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瀕死の妻・伶奈(れな)の為に、謎の声に従い、2018年から1960年にタイム・トラヴェルした主人公・加茂冬馬(かも とうま)。妻の祖先・竜泉(りゅうぜん)家の人々が殺害され、後に起こった土砂崩れで一族の殆どが亡くなった「死野の惨劇」の真相を解明する事が、彼女の命を救う事に繋がると言う。タイム・リミットは、土砂崩れが全てを呑み込む迄の4日間。閉ざされた館の中で起こる不可能犯罪の真犯人を暴き、加茂は2018年に戻る事が出来るのか!?
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今回読んだ「時空旅行者の砂時計」(著者:方丈貴恵さん)は、第29回(2019年)鮎川哲也賞を受賞した作品。「愛する妻の命を救うべく、58年前の世界にタイム・トラヴェルする。」という内容で、分野で言うと“SFミステリー”になる。
「タイム・トラヴェルという現象が、確実に存在する。」という大前提で成り立っている作品で、こういうのは「“過去の事実”を“未来から来た人間”が変えてしまうと、“未来”で大きな変化を与えてしまい兼ねない。」等、様々な問題が出て来てしまう。そういう不都合を出来るだけ生じさせない為、作品内では幾つかの“制約”が設けられており、「方丈さんが、必死になって知恵を絞った事が感じ取れるなあ。」と感心した。
「人の名前や人間関係を覚えるのが得意では無い。」という事も在り、何度も何度も前に戻っては確認する事となった。又、非常にロジカルな部分が多い(ミステリー関連の年間ブック・ランキングで、自分が注目しているのは「本格ミステリ・ベスト10」[発行元:原書房]、「週刊文春ミステリーベスト10」[発行元:文藝春秋]、そして「このミステリーがすごい!」[発行元:宝島社]の3つだが。昨年のランキングで「時空旅行者の砂時計」がベスト10内に入ったのは本格ミステリー、はっきり言ってしまえば理屈っぽい作品、が好んで選ばれる「2020本格ミステリ・ベスト10【国内編】」[7位]だけ。)事も加わり、スイスイと読み進められる感じでは無かった。
本格ミステリーなので、ロジカルな面では満足出来る内容。でも、真犯人の正体は見破れたし、又、結末も予想通りという感じで、そういう点では物足り無さも。
総合評価は、星3つとする。