アメリカ大統領選の共和党候補者指名争いは、獲得した代議員数で2位のテッド・クルーズ氏、そして3位のジョン・ケーシック氏が相次いで選挙戦からの撤退を表明した事で、唯一残った1位のドナルド・トランプ氏の指名獲得が確定した。
「『自分達さえ良ければ、何をしたって正しい。』という思考」のトランプ氏が大統領に選ばれたら・・・と思うとぞっとするが、アメリカ国民の良心を信じたい。
其れにしても3位のケーシック氏は別にして、2位のクルーズ氏はトランプ氏と同様、多様性を認めず、排他的な思考の持ち主。「仮想敵を作り上げ、其れを排除する言動を続ける事で、支持者を増やす。」というのも共通点で、両氏が共和党支持者の中で多くの支持を集めているというのは、非常に残念な事。世界的にそういう風潮は強まっており、我が国も例外では無い。そんな風潮が在るからこそ、安倍政権も揺るぎ無い。
個人的には、「民主党の候補者となるで在ろうヒラリー・クリントンさんが、最終的に大統領に選出される。」と予想しているが、内部分裂が著しいアメリカの舵取りは、困難さを極める事だろう。
アメリカと言えば「二大政党制」で知られている。自民党の「一党独裁制」という現実の我が国に在っては、羨ましい限りだ。自民党以外の政党、特に野党のだらしなさというのも在るが、“寄らば大樹の陰的な思考”だったり、政権を担える政党を本気で育て様としない堪え性の無さといった国民性も、真面な「二大政党制」が我が国に根付かない大きな理由の様に感じる。
アメリカの大統領は、今のバラク・オバマ氏が44代目。彼は民主党所属だが、歴代の大統領は民主党or共和党、何方の所属が多いのだろうか?気になって、歴代の大統領に付いて調べてみた。
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「歴代アメリカ大統領の所属政党」
無所属:1人
連邦党(1794年~1829年):1人
民主共和党(1791年~1825年):4人
民主党(1828年~):16人
ホイッグ党(1833年~1860年):4人
共和党(1854年~):18人
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共和党所属の大統領の方が、民主党より2人多いという結果に。成立したのが共和党より26年も後という事を考え合わせても、「アメリカは、共和党が強い国情だった。」と言えるだろう。
「国情“だった”」と過去形で記したのは訳が在る。去年の5月、アメリカの有名なシンク・タンク「ピュー・リサーチ・センター」が明らかにした調査結果によると、「アメリカ国民の政党支持率は、民主党が32%に対し、共和党は25%だった。」からだ。少なくとも此の結果からは、「共和党よりも民主党が強い国情。」という事になりそうだが、重要なのは「無党派を自任する人が39%も居て、民主党や共和党の支持者よりも多い。」という点。此れだけ無党派が多いのは過去に無いそうで、其れだけ既存政党に対する不信感が強いという事。
因みに、民主党所属で初の大統領となったのは、第7代のアンドリュー・ジャクソン氏。就任は1829年。一方、共和党所属で初の大統領となったのは、第16代のエイブラハム・リンカーン氏。就任は1861年だ。“リベラル”なイメージの在る民主党に対し、共和党は“保守”のイメージ。何方と言えば多様性を認めず、排他的な思考が支配する様な共和党に、「奴隷解放宣言」をしたリンカーン氏が所属していたというのは意外でも在る。
でも、(民主党所属で、第7代大統領となった)ジャクソン氏も黒人奴隷農場主だったそうだし、広島及び長崎への原爆投下を命じた第33代大統領のハリー・S・トルーマン氏(民主党所属)も、元々は白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン(KKK)」に加入していた過去が在るのに、「全米有色人種地位向上協会で演説を行い、公民権運動を支援した初の大統領となった。」のだから、リンカーン氏の様なケースも珍しくは無いのだろう。
一時的にはどちらかに偏狭ともいえるほど傾いてしまっても、ちゃんと自立してバランスが働いているんでしょうね。
翻って我が国の場合は、giants-55さんも指摘のように「寄らば大樹の陰」や「長いものには巻かれろ」、「泣く子と地頭には勝てぬ」などの成句がいくらでもあるお国柄。
明治維新や戦後のアメリカ統治のような、外圧がなければ既存の権力に従順な国民性では、強い野党が生まれる土壌ではないのかも。
ところで、アメリカ大統領は長くても再選までの8年間が任期ですが、共和党と民主党ではどちらがトータルの在任期間が長いのでしょうね。
それもちょっと興味がわきました。
強いて言えばですが、「連邦党」と「ホイッグ党」は共和党、そして「民主共和党」は民主党に近い感じの様です。そうなると「民主党(的政党)所属の大統領」と「共和党(的政党)所属の大統領」は、以下の様になります。
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無所属:1人
民主党(的政党):20人
共和党(的政党):23人
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矢張り「アメリカという国は、共和党(的政党)強い国情だった。」と言えそうですね。
で、共和党及び民主党の大統領のトータル在任期間に付いてですが、(暗殺等による)端数を切り捨てたざっくりした数字で言えば、何と共に「88年」と同じでした。
「明治維新や戦後のアメリカ統治の様な外圧が無ければ、既存の権力に従順な国民性では、強い野党が生まれる土壌では無い。」、此れは其の通りでしょうね。
又、以前にも書いたのですが、“此れ迄の”自民党は党内に「左」や「右」、「中庸」というのが其れ其れ一定数存在していて、極端な方向に振れると“自浄能力”が働き、内部修正出来ていました。だから、或る意味では「党内で、政権交代していた。」訳で、国民は敢えて他党に政権を委ねる必要が無かったとも言えます。
然し、今の自民党は「右オンリーの政党」と化し、多様性を一切認めない状況と言っても良い。此れは、実に危うい事だと思います。何しろ“親分”が自分と少しでも異なる主張をした相手に対し、無根拠且つ平然と「左翼!」と決め付ける状況なのですから・・・。
しかし、クリントン氏は、トランプ氏を意識した発言が多少見られましたが、ヘイトは、敵に有利と観たのか、慎重になって来たように思いますね。
今のアメリカの課題は、外交、とりわけ、中東との関係なだけに、政策が争点となるのが好ましいと思いますが、実際には、まだ、有権者もトランプ氏の実力を知らないのだと思います。氏も、大統領になったら、発言を控えると言っていますが、政治家として、新味に過ぎるところが、唯一の強みなのではないでしょうか。つまり、今がトランプ氏のピークに思えてならないのです。
「トランプ氏の勢いが凄いと言っても、所詮は最初だけの話。最終的に共和党の候補となるのは、別の人間。」と思っていたら、トランプ氏の勢いは増す許り。でも、「仮にトランプ氏が共和党の候補になったとしても、アメリカ国民は彼を大統領に選ぶ様な愚かさは無いだろう。」と次には考えていたのですが、最近の世論調査ではヒラリー女史を支持率でも追い抜いたという事で、トランプ大統領誕生という悪夢が、現実味を帯びて来ました。
歴史、特に近現代史が好きで、様々な本を読んで来たのですが、「何故、第二次世界大戦という不毛な戦いに、世界は突入してしまったのだろうか?」という点が理解出来た様で、実際には今一つ腑に落ちなかった。でも、昨今の世界情勢を見ていると、「自分は当時の状況を、時間を遡って体験しているのではないか。」と感じ、「こういう感じで“国民”は、考えてもいなかった戦争という状況に、突入せざるを得なくなって行ったんではないかなあ。」という気が、今しています。
貧富の差の拡大や先の見えない状況が世界に広がり、そういった中、多くの国民が“仮想敵”を叩く為政者に魅了されて行く。「自分達さえ良ければ良い。自国が全てに於いてNo.1になる事が、何よりも正しい事。」という“内向きさ”が支配する中、知らず知らずの内に戦争に突入してしまった。ロシアやアメリカ、中国、韓国、EU各国、そして我が国と、そういう“内向きさによるストレス発散”を、非常に懸念します。
「後先を考えず、言いたい事を言う。」というのは、誰でも出来る事。大事なのは「現実を直視し、他と協調出来る所は協調した上で、頭の中で最善の策を練り上げて実行する。」という事。今はトランプ氏の“勇ましい進軍ラッパ”に酔っている人達も、彼が実際に大統領になったら、酔った儘では居られないと思います。其の反動が、とても怖い。