映画感想(ネタバレもあったり)

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映画『記憶にございません』ネタバレあり

2020-08-07 | ネタバレあり


この映画では理想の政治が描かれている。
そうすると自動的に現政権批判になっちゃう。。。

理想の政治を描くと現政権批判になるという現実がホラー。

ホラー映画ならこの現実に太刀打ちできない。
現実がホラーだから。

でもこの映画はコメディ。
コメディには可能性がある。

もっともっとぬるい映画かと思っていましたけど
意外と攻めてるなぁという感想です。

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あ、この映画は日本ではなく、どこかのある国、って設定です。

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しかし、
この映画を現政権批判だと思わない人も、たぶんいる。んでしょうね。


それが、日本の政治エンタメ映画の限界点。
あこらさまに現政権批判するエンタメ政治映画は日本では難しい。

この映画が今の政治エンタメ映画のギリギリ。
これは三谷幸喜でしか作れなかった。

結構ギリギリをやってますよ。


ほかの作家ではこんな大ヒット政治コメディ映画は撮れませんから。


これが日本の限界点だと知る意味でも見る価値あります。


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記憶がなくなる=政治的なしがらみがなくなって正しい政治ができるようになる
というのがこの映画のシステム。


でも。ラストにある仕掛けが。。


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史上最悪のダメ総理。

そして、自由な総理夫人。


っていう設定に、
リアルの方がどうしても頭に浮かんでしまって観てるだけで思い出して不快。

(でも映画の総理は語学が堪能という設定。
英語フランス語ドイツ語ルワンダ語が話せる頭脳と学力と努力することと社会性と世界に向けた視線を持っている。
しかも、ゴルフの腕はプロ並みという設定。てこととはやはり努力する力を持っている。
努力することで成果が得られることを知っている人は、他人の努力の成果を踏みにじることができない。
映画の中の総理はだいぶマシ。)

こんなにも不快な存在をコメディ映画にするのはかなりハードルが高い。

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やはり三谷幸喜はセリフが上手いですね。
「いつからそんな薄っぺらいヒューマニズムを口にするようになった。
いいかね、アメリカと友好関係を続けることで多くの大企業が潤うんだよ。
万人に愛されようなんて思ってんじゃねえよ。」
byこの映画の1番の悪役(草刈正雄)


短いセリフでも情報量が多いし、語尾でその人間性や相手との関係性を説明している。


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スターがたくさん出てるんで
いちいち脇役レベルの役でもちゃんと顔を映さなきゃいけないんよね。

ひとりひとりの自己紹介が丁寧過ぎて
テンポが悪くなる。

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長回しが多いなぁ。
しかもあまり意味がない。

映画の場合は長回しに意味が欲しい。

長回しには緊張感が生まれる。
大したことのないシークエンスでも緊張感が生まれる。

しかも長回しの場合、そのシークエンスのポイントが絞られず散漫になる。


たぶん三谷幸喜はカットを切るのが苦手。
舞台の人だから?

カット割ってポンポン進んで欲しいとこで緩やかに長回しになるからテンポが鈍くなる。


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「記憶をなくした総理大臣だからこそできることがあると思います。
背負ってきたものをなかなかおろせない。
でもあなたにはできる。
世間体やプライドもあなたには関係ない。」

と秘書の小池栄子。

記憶なくしても世間体やプライドは関係あるだろう、と思うけど、、これがこの映画のシステム。

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中井貴一と木村佳乃のコメディ演技はさすが一流!
何回も笑った。

特に木村佳乃は普通に喋ってるだけなのに可笑しい。。


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悪役である草刈正雄のセリフ
「少しでも長くこの世界にいる。
これが私のモチベーションだ。
悪いかね。
今我が国の政治は正しく機能している。
健全じゃないか。
実に良い。
この国の国民は変化を好まない。
大事なのは平穏であることよ。」

悪役がこの台詞をいうってことは、これは悪いことだということ。

どう考えても現政権批判のセリフだけど、

これを現政権批判だと思わない人も当然いるんよね。。



実際、この映画をある国の首相が観たんですけど、その後に三谷幸喜と握手してた。ヘラヘラ笑いながら。内容が理解できてたら握手なんてできませんよ。




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そして
その悪役(草刈正雄)が
総理が記憶喪失だということに気付いてからが第三幕。

さてさてどうなりますやら。

ネタバレは以下に。









フリーの政治記者(佐藤浩一)が草刈正雄のスキャンダルをつかんで
草刈正雄を官房長官の地位から下ろす。

佐藤浩一「おれは金で動く人間だが、依頼人は裏切らない。それをやったら商売上がったりだ」

そして草刈正雄は官房長官を辞任。

佐藤浩一「総理!この国を世界に誇れる国にしてくれ!俺だって税金払ってんだ。そのくらい言わせてくれ。」

そして内閣改造。

田中圭を総理の警護に。田中圭の夢は総理の警護だった。

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佐藤浩一は草刈正雄の依頼で
ディーンと石田ゆり子の不倫を売る。

佐藤浩一「…これが俺の仕事なんだ」



ディーンは総理の秘書であり、正しい政治をしたい人。
石田ゆり子は総理の妻。

中井貴一「妻は私に愛想をつかせていた。君は私を嫌っていた。すべて私の責任だ。あなたは私に必要な人間だ。今まで通り私に就いてくれ。」

ディーン「総理がそれでよいなら」

中井貴一「ただし妻とは別れてくれ。好きなタイプなんだ」

ディーン「それはそうでしょう」

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不倫を報じる新聞にショックを受ける石田ゆり子。

石田ゆり子「私、旅に出ます!一人で生きていく!」

↑薄っぺらさが出てて良いセリフ。止めてくれる人がいること前提のセリフ。誰も止めないけど。

石田ゆり子は隠しトンネルを使って脱出。

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国会。

中井貴一と不倫関係にあった吉田羊
「総理夫人と秘書官の不倫が報じられました。危機管理が全くできていない。それで一国の総理大臣が務まるとお思いですか!」

中井貴一、妻の不倫を認め、自分の非を認める。

吉田羊の党、国民党の討論の時間を使って中井貴一が石田ゆり子に語りかけることを吉田羊が許す。

「君のことがタイプなんだ。君一人を幸せにできない男がこの国を幸せにできるわけがない。そして約束する。国民の皆様には二度と政治に失望はさせない。どうかわたしを信じて欲しい。もうわたしは逃げない。帰ってきてくれ、聡子。」

草刈正雄の秘書「これで総理は退陣ですね」
↑本来ならそう。国会の答弁の時間を夫婦の個人的なメッセージに使ったんだから。政治家やめてくれ。

草刈正雄「いや。これで総理の支持率はうなぎが登りだ。すぐに花丸組に連絡を。」
↑国民の浅はかさを揶揄したセリフ。

秘書「狙撃するんですか?」

草刈正雄「歴史は繰り返すんだよ。」
↑これは三谷幸喜が好きなセリフ。歴史は繰り返すんですよ。

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中井貴一の国会答弁(愛の告白)をタクシーのラジオ?で聞いた石田ゆり子が戻ってきて中井貴一とハグ。

記者たちがそれを見て拍手。茶番。

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総理が国会議事堂?の前に集まった98人くらいの国民?の前で演説。

草刈正雄の依頼で
総理をパチンコ玉で狙う川平慈英。

それに気づくディーン。
その玉を素手で掴む藤本隆宏。
そして二階の高さから飛び降りて追う田中圭。

みんなに見せ場を作る三谷脚本。

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草刈正雄の秘書が佐藤浩一に
総理の息子(未成年)の飲酒事件をリーク。

佐藤浩一「悪いけどよ、そこまでクズじゃねえんだ」
これが佐藤浩一の出番ラスト。

秘書「…わたしも同感です」

ジャルジャル後藤も良い役でした。

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小池栄子、総理の子供の頃の作文を読む。

中井貴一「中学のときサッカーボールが当たって政治家になった」

実は総理は途中で記憶を戻していた!

中井貴一「悪い総理に戻ることもできたけど、こんなチャンス二度とないからね」 

小池栄子「いいと思います」

中井貴一「これは国家機密です」

小池栄子「わかりました」

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支持率は2.8%。

ディーン「なーんだ、微増だな」

秘書官補の迫田孝也「いいんですよ、支持する人もしない人もみんなが幸せなればいい。総理、あなたならできる」

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女性キャスター「そんなに期待はできないですね。記憶でも無くさない限りひとってそんなにかわれませんから。それではまた明日。」

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総理、勉強中。ちゃんと勉強してる総理。どこの国よ。。

総理の息子「ぼくもいつか総理大臣になりたい」

総理、目に涙を浮かべ笑顔。

終わり。

エンドロール。


 

 


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