ガエル記

本・映画備忘録と「思うこと」の記録

「空と風と星の詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の生涯」イ・ジュニク

2019-02-20 21:23:19 | 映画


悔しくて悲しくて辛くて涙が溢れました。どうしてこんな青年たちがこんなにも若く死ななければならなかったのでしょう。この青年たちを死に追いやったということだけでも日本政府は謝らなければならないと思います。
時代のせい、戦争のせい、どこの国でもやってる、そんな言い訳は聞き飽きたし聞きたくないのです。ただただ詩を愛し、その詩を書くことすら躊躇いながら書いた純朴で優しい心が詩の言葉に現れています。
もし日本へ来て勉強し続けることができたなら素晴らしい交流ができたかもしれない青年が何故惨たらしく死ななければならなかったのでしょう。

映画はとても抑制の効いた作り方でした。日本軍人のあくどさも過剰ではなくそのためにより恐ろしくも思えました。実際の九州大学における人体実験はこの映画で表現されたどころではない悲惨なものです。その実験材料として捕らえられた人々の苦痛を想像できるものがいるでしょうか。


そんな悲しく恐ろしい映画なのですが、それでもこの映画が描いているのは詩人ユン・ドンジュとその従兄弟であり親友のソン・モンギュの張りつめた美しい青春なのです。
ソン・モンギュはユン・ドンジュよりも聡明で革命的精神の激しい青年ですが、やや内気なユン・ドンジュを弟のように守り励まそうとしています。
祖国朝鮮は日本の統治下にあり創氏改名と日本語による授業を強いられてしまうのを機に二人は日本への留学を決意します。ソン・モンギュは目標の京都帝大に受かるのですからとんでもない学力を持っていたのでしょう。不合格だったユン・ドンジュは東京の立教大に入学し、後に同志社大学へ編入します。
ユン・ドンジュは良い教授に出会い、親切な日本人の女学生とも知り合い、彼の詩を英訳して出版しようと試みます。この有意義な時間が続いていたのなら、と思わずにはいられません。

その後、ユン・ドンジュは日本への反逆罪を問われ投獄、人体実験として海水を注射されるなど惨たらしい拷問を繰り返され獄死したとされています。ソン・モンギュもその後を追うように獄死。
あまりにも酷いことではないでしょうか。

ユン・ドンジュの美しい詩が映画の中に織り込まれています。この繊細な優しい言葉で綴られた詩を聞くたびにそして読むたびに泣けてしまうことでしょう。





私は一時期韓国映画にはまっていたのですが、ある頃から離れていました。その後幾度か観てもあまり心が動かなかったのですが、少し前に観た「お嬢さん」から再び興味が湧いてきました。
本作「空と風と星の詩人」の監督イ・ジュニクはあの「王の男」の監督だったと気づいて納得しました。
「王の男」も歴史ものでありながら二人の主人公の青春を美しく描いたもので大好きな映画です。こちらは韓国の王に虐げられながらも二人の男の友情とも愛情とも思えるような心の交流を描いたものでした。
そしてこのブログでも少し前に紹介した「金子文子と朴烈(パクヨル)」の監督でもあるのです。
これは日本女性と韓国男性の恋愛を描いたものですね。イ・ジュニク監督だったと気づいてますます楽しみです。

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