人間の記憶とはおよそいい加減なものだけれど
「快」の記憶より「不快」の記憶の方を優先的に、しかもしっかりと
アタマの何処かに仕舞い込んでいくような傾向があるように感じる
しかもその「不快」の記憶は
それを体験している時の印象とはガラッと変わってしまっていて
辛く苦痛を伴っていたはずの記憶なのに
逆になぜだか愛おしい瞬間だったかのようによみがえるのだ
5月の20日から一週間
北海道を走ってきた
十数年ぶりの北海道はやはり素晴らしく感動的で
苫小牧でフェリーを下り
支笏湖へ向かう樹海の中の国道を走り始めた瞬間に
普段とは違う自分になったように感じる程の高揚感に包まれた
青空に叫び
森の木々に叫び
すれ違うライダーたちに手を振った
こんなの自分じゃないな、と笑ってしまう自分が愛おしいほどなのだ
けれど5日間 1700kmを走った結果
もっとも印象に残っているのは
季節外れの寒気に包まれ一日中雨に降られた3日目なのだ
今まで信頼していた防水ブーツには1時間で裏切られ
新調したレイングローブは2時間持たなかった
気温は一桁、6℃とか7℃
北海道で最も高い三国峠(1132m)は霧
留辺蘂へ峠を下って行く時
指先はパンパンに腫れ上がって痺れ
身体の震えを呼ばないように何度も止まってはオートバイを下り
駐車場を歩き回って体温を上げた
もう何度もツーリングに出ているが
その中でも5本の指に入る辛さだった
雨には慣れているが浸水した手と足の指先が
10℃以下の気温で凍るような経験は初めてだった
「辛いなー」と呟きながら
こころのどこかでそれを楽しんでいた
ロングツーリングの醍醐味は
陳腐な言い回しかもしれないけど
過酷な状況に身を置くことなのだ
何とか凌いでその日は美幌にて投宿
そして4日目の朝
美幌峠は積雪
峠の入口の掲示板に「美幌峠 凍結 夏タイヤ通行不可」と出ていた
気温は10℃くらいだったが風が強い日だったので
陽があたれば行けるんじゃないの、と根拠もなく考えながら
ずるずると峠に近づく
路肩のフキの葉が風でめくれて白く見えているのかと思ったら
その白いものは葉に積もった雪だった
思う間もなく周囲の森の木々は綿帽子をかぶり
路肩にもうっすらと雪が残る
現地でもニュースになるほど珍しい積雪だったようだ
結果的には何事もなく通過できたが
やっぱりこういう経験は強く心に残っていく
人間の本質はマゾなのか
いや
こんな目に二度と会いたくないからしっかりと記憶して
次に備えるようとする防衛本能みたいなもんだろうか
でもそれが楽しみでもあるとするなら
やはりマゾヒスティックなのか
昨日自宅に戻ったばかりなので
北海道については次の機会にもう少し書きたいと思う
泥の塊になったSR400
朝から爽やかに晴れ上がったので
まずは水洗いしてやった
そのあと外せる部品を外したりして
中の中まで入り込んだ泥を落とす
夕方までやってたけどまだ2,3日かかりそうだ
それにしてもこんなに晴れると
オートバイに乗りたいなー、と考えるボクは
バカなのでしょうか?