**************************************************************
野党第一党の高月馨(たかつき かおる)は窮地に追い込まれた。敵対関係に在りつつも、或る法案に付いては共闘関係に在った与党議員・朝沼侑子(あさぬま ゆうこ)が自殺したのだ。
「自分の派閥のトップも、説得出来ていなかったの?法案を通す積り、本当に在ったの?」。「死の前日の浅沼への叱責が、彼女を追い詰めたのではないか?」と批判が集まり、謝罪と国対副委員長の辞任を迫られてしまう。
だが、長年ライヴァル関係を築いて来た高月には、朝沼の死がどうも解せない。朝沼の婚約者で、政界のプリンス・三好顕太郎(みよし けんたろう)に直談判し、共に死の真相を調べる事になるが・・・。
**************************************************************
新川帆立さんの小説「女の国会」は、“政治の世界を舞台にした女性達の姿”を描いた作品だ。国会議員の高月馨と浅沼侑子、高月の政策担当秘書・沢村明美(さわむら あけみ)、市議会議員の間橋みゆき(まはし みゆき)、そして新聞記者の和田山怜奈(わだやま れな)という5人の女性達は、年齢もキャラクターも全く異なるけれど、「未だ未だ“男社会”の日本(特に政界)に在って、女性というだけで大きなハンデを背負わされているという状況は一緒。」という共通点が在る。
定例会の一般質問案の作成等、本来は議員自身が行うべき事柄を全て他者に丸投げする一方で、花見会場や祭り会場、冠婚葬祭の場に顔を出し捲って、自身の名を売る事に懸命となっている議員達。そして、議員達がそういう場所に顔を出し捲る事を、唯一無二的な評価対象としている様な有権者達。(記事「言っている事は“正論”」で記したけれど)昨年、田中真紀子元外相が「政治に金が掛かる。」“とされている”要因の“1つ”として“地方議会議員による集り”を挙げていたが、議員達に対してあからさまに自身への利益を求めて恥じない彼等や有権者達。悪い意味で幇間や芸者の真似事を、議員達に求める政党幹部や支持者達。「そんな“本来の仕事”では無い事をしないと、選挙で当選出来ない土壌が、残念乍ら我が国には在る。」という現実を、此の作品で改めて感じさせられた。「本来の仕事をしてこそ、議員の評価が高くなる。」という当たり前の事が、我々有権者に対して“幅広く&公正に可視化されるシステム”が構築出来ない物だろうか?勿論、其の為には、有権者達が賢く&無私な存在になる必要が在るが。
“遺書と思しき物”が発見された時点で、其の内容から“記した人間”が抱える深い悩み、そして其の深い悩みが「XXと〇〇の不一致」に起因している事は、容易に想像出来た。非常に封建的&男社会の政界に在っては特に、深い悩みに成り得てしまうのは理解出来る。唯、最後に明らかとなる“或る人物の本当の姿”は予想外で、「“此方”がそうだったのか・・・。」と驚かされた。
強かでなければ生き抜いて行けない政界、確かにそういう面は在るだろう。でも、「自身が生き抜いて行く為には、何でも在り。」となってしまうと、「其れはどうなのかなあ?」と思ってしまう。高月の最後に下した決断は、正にそんな感じだった。又、「女性という存在を、稍美化し過ぎ。」という感じも在り、其の点でも鼻白んでしまった。
総合評価は、星3つとする。