風色明媚

     ふうしょくめいび : 「二木一郎 日本画 ウェブサイトギャラリー」付属ブログ

2014年 7月3日 木曜日

2014年07月03日 | 仕事場
まずは、昨日終了しました長野市ながの東急での個展にご来場いただきました皆様
並びに素敵な花をお贈りくださいました方々へ、心より御礼を申し上げます。
今後の展覧会にも是非ご来場いただけますよう謹んでお願い申し上げます。




昨年の12月以降中断していましたイタリア・シエナのドゥオーモの夜景(20号)
そして3月末以来中断していましたイタリア・トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂(50号)
両作品は、共に6月より再開しています。

シエナのドゥオーモは半年間中断した間に問題点がいろいろ見えてきて
再開後は概ね順調に筆が進みました。

トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂は、中断した時点で大筋はできているように思えましたので
再開後は、粛々と細部の調整に終始しています。



イタリア・シエナのドゥオーモの夜景 20号 (最終回)





2013年11月下旬の状態。

スッキリしない印象があり、絵の強さ・決め手に欠けるという想いがありました。
一本筋が通ったと言いますか、すべての物が渾然一体となった統一感が弱いように思うのです。
薔薇窓のほぼ全面に映り込んだ月と、聖堂の壁一面に散り嵌められた彫刻などの装飾が煩雑に見え
壁面の表情・厚みなどが弱く感じられます。

まず最初に気づいたことは、薔薇窓に映り込んだ雲の量が多過ぎること。
そこで雲の量を減らすことから始めました。
そして薔薇窓以外の壁面は、細部の描写よりも月光が染み込んだような空気感をより優先すべく
聖母像の周囲の聖人たちの彫刻は、より暗く落とし、コントラストを下げるなどして作業を進め
制作開始から約1年を経て、ようやく仕上がったところです。





 「月のファサード」 72.7 x 57 cm








イタリア・トゥスカーニアのサン・ピエトロ聖堂 50号 (第6回)





中断する直前の3月20日頃の状態です。

絵の骨格というべきものは大筋でできているように思っていましたので
再開後の仕事は細部の詰め、そして最も留意しているのは質感表現です。
質感というのは材質である石の質感だけではなく、絵肌の質感、築後700年あまりを経た時間の厚みというものも含まれます。

中断する少し前から、描きながら常に傍らに置いて参考にしていたのは、この聖堂の洗浄前の画像でした。
比較的近年だろうと思いますが、この聖堂は洗浄を施されて綺麗に甦っています。
対して、洗浄前は白い大理石でさえ黒ずみ、所々には鉄錆色も見え、建物の部材には欠損が目立つような状態でした。
時間の厚みを表現するには、単に古色を加えればいいというものではありませんが
一日にしては成らない古色が大きなヒントになることは確かです。






現在の状態です。

一目で分かるほどの大きな変化はありません。
前回までは黒に近い濃いグレーまでしか使っていませんでしたが
再開後は黒を使って画面を締めながら、細部の調整を主体に続けています。
しかし、細部の調整だけで済むとは限りませんので
場合によっては大きな調子の流れを見直す必要が出てくるかもしれません。
いよいよ大詰めです。



今年も早半年が過ぎ、相変わらずのスローペースで仕事が続いています。
好き好んでスローペースにしているわけではありませんが、決断力の乏しい性格では致し方ないところです。
が、間もなくトゥスカーニアも仕上がると思いますので、そろそろ次作の準備もしないといけません。

次作の一つは「滝」を50号で描くことが決まっています。

滝? 何とも古風な題材だねぇ。鯉の滝登りでも描くの? ぎゃはは! などと笑ってくださいますな。
古いヤツだとお思いでしょうが、題材に古いも新しいもないので~す。

-------------- Ichiro Futatsugi.■


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (shinkai)
2014-07-04 04:10:57
こんばんは! 長野での個展、ご苦労様でした!
新しい土地、新しい画廊での展示は、色々と気疲れがあったことだろうと思いますが、早速に製作に戻られての記事更新、素晴らしいです。

シエナの方は、はい、取り組まれた問題点が良く分かりましたし、今新しく拝見する聖母像は、いかにも月の光を浴びてほんのりと、でもすっきりと立つ姿で、月夜の少し恐ろしい感じさえする薄闇の夜のイメージが伝わってきます、素晴らしい!

トゥスカーニアの方は、これはいつかぜひ実物を拝見したいものです! 黒とか濃いグレーとか、その辺りが実際にはどのように見えるのか・・、色々想像しています。
出来上がりを拝見するのが楽しみです!

お疲れが出ませんように!!
返信する
Unknown (二木一郎)
2014-07-04 20:13:21
shinkaiさん、こんばんは!

長野での個展では、お気遣いいただきまして、ありがとうございました!

このシエナは、以前使っていた紙での最後の作品となります、たぶん。
私にしては大胆な構図で、難しいモチーフでしたねぇ。
このような単純な薔薇窓より、トゥスカーニアの薔薇窓の方が反って楽かもしれません。
月夜の空気感は、この画像では少し薄れて写っているのですが
感じ取っていただけたのなら嬉しいです!

トゥスカーニアは夜景にするつもりは全くないのですが
私が描くと夜景のようになってしまいますね。
とことん夜景が好きなのだと、自分でも呆れてしまいます。
もう少しで仕上がる予定ですが、本当に素敵なモチーフと出会えました。
これもひとえにshinkaiさんのお陰です!
北イタリアの方に向かって最敬礼!!
返信する
Unknown (二木一郎)
2014-07-04 20:14:17
Art真似蛙さん、こんばんは!

お気楽に描くというのは、実はとても大切なことだと思うのです。
ピカソとかクレーなどの作家は、本気で落書きを目指していたのだと思っています。
少しでも物事に束縛されることなく描けたら最高ですよね。

現在はデジタルのみで作品を創る作家はたくさんいます。
デジタルであれ手描きであれ、手法は自分の好みで選べばいいことだと思います。
手描きを始められるのですか?
絵描きにとって一番大切なことは好奇心と観察力だと思います。
技術は観察力の副産物のようなものですから、その気になれば自然と上達していきます。
無理して描いても意味がありませんから
自然に描きたいなぁと思えるような状況を作ることが大切ですね。
そのためには好奇心が大いに力を発揮してくれるのです。

今後の作品を楽しみにしています!
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