Heads Hands & Feet:
Tony Colton - lead vocals
Ray Smith - guitar
Albert Lee - lead guitar
Chas Hodges - bass, fiddle, banjo
Pete Gavin - drums
Mike O'Niell - piano
60年代後半、Jimmy Page らと共にイギリスのセッション・シーンで活躍していた Albert Lee。そんな彼がメジャー・デビューを果たした初めてバンド、それが今回ご紹介する Heads Hands & Feet です。ブリティッシュ・ロックが好きな方なら一度はその名を聞いたことがあるのではないでしょうか。いきなり二枚組という大作でデビューを飾る度胸も大したものですが、何を隠そう、このアルバムこそ、名曲 "Country Boy" のオリジナルが収録されている記念すべき一枚、いや二枚なのです(笑)。
バンドのメンバーはそれぞれが自己の活動で名を上げてきた人たちです。中心となるのはリード・ヴォーカルを担当し、本作のプロデュースも手掛ける Tony Colton。Heads Hands & Feet の母体となる Poet & The One Man Band を立ち上げた人物でもあります。彼は The Animals や Cream に楽曲を提供したことでも知られ、ソングライターとしてのセンスも高く評価されていたようです。後に Dave Peacock と Chas & Dave を結成することになる Chas Hodges も主要メンバーの一人。ピアニストとして有名な彼ですが Heads Hands & Feet ではベース、フィドル、バンジョーとマルチな才能を発揮しています。ドラマーの Pete Gavin と共に Albert の "Hiding" に参加していました。バンド以外では、エンジニアに Yes のプロデューサーとして有名な Eddie Offord が(彼は The Dregs の "Industry Standard" もプロデュースしていましたね)、バッキング・ヴォーカル・アレンジメントに惑星一のベンダー星人と称される Jerry Donahue がクレジットされているのは興味深いところ。
どこか湿り気のあるサウンドは明らかにブリティッシュといった感がありますが、アメリカ No.1 の英国人カントリー・ギタリスト Albert Lee が海の向こうの音楽性を持ち込んだことにより、他の英国産バンドとは一線を画すスタイルを築くことに成功しています。ただスーパー・バンドとして売り出そうとしたキャピトルの意向とは裏腹にヒットには恵まれず、わずか三枚のアルバムを残し解散してしまったのは非常に残念です。
アルバム "Hiding" ではカントリー色が強いアレンジに変貌を遂げた "Country Boy" もここではよりアグレッシヴにロックしており、エンドレスで繰り広げられるギターのインプロヴィゼーションは 1971年という時代を考えるとかなり強力です。今ほどパッキパキのギター・サウンドではないですが、ロールやダブル・ストップを多用したリックはすでに現在のスタイルを思わせるもので、まさに「コンテンポラリー・カントリー・ギターの黎明ここにありき!」と言いたくなりますね。ちょうど Jimmy Page がロック史に輝く大名盤 "Led Zeppelin IV" をリリースした頃のことです。
その他、ギターとベースのユニゾン・リフがカッコいい "I'm In Need Of Your Self"、ブルージーなブリティッシュ・バラード "Song For Susie"、「若干25才にしてこの枯れ具合!」という Albert の渋いヴォーカルが味わえる "Delaware"、フィドルも加わりホンキートンクなムードが楽しい "Tryin' To Put Me On" など聴きどころは多いです。
以前は国内盤もリリースされており、1980円という安価で入手することができたのですが(僕が所有しているのもこの国内盤)、現在は国内外共に廃盤のようで、地道に中古を探すしかないようです。そんな入手困難なアルバムではありますが、アルバート爺ちゃんのファンには彼の記念碑的な作品として、そうでない方にも 70年代ブリティッシュ・ロックの隠れた名盤として是非とも聴いていただきたい一枚です。



