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大学進学の為、東京から高知の祖父母の家に移り住む事になった篤史は、従兄弟の多郎の強引な誘いでよさこい祭りに参加する事になった。4年前にも参加した祭りでは1人の女性と出会い、ほろ苦い思い出を引き摺り続けていた篤史。初恋の相手で在る彼女と交わした或る約束を果たす為、何とか彼女を見つけ出そうとするが・・・。 **************************************
書店で勤務されていた経験を活かし、書店を舞台にしたミステリーを著されている大崎梢さん。デビュー作の「配達あかずきん 成風堂書店事件メモ」を始めとして、彼女の作品は9作品読んで来たが、「『成風堂書店事件メモ』シリーズ」及び「『出版社営業・井辻智紀の業務日誌』シリーズ」という書店を舞台にした作品と比べると、其の他を題材にした作品は正直見劣りしていた。今回読んだ「夏のくじら」は「高知を舞台にした青春群像劇」という事で、読む前には「どうかなあ?」という不安が在ったのだけれど・・・。
よさこい祭りは勿論知っていたけれど、祭りの裏側に関しては知らない事が多く、非常に興味深かった。考えてみれば当たり前事だが、着用する衣装の費用以外にも、振り付け師を雇ったり、楽曲を作って貰ったり等、結構な金銭が発生するというのは「そうなんだ。」という驚きが。
篤史が捜している女性の正体も然る事乍ら、「此の人は一体、どういう人物なのだろうか?」と気になる登場人物が何人か存在する。“事実”が1つ1つ明らかになって行く事で、「そうだったのかあ。」と自身の頭の中で、其の人物像が再構築されて行ったりも。
昔、「博多っ子純情」という映画を見た時の感覚が蘇る。「透明感」、「ほろ苦さ」、「熱さ」、「もどかしさ」といった「青春」の思い。自身の青春時代と重ね合わせて読み進める人も、多い事だろう。
「もう一捻り欲しかった。」という思いは在るけれど、読後感はとても爽やか。総合評価は星3.5個とする。