ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

君が去った後も記憶は残るだろう、と春がボクにそう云った

2023年03月23日 | R100Trad (1990) クロ介


サクラの開花が話題となる平和な国のこの頃

賃上げとは無関係なボクの春だけど

少子化や海の向こうの戦争とも無関係なおっさんの春だ

社会に住まう以上、無縁ではなかろうよ、と云われそうだが

春の穏やかな日差しだけは

人類共通の喜びとして有難く頂こう



新東名 新城ICから国道257号線で

豊川をたどっていくと

思わず満開のサクラに迎えられた



正に文字通りの満開

山里の厳しい冬の寒さの向こうにまた巡ってきた春

木々や花々、鳥や獣たちの弾むような喜びに満ちていた

 
 
 





百花繚乱

とは云え奥三河の春はまだ浅く寒い

茶臼山では残雪でスキーをする人たち

標高1,000mを超える高原には冬の冷たい風が吹きつけて腹が冷える



日差しを受けていれば暖かいので

椅子に座って日向ぼっこ

コーヒーが旨い

お菓子のパックがパンパンの高原



バイクブームと云われているようだけど

なるほど平日でもオートバイの姿を見かけるようになった

でも事故を見かける頻度も増えてる気がする

分母が増えてるから当然といえば当然なんだけど

おっさんの死亡事故のニュースも多い

今日来る途中にも

千万町の集落の中の緩いカーブに

フロントが折れて車種も不明なほどつぶれたアプリリアがころがっていた

くれぐれも命を大切にと祈るばかりだ

事故は誰の上にも突然降りかかり

数秒で命を落とす

前方に意識を集中することが何より大事だ

モトブログと称して走りながら講釈垂れてる動画を目にするけど

そんなに運転中に余裕ぶっこいてて大丈夫かい

僕には無理だね

気が緩んでるな、と感じるだけでゾッとするくらいだから

そういえば、立ちごけもよく目にする

立ちごけ、甘く見ない方が良い



それにしても春

春の花に「ゆきやなぎ」がある

「雪柳」



細く長い柳のような枝先に雪が降り積もったように

小さな真っ白い花が無数に咲き

早春の風に揺れる様は華やかで美しい

子どもの頃、もう50年以上前のこと

岡崎公園にはこじんまりとした遊園地があった

バッテリーカーとか、外周をゆっくり走る汽車とか

ゴンドラが10個もないような観覧車とか……

若い両親と兄と、生まれたばかりの妹

花見に訪れた日曜の午後、ここで遊んだ記憶が

ボクの数少ない家族の記憶だ

今では機械仕掛けの遊具は撤去されて

滑り台やブランコが置かれて僅かに面影を残すのみだ

サクラの季節になるとそのサクラの根元に雪柳が一斉に咲き揃う

数年前にその遊園地跡を懐かしさから訪ねた時

撤去された遊園地の後に咲く雪柳の光景の美しさに

少し涙ぐんでしまった

若くして亡くなった父

そのあと苦労してボクらを育ててくれた母

時間に埋もれて記憶はやがて消えていくのだろう

けれど風に揺れるゆきやなぎはそっとボクにささやく

「だいじょうぶ、全部覚えているよ」と

降りそそぐスギの花粉を蹴散らして春の山へ行く

2023年03月11日 | R100Trad (1990) クロ介


今年の冬も去年と同じような傾向だったので

今年もまた春の訪れが早いのだろう

と思っていたら

きのう開花している桜の木を見てしまった

全体的にはまだ2週間くらいかかりそうだけど

日当たりとか風当たりとかの関係で

一足先にパッカンする花もある

まあ寒いより暖かいの方が良い

春はウェルカムだよ



週の頭に家人と恵那の山間にある風呂を訪ねた

県境の峠は路傍の残雪も無ければ

路面の凍結も(気配すら)無かった

となれば、入院(腰上の整備)明けのクロ介がだまちゃいない

車庫に行くたび

「行くのか?」と散歩を待ち詫びるバカ犬のように見つめ返してくる

天気予報士どもが「春の陽気」と口を揃えるその日

さっそく「涼風」まであいさつに出掛ける



走り出してみると奴等が云うほど暖かい訳ではなく

うっすらと北の風を孕み、寒いの方が感覚的には勝つ

でも、それはそれ、もう真冬のそれではない



久しぶりのワインディングで身体の動きがうまく連携しない

小さなカーブで向き変えのタイミングを馴染ませながら走る

左コーナーは案外すぐに感覚が戻るけど

右コーナーは少し上体が残る感じが消えない

外側の左ステップに力が入ったり

逆に内側の荷重に力が入ったり

無理に合わせようとすると腰を捻る動きが出て

さらに違和感が強くなる



オートバイの乗り方って自転車と同じで

口で説明できない

でも理論がわかっていると、身体の動きを客観的にみられる気がする

「多くの人が右コーナーが苦手」

これの説明が明確にできるかどうかで

そのライダーのレベルが見える

クラッチ使いながらウィンカー操作しずらい

っていうのもレベルがわかる

でも、こっちは「はじめの一歩」だ



すべてが無理なく「はまる」コーナリングは

ロードスポーツモトの醍醐味だよね

ということで

帰るころにはすっかり勘を取り戻せた





久しぶりの「涼風」

かーらーのー

三河湖



まだ風が冷たい

それよりも「春の3K」がドエライ(=ものすごくの意)ことになとるでいかんわ

春の柔らかい日差しに山や森がぼんやり霞んでいるのか、と思ったら

杉の花粉がまるで水しぶきのように風に乗って飛んでいたよ

ボクは花粉症とまではいかないけど

アレルギー体質なのでちょっとツライ

眼がシカシカして、おサルみたいな顔になった

ちなみに「春の3K」って

「花粉」「強風」「乾燥」

実はあんまりいい季節じゃないのかもね

オートバイに乗ってニヤついてるジジイはボクです、たぶん

2023年03月02日 | R100Trad (1990) クロ介
案外トシ喰ってるんですよね、こいつ

艶有のまっ黒いオートバイなんて21世紀には絶滅した種族



1990年4月生まれ

午年の33歳

距離は走っていないけど

時間だけは容赦なく経っていて

やっぱりゴムやらプラスチックやらの劣化がでる

手に入れてから2年経ったけど

14年間店頭で放置されていたクロ介を

徐々に走らせて、走らせながら未だに不具合をつぶす日々だ

今回は今シーズンの開幕に向けて大きな修理をした



OHVエンジンなのでプッシュロッドがクランクケースから突き出るんだけど

そのロッドケースの取り付けパッキングが劣化してオイルを吹いているのと

もう最初からなんだけどニュートラルスイッチのオイル漏れの対応



対応って云ってもスイッチの交換だ

シリンダー外すついでに燃焼室内の点検とカーボン取り

吸気経路のスリーブ(ゴム製)も交換してもらう



ヘッドが開いた時点で見させてもらったけど

心配したようなカーボンの蓄積はなく

距離相応のキレイさ具合だった





特に問題もなく作業はあっさり終わって

引き取りに行ってきた



代車に借りてたのはモト・グッツィのBREVA750

ドリューーーーーーと唸りながら不思議な加速感

縦置きクランクつながりだけど

90度V型ツインは別物だな



春の陽気だったから

帰りはちょっと遠回り

キャブレターの同調がびったりでアイドリングが低くきまる

BMWモトラッドはR32をL/Oして今年で100年

節目の年を迎えた

そして今ガソリンエンジンは終焉の時を迎えようとしている

オートバイはなくならないだろうが

内燃機関で動く地上の乗り物はもう今後無くなるのだ

DOHCのマルチシリンダーエンジンが

10,000rpmへ向けて吹き上がっていく時の戦慄

「えらいもん買っちまったな」とちょっと途方に暮れる自分に気付きながらも

信号グランプリに明け暮れた学生時代

最速で無敵のためにオートバイはどんどん進化していき

毎年のようにオートバイを乗り換えていた

ケースリードバルブの2スト

バーチカルツイン

単気筒のオフ車

リッターマルチ

なのに気付けば今では20世紀の遺物にゾッコンで

刺激「0(ゼロ)」のフラットツインエンジンをコロがしている

ずっとオートバイには乗っていたし何台も所有してきた

アレコレいろんな物事に目移りして

オートバイが疎かになったことだってある

でも、人生のデザート期(イルカが晩年のことをこう云っていた)に入って

ボクはオートバイがいちばん好きなんだ、と

心から思った

だからエンジンが無くなると思うとちょっと虚しくなるんだ

もし人生にオートバイが存在していなかったらどうだったんだろう

電気仕掛けの2輪車、好きになったかな?

多分ならない

だってオートバイってやっぱりエンジンなんだと思う

クルマは電気モーターみたいな回転力とパワーを求めて

マルチシリンダーのV型エンジンに収束していったけど

コンシュマー向けプロダクトに限って云えば

オートバイは4気筒マルチへ行った後

ツインに戻ってきてるからね

学生の頃、ボクはカワサキのマルチZ400GPに乗ってた

友達がホンダのスーパーホークⅢに乗ってて正直小馬鹿にしてたんだけど

(当時はツインなんてただの時代遅れだと思われていた)

ときどき乗り換えっこした時の

ツインエンジンの扱いやすさに複雑な思いがした

それと信号からの出足がツインのほうが断然良くて

マルチは回転上げないとついていけなかったことにモヤモヤしたよ

いろんな車種

いろんな形式のエンジンに乗ってきて

オートバイの魅力は2輪であることと同時に

多種多様なエンジンにあると思う

でもね

エンジンはなくなると思う

どう考えても電気モーターのほうが効率がいい

工業製品が効率を求めているのは間違いないのだから

モビリティが電動化するのは必然なんだろう



まあ死んだ後の話はどうでもよい

ニヤニヤひとりでほくそ笑んで

じじいがオートバイ乗ってる

オートバイはおもしろいな、ってね