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戦国末期、シルヴァー・ラッシュに沸く石見銀山。天才山師・喜兵衛(きへえ)に拾われた少女ウメは、銀山の知識と未知の鉱脈の在り処を授けられ、女だてらに坑道で働き出す。然し、徳川の支配強化により、喜兵衛は生気を失い、ウメは欲望と死の影渦巻く世界に1人投げ出されて・・・。
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第168回(2022年下半期)直木賞を受賞した小説「しろがねの葉」(著者:千早茜さん)。「戦国末期、貧しい農家に生まれたウメが、逃散によって家族を失い、石見銀山で山師をしている喜兵衛に拾われた。」事から、ストーリーは始まる。喜兵衛の様に山師として身を立てる事を夢見ていたウメだが、“女性”という壁が厳然と立ち塞がる。関ヶ原の戦いを経て、時代は徳川の世となり、石見銀山を取り巻く環境も大きく変わってしまう。そんな環境の変化に喜兵衛も変わってしまうが、変わらない物も在った。其れは、「坑道で働く男達が胸等を病み、若くして亡くなって行くという現実。」で、ウメや周りの女性達は近しい男達を次々と失って行く。そんな内容だ。
「幼い頃から持ち続けて来た“強い思い”が、“相手の心の中からどうしても消えない存在”によって、どうしても届かない事に懊悩する男の姿。」や「女性の持つ強かさと弱さ。」が、強く印象に残る。多くの男達を“見送った”ウメは、果たして幸せだったのだろうか?「幸せだった。」とも言えるし、「幸せでは無かった。」とも言える。間違い無く言える事は、ウメが逞しく生き抜いて来たという事実だろう。
年齢を重ねる毎に、速読派だった自分が、1冊の本を読み終えるのに時間が掛かる様になった。そんな自分でも、此の作品は一気に読み終えてしまった。其れ程、引き込まれる内容。
総合評価は、星4つとする。