映画感想(ネタバレもあったり)

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ゲイ映画『ダンス・オブ・41』ネタバレあり 「42」は誰か。

2021-05-31 | ネタバレあり
ダンス・オブ・41(2020年製作の映画)El baile de los 41/Dance of the 41製作国:メキシコ ブラジル
監督 ダビ・パブロス
脚本 モニカ・レビージャ
出演者 アルフォンソ・ヘレラ エミリアーノ・スリータ マベル・カデナ フェルナンド・ベセリル ロドリーゴ・ビラーゴ

面白いけど、辛い。。。


身を引き千切られるような苦しみを体感させてくれる。。
ラストの舞踏会のシーン、辛すぎる。。

メキシコ映画おそろしい。
どういうクオリティだよ。。
**

前半はデジタルカメラの浅い感じして、
なんかテレビドラマみたいな雰囲気でもったいなかった。
美術もカメラワークも力入ってるのになぁ、と。
前半はちょっとちぐはぐな印象がありましたが、
後半から、
妻が夫の真実を知ったあたりから
突然映画を構成する全ての要素が合致しましたよ。
舞踏会での事件とその後の辛く苦しい展開を映像でばっちりどっぷり描いてくれてました。

だから、、もう、、、辛い。。。


20世紀初頭のメキシコの上流階級の生活ぶりが豪華。



大統領の娘と結婚した議員の話。
ドレスやら調度品やら絵画やら彫刻やらがどれも素晴らしい。

**


この議員は実はゲイ。


初夜のシーン、残酷ですね。。
夫は妻じゃ全然勃たないので、挿入前に自分で扱いてなんとか勃たせようとする。
そのときめっちゃ目を瞑ってんすよ。
ショックでしょうね。。そんなことされたら。
で、よっしゃ勃ったってことで萎えないうちにサッと挿入。
ムードもへったくれももちろん愛なんてない。
このときの妻が切ない。。
セリフ一切ないけど表情の手の仕草が素晴らしい。
まっっったく心の交流なんてできてない相手との初夜。

この妻は大統領と先住民の女性の間に生まれた子供。

朝方まで帰ってこない夫(もちろん遊びまくってる)に腹を立ててわざと警察に通報したりと、
なかなか気合が入ってて面白い。

**



夫と妻を演じた2人の俳優さんの演技が素っっ晴らしい!



前半はどちらかというと妻目線。
妻の葛藤が悲しい。
先住民と大統領の間に生まれた子としての苦悩。
そして夫がゲイ、と言う、、誰にも1秒も気持ちわかってもらえない状況で苦しむ。
夫は、まず死ぬほどカッコいいんですけど、ほんとに演技うまい。
表情はもちろんのこと体全体から発せられる何かで感情を伝えてる。
なんでこんなことできんの。。。

**


この事件の結果、メキシコでは41 と 42 という数字は同性愛を指す言葉になった、


とのこと。


ネタバレは以下に。









どうやら実際にはこの夫は舞踏会には出席していなかったらしい。
でも彼にはゲイ疑惑(←嫌な言葉)があったから
「ほんとはあの舞踏会に行ってたんじゃないの?」
「大統領の義理の息子だから逮捕されなかったんじゃないの?」
と噂された、
らしいです。
**
逮捕され屈辱も受け刑も受けて尊厳を汚された41人と、
それを逃れて表面上は〝フツウ〟に生きている42人目。
「42」は我々じゃないか、ってことですね。
42人目なのはこの夫はだけではなく、
先人たちの戦いの結果や時代の流れによって
表面上は〝フツウ〟に生きている我々も「42」だろ、と。

***

この映画は事実(史実)とは違うであろう、ということは抑えつつ。
イグナシオ(夫)は、なかなかひどい人物になっていますね。
1900年初頭という時代性もありますが、
妻に対してずっと酷すぎるし、
仲間たちが逮捕されて
自分だけが救われて(映画の中の話ですけどね)
仲間たちはかなり酷い目に遭っているという情報は流石に入ってくるでしょう
そんな中でも
淡々と自分だけフツウの生活に戻って暮らしている。
(ひとすじの涙を流すだけで済ましてんじゃねえよ、と)
政治家という社会的な立場もあるし
妻の立場もあるし
という言い訳はいくらでもできるけど
あまりにも41人たちと差がありすぎる。
差別に遭って苦しんでいる仲間たちがいることを知っていても
自分は波風立てずに暮らしさえいれば、安心安全に生きられる。
この生き方が「クソ」とまでは言わないけど
映画の主人公としてはなかなか珍しい。
「自分が差別に遭っていないから、差別差別と騒いでいるうるさい奴らとは距離を置く」人物ってのは
少なくとも痛快娯楽映画の主人公ではない。
でも大丈夫!
この映画は痛快娯楽映画ではないから!
なぜイグナシオはあんなにも愛したエヴァを助るための行動を起こせなかったのか。
彼が冷たい人間だから?
時代のせい?
大統領の義理の息子だから?
答えはわかりませんよ。
痛快娯楽映画じゃないもん。


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