ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

ツライ記憶の方が強く残るのはヒトのサガ、それともボクのサガ 北海道のこと その1

2024年05月30日 | SR400 RH16J(2019)シータ


人間の記憶とはおよそいい加減なものだけれど

「快」の記憶より「不快」の記憶の方を優先的に、しかもしっかりと

アタマの何処かに仕舞い込んでいくような傾向があるように感じる

しかもその「不快」の記憶は

それを体験している時の印象とはガラッと変わってしまっていて

辛く苦痛を伴っていたはずの記憶なのに

逆になぜだか愛おしい瞬間だったかのようによみがえるのだ



5月の20日から一週間

北海道を走ってきた

十数年ぶりの北海道はやはり素晴らしく感動的で

苫小牧でフェリーを下り

支笏湖へ向かう樹海の中の国道を走り始めた瞬間に

普段とは違う自分になったように感じる程の高揚感に包まれた

青空に叫び

森の木々に叫び

すれ違うライダーたちに手を振った

こんなの自分じゃないな、と笑ってしまう自分が愛おしいほどなのだ



けれど5日間 1700kmを走った結果

もっとも印象に残っているのは

季節外れの寒気に包まれ一日中雨に降られた3日目なのだ

今まで信頼していた防水ブーツには1時間で裏切られ

新調したレイングローブは2時間持たなかった

気温は一桁、6℃とか7℃

北海道で最も高い三国峠(1132m)は霧

留辺蘂へ峠を下って行く時

指先はパンパンに腫れ上がって痺れ

身体の震えを呼ばないように何度も止まってはオートバイを下り

駐車場を歩き回って体温を上げた



もう何度もツーリングに出ているが

その中でも5本の指に入る辛さだった

雨には慣れているが浸水した手と足の指先が

10℃以下の気温で凍るような経験は初めてだった

「辛いなー」と呟きながら

こころのどこかでそれを楽しんでいた

ロングツーリングの醍醐味は

陳腐な言い回しかもしれないけど

過酷な状況に身を置くことなのだ



何とか凌いでその日は美幌にて投宿

そして4日目の朝

美幌峠は積雪

峠の入口の掲示板に「美幌峠 凍結 夏タイヤ通行不可」と出ていた

気温は10℃くらいだったが風が強い日だったので

陽があたれば行けるんじゃないの、と根拠もなく考えながら

ずるずると峠に近づく

路肩のフキの葉が風でめくれて白く見えているのかと思ったら

その白いものは葉に積もった雪だった

思う間もなく周囲の森の木々は綿帽子をかぶり

路肩にもうっすらと雪が残る

現地でもニュースになるほど珍しい積雪だったようだ




結果的には何事もなく通過できたが

やっぱりこういう経験は強く心に残っていく

人間の本質はマゾなのか

いや

こんな目に二度と会いたくないからしっかりと記憶して

次に備えるようとする防衛本能みたいなもんだろうか

でもそれが楽しみでもあるとするなら

やはりマゾヒスティックなのか



昨日自宅に戻ったばかりなので

北海道については次の機会にもう少し書きたいと思う



泥の塊になったSR400

朝から爽やかに晴れ上がったので

まずは水洗いしてやった

そのあと外せる部品を外したりして

中の中まで入り込んだ泥を落とす

夕方までやってたけどまだ2,3日かかりそうだ

それにしてもこんなに晴れると

オートバイに乗りたいなー、と考えるボクは

バカなのでしょうか?


たとえリスクを上回る楽しさがあるとしても、君を想う人がいることを決して忘れるな

2024年05月13日 | 日記・エッセイ・コラム


毎週週末が近づくと

また誰かが死ぬのかなと漠然と思う

そして実際に週末のオートバイ事故のニュースを目にして

その度に暗澹たる気分になるのだ



自分では注意しても防ぎきれない事故はある

けれどカーブを曲がり切れずとか

自分で防げる事故もとても多い気がする

白バイ隊員が右直事故にあったニュースを見て

右直事故の難しさを痛感したが

右直事故(側道、駐車場からの進入を含む)こそ

ボクたちライダーが最も気を付けるべきもので

経験と意識と技術がとても大切になってくる

しかし、かく云う自分だって

今日右直事故にあわないという自信はない

自信はないがこれは防げる事故だと思っている



オートバイに乗り始めた頃

走るたびにドキリとしたりヒヤリとしたりしていた

けれどまずはこの体験がものを云う

急に横からクルマが出てきたことにドキッとするとは

全くそのクルマの存在がノーマークだったということだ

けれどその時、ドキッとしたクルマの存在に本当に気付けない状況だったのか

自問することが重要だ

警察のネズミ捕りにあって

「汚いやり方だ」と抗議したら

レーダーの見える場所まで連れていかれて

「隠してないでしょ」と云われた

警官が云うとおりレーダーは100m手前から確認できたし

それが小さな子供だったり進入しようとするクルマだったら

見逃しているということと一緒なのだとも云われて何も返せなかった

追尾してくる白バイだってそうだ

良く周囲を確認していれば白バイはミラーで確認できる

こういった体験からの気付きが「経験」になっていくのであって

最悪なのはシビアケースに会っているのにそれに気付いてもいないこと

ヒヤリとしてもそれから学ばないこと

それではいつになっても事故のリスクを減らしていけない



そして実際に交差点や路面に店が並ぶ幹線道路を走る時

ボクはいつも「右直右直」と声に出して意識するようにしている

そういう場所ではなるべく自分と他の交通との位置関係を変えずに

(身軽なことを逆手に取ったすり抜けや急な進路変更は最も危険だ)

出来れば回避できる場所を常に意識する

F1パイロットの中嶋悟がレース中は常に自分の位置を

上空から俯瞰するように捉えていると云っていたが

まさにそれが理想だ



その上で急制動の技術を上げておく

リアの意識的なロックや

ABS搭載車なら確実にABSを効かせられるレバー入力



経験と意識と技術



それに比べて単独の自爆事故は原因がはっきりしている

脇見か技術不足だ

運転中に前方を注視するのは大原則だ

周囲の状況を(俯瞰する如く)確認しながら

前方に常に意識を向けていれば事故はかなり防げる

とにかく自分が事故の第一当事者になってはいけない



そして自爆事故

もちろんコーナリング中が多い

路外に逸脱するだけでなく

反対車線の交通を巻き込んだりもする最悪の事故だ

そこで問いたい

「あなたはオートバイをどうやって曲げていますか?」

どんな方法でもいい

自分なりのコーナリングメソッドははっきりさせておくべきだ

カーブが苦手なんて臆面もなく云ってるやつはどうかしてる

曲がり方が曖昧なのによくも公道で走ってるな

スピードのコントロールもコーナリングの内だ

リアブレーキ使えてますか

ブラインドの先に自転車いたらどうしますか

濡れたマンホールがライン上にあったらどう回避しますか

こんなことも出来ずに今まで公道をおしゃべりしながら走ってたなら

それはただただ運が良かっただけだ

そしてその運はいつ不運に変わるのかもわからない



もちろん最初にも云ったが

事故は防げないケースも多い

だからどんなに経験しても意識しても

どんな技術を身に付けても

事故にあう可能性はゼロにはならないだろう

ボクだってこんなに偉そうに事故を語っていても

今日オートバイで事故にあうかもしれないのだ

けれど防げる事故も必ずあると信じる

毎週毎週オートバイの事故のニュースなんて見たくないのだ



ロングツーリングに出掛ける前日だけでなく

明日オートバイに乗ろうかなというと

なぜだか漠然とした不安感が少し心の隅にあるのをボクは感じる

心配性だなんて恥ずかしいなと思ったこともあるけど

これが事故に対する不安からのものならば

この感じはとても大切なことだと今は思っている

オートバイに乗ることはとても楽しい

リスクを上回る楽しさが確実にある

けれどキミを心配してくれている人のことを絶対に忘れるな

キミはたとえ事故で死んでも後悔すらできないけど

キミの死が残された者のその後の人生をも左右することもあるのだから



さて

いよいよ来週は久しぶりの長旅に出ます

事故に気を付けていってきまーす