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最近ヒット作に恵まれない、ワーカーホリックの漫画家。連夜のキャバクラ接待に励む編集者。1人きりの寂しい週末を過ごして許りの婚活中のOL。同僚に密かな好意を抱く30過ぎの女。「結婚すれば、全て上手く行く。」と言い切るフリー・ライター。15年続いた不倫を清算し様と決意する、売れっ子女流漫画家。
昨日と同じ1日を繰り返そうとしていた彼等が、本気で恋に向かい始めた。此れからの人生を共に過ごして行く、たった1人のパートナーを見付ける為に。
頼りにするのは、仕事のキャリアや人生経験では無く、とても小さな心の声。6人の男女は、何時、誰の為に、其の「一歩」を踏み出すのか?
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雫井脩介氏の小説「途中の一歩」を読み始めて直ぐに、「うわっ!」という驚きが。「クローズド・ノート」以降、雫井氏の作風が其れ迄の「硬派調」から変化しているのは感じていた。「軟派調」と迄は言わないけれど、「テーマも含め、柔らかい作風に変わって来たなあ。」というイメージは在ったのだが、今回の「途中の一歩」は正に軟派調。「『謹厳実直』というイメージの王貞治氏が唐突に、レイザーラモンHG氏の扮装をして、腰をカックンカックン振り乍ら『フォ~ッ!』(動画)と叫んで登場した位の意外さ。」と表現したら、作風の変化の凄さを判って戴けるだろうか。
上記した「6人の男女」の内、漫画に関わっている人間は4人。漫画業界を舞台に、「1人で生きて行く事に疑問を感じていなかった6人の男女が、『此れからの人生を、共に過ごして行けるパートナーが欲しい。』と思い始め、『一歩』を踏み出して行く。」という恋愛小説。
最初から最後迄通して見た“月9ドラマ”は「ひとつ屋根の下」(動画)、「ひとつ屋根の下2」(動画)、そして「ガリレオ」(動画)位の自分故、果たして的を射た喩えかどうか自信が無いけれど、「“良くも悪くも”月9ドラマを思わせる小説。」というのが、「途中の一歩」を読了して思った事。こういうテースト、好きな人は好きだろうが、嫌いな人は全く駄目だろう。自分の場合は後者。
似た作風の小説許り書いている作家に対しては「違った作風の小説に、何故挑戦しないのか?」と否定的な思いを持ってしまうのに、実際に作風をガラッと変えて、其の結果が意に沿わなければ「駄目だなあ。」と思ってしまう自分。「何と勝手なのだろう。」と恥じる気持ちも在るが、駄目な物は駄目なのだから仕方無い。「そんな偶然って在り?」と思ってしまう御都合主義的展開も、自分の感性に合わなかったし。
総合評価は、星2.5個とする。