く展開になった辺りから話はドンドン面白くなって行く。主人公の卓郎が元プログラマーという設定も在って、理系テーストな記述も多く、典型的な文系人間の自分なんぞは「えっと、これはどういう意味だ?」と何度か読み直す事は在ったけれど、それでも「成る程ねえ。」とストーリーに引き込まれていったのだから。
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・ 客や市場に背を背を向け、そのときどきの政治判断、あるいは気まぐれとしか思えない無意味な規制を繰り返しているのが、今のパチンコ業界の実態である。なんら大局的見地もなく、一貫性もなく、恣意的に都度都度おこなわれる規制は、メーカーと役人だけを肥えさせ、しわ寄せはまず弱小の店舗に押し寄せる。次いで客に、ひいては業界全体の縮小に繋がっている。
・ この手の攻略法詐欺、打ち子詐欺は、想像以上に巷に氾濫していた。ネットや雑誌に堂々と広告も出している。その背景には、攻略法販売を刑事事件として扱う難しさがあった。刑法における詐欺罪とは「相手を故意に錯誤に陥らせ、金品や利益を得る行為」である。この説明に異論を唱えるものは誰もいないだろう。しかし、この「相手を故意に錯誤に陥らせ」だかどうかが厄介なのである。たとえば金を振り込ませ、なにも送ってこなければ、または明らかに別のものが送られてくれば、簡単に詐欺罪は適用される。しかし彼らは、ちゃんと攻略法と称するものを送ってくる。打ち子詐欺とて同様である。彼らはちゃんと攻略の手順を教え、店を斡旋している。たとえそれがどんないい加減なものでも、彼らが「確実に有効な攻略法だ」と主張すれば、これは詐欺でなくなる。「相手を故意に錯誤に陥らせ」たわけではなくなるのだ。(中略)社会通念上明らかに詐欺と呼べるものが黙認され続けている現状は、やはり異常とも言えるのではないだろうか。
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パチンコに関してのみで無く、社会に巣くう問題点へも鋭く批判の目を向けている。単なるパチンコ礼讃のストーリーでは無いし、そういった辛辣とも言える指摘をし乍ら、ユーモラスな文章で読み手に堅苦しさを与えていない。実社会に存在していたら「何だこいつ!」と思ってしまう様な“悪人達”も、小説の中では個性的なキャラクターとして自立しているし。
毎年の様に「『このミステリーがすごい!』大賞」の最終選考委員達は「回を重ねる毎に、応募者のレベルが上がっている。」といった選評をして来たけれど、個人的には疑問を感じていた。第4回の大賞を受賞した作品「チーム・バチスタの栄光」は格段にレベルの高さを感じたけれど、それ以降の回の受賞作品の中には「何でこの程度の作品が受賞するのか?」という物が結構在ったので。(第8回の大賞受賞作品「トギオ」なんぞは、自分的には最低のレベルだったし。)しかし、この「パチプロ・コード」は久し振りに「面白い!」と感じさせてくれる内容だった。星4つ迄は行かないけれど、総合評価は星3.5個としたい。
