映画感想(ネタバレもあったり)

映画コラム/映画イラスト

映画『羊たちの沈黙』女性差別を描いている映画ではあった

2021-07-30 | 映画イラスト
羊たちの沈黙(1990年製作の映画)The Silence of the Lambs 上映日:1991年06月14日製作国:アメリカ上映時間:118分
監督 ジョナサン・デミ
脚本 テッド・タリー
原作 トマス・ハリス
出演者 ジョディ・フォスター アンソニー・ホプキンス

目次
  1. 女性差別を描いている映画ではあった
  2. 10数年ぶりに見返しました。
  3. Webマガジン FILMAGA(フィルマガ) にて記事イラスト描かせていただきました。
  4. この映画には明らかな問題があります。
  5. 初?
  6. ほんとに気持ち悪い


女性差別を描いている映画ではあった


女性差別を描いている映画ではありますね。
いい描き方とは言えないけれども。

ポスターも「若い女性が黙らされている」と読めなくもない。
蛾は「変化」の象徴なので、「女性たち!変化しようぜ!」っていうメッセージと読めなくもない。。
が、そう言う前向きな読み方をしようという気が起きない映画。。



10数年ぶりに見返しました。


ずっとジョディ・フォスターを男たちが「コイツ良い女だなぁ」って視点で映し続けてる映画なんですね。。

それが最高潮に達して変態性も極限に振り切れたところで、ジョディ・フォスターの正義の鉄槌!え〜いっ!こらっ!っていう映画。

女性差別を描いている映画ではあったのですね、当時は感じられませんでした。

ただその視点が変態すぎるし、、、
その視点を批判しているかどうかもハッキリしないし、、、
次作『ハンニバル』でのジョディ・フォスター降板事件もあって
あんまりストレートに「女性差別問題を提起した映画」とは言いがたい。。


****


Webマガジン FILMAGA(フィルマガ) にて記事イラスト描かせていただきました。




レクター博士の最凶タイプは「高知能グルメ型」です。



***


FBI訓練生であるクラリスは、FBI訓練校やFBI捜査官、地元の保安官たちからずっっっとセクハラされてますね。執拗にそのシーンが繰り返される。
若い女性だからうっすらずっとバカにもされている。

だからこそクラリスは、紳士的な態度をとってくれるレクター博士に対してある種の信頼感をもってしまうんですね。





この映画には明らかな問題があります。

トランスジェンダーを悪いものだと描いている点。

トランスジェンダーは変態であり、病理であり、犯罪者であり、最後には射殺されるような存在である、
と描いているとされる問題。

『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』でも説明のあった通り、
トランスジェンダーはあらゆる映画の中でひたすらに犯罪に巻き込まれて最後には殺されたり、連続殺人犯が実はトランスジェンダーでしたというオチに使われたり、ギャグとして軽んじられたり、
かなり人権的に問題がある。


『羊たちの沈黙』では中盤あたりでわざわざ

「倒錯趣味の人と犯罪には関連性はない。盗作趣味の人は大人しい」by クラリス

「病理上恐ろしいのは彼の倒錯性ではなく残忍性だ」by レクター

倒錯という言葉自体に問題があるし、「大人しい」って言うのもおかしな見方ではあるけど、
異性装やトランスジェンダー自体は問題ないと繰り返し語っている
しかもバッファロー・ビルズはゲイであるが、自分が性同一性障害であると思い込もうとしている状態。つまり、バッファロー・ビルズはトランスジェンダーでもない

上記の理由から、『羊たちの沈黙』はトランスジェンダーを酷く描いていない、と言えそうだけれども、やはりそれはない。。。

異性装(女装やメイク)をあからさまに不気味なものとして描いているし、
〝ゲイ〟や〝トランスジェンダー〟を犯罪物語の有効なフックとして消費しているように見えて、やはり問題。

ゲイやトランスジェンダーをサスペンス映画において奇怪な存在として便利に使っているだけで
ゲイやトランスジェンダーへのフォローはものすごく少ない。
そういう視点がない。

前述したように二つのセリフでフォローしているけど、
全体の残忍性やセリフ量からするとこのフォローはゼロに等しい。
誰もこのフォローがあったこと覚えてないでしょ。

現実世界でもゲイやトランスジェンダ〟を犯罪者扱いする人もいる中で、大ヒット映画がこういう描き方をするのは大きな問題。

この映画に関しては今更どうすることもできないので
『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』と同時上映してくれってことです。

**


初?


ラストあたりの、「FBIがバッファロー・ビルの家に侵入したと同時に違う場所でクラリスがある民家を訪ねて実はそここそが…」みたいなあの編集の騙しってこの映画が初なのかな?

サスペンス映画ではよく見る手法だけど1990年でジョナサン・デミが初めてやったのかな。

サイコ映画としての山場はレクター博士の脱走シーンだけど、
サスペンス映画としての山場はこの「編集で交互に並べてたけど実は別の話でした〜」のシーンだと思います。

この手法が1990年の時点でもう何回か使われているものだとしたら、『羊たちの沈黙』がここまで評価されてないような気もするんですよね〜。

と、なんの裏付けもないまま書いているのですが。。


***


ほんとに気持ち悪い


ジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスの演技も素晴らしいし、風格もあります。

しかしカメラワークとジェンダー観はどうしても古い。

サイコ映画としての気持ち悪さ以上に「ジョディ・フォスターってほんと最高の女だよな〜」っていうぬめぬめとした男たちの欲望がほんとに気持ち悪くて、
これが意図したものではないような気もして、
それがさらに気持ちが悪いので、、
今見るならちょっとその辺を覚悟してご覧ください。



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