ソロツーリストの旅ログ

あるいはライダーへのアンチテーゼ

振り返ってみるとオートバイがいちばん好きだった

誰かが何かを奪っていく、それが進化だとすればさびしい

2023年04月29日 | R100Trad (1990) クロ介


今年は季節の進みが早く

天候も比較的安定していて

何より暖かくなって暮らしが楽だ



4月は案外忙しく過ごした

定期的に通っている医者をいくつかこなし

健康診断へも行った

庭の手入れをしたり

富士山のほうへキャンプにも行った



そうだ

モーターサイクルショーへも久しぶりに行った

でも新車のオートバイに興味が無いのであれはムダだったかな

セントレア(中部国際空港)と同じ空港島に出来た新しい展示場

スカイエキスポ(愛知県国際展示場)で開催だったから

はじめて名鉄の空港特急ミュースカイに乗って行った

あれこそが収穫だったか





世界は需要と供給でできていると見る向きがあるが

昨今、それに振り回されている感があるように思う

売れているモノに価値があり

ために売れるモノを作り出すことに必死になる

買う側は失敗を恐れるあまり

ベストバイとか高評価をネットに探し求める

誰かが良いというモノを買い

誰かが旨いというモノを喰う

「世界に一つだけの花」という流行歌が記録的にヒットする国の住人は

逆に恐ろしく無個性だ

未だ9割以上の国民がマスクをし続けているのも頷ける





営利目的のプロダクトなので仕方が無いといえばそうだが

手間が掛かったり

操作が難しく煩雑だったり

効率が悪かったり

そういうところに新たなニーズを安易に求めるあまり

機械はどんどん便利にスマートになったが

半面ひどく冷たくつまらないモノになったとボクは感じる





たとえば、オーディオ

音源であるレコード盤から物理的に振動を拾い上げるレコードプレーヤー

結果的に多種多様な製品を生み出すほどに奥が深い

そこには様々な問題がある

物理的な振動を電気信号に変換する仕組みや

レコード盤の溝が1本であるために生じる外周と内周のスピード差の問題

ターンテーブルを駆動するときに混入するモーターの振動

最終目的は歪、ムラ、ノイズを極限までなくすこと

アナログであるが故に開発者の数だけ製品が生み出されていった

そして80年代にはほぼ人間には判別不可能な領域に到達したが

同時にオーディオの世界にデジタル化の波が押し寄せた

しかし今になればわかる

アナログオーディオには測定できない個性が確かに存在しているのだ



たとえば、カメラ

写真の露出と云うのは本当に難しいもので

早い時期からメーカーはカメラ普及の手段として

オート露出の「バカチョンカメラ」と呼ばれるが賢いカメラを製品化していた

しかしそうはいっても露出はそれほどカンタンな話ではないので

実際にフィルムを現像してプリントしてみるまで分からなかったわけだ

それにその撮影から現像、プリントという工程が長く

写真屋に持って行きまた取りに行くことや

プリントに1枚50円とかのコストの負担もかかった

撮影したデータをすぐにみられるデジタルカメラが普及するのは必然と云える

だけれども

カメラが進化すればするほどユーザーに光を映し撮る仕組みをわからなくしていった

モノクロ写真と云うと単にモノトーンの写真と思いがちだが

アンセル・アダムスのゾーンシステムによるプリントを見たことがあるだろうか

(印画紙の)白から(像が存在しない)黒までの10段階の諧調を

バランスよく再現したモノクロプリントの美しさ

デジタルカメラのモノクロモードでは

大抵「ねむい」写真になりがちだ

デジタルカメラならRAWで記録しPC上で「現像」すればいいが

フィルムカメラの場合撮影意図を反映させるためには

色温度を変換したりコントラストを調整するためにフィルターを選ぶ

露出とピントを選択し

現像時には液温や時間を調整する

様々な工程が必要だ



オーディオはデジタル化により歪やムラを限りなく「0(ゼロ)」にし

あとはリスニングルームの残響と共振をどうするかまでいった

プログラムで作り出される3Dの音像は確かにすばらしい

カメラは露出はおろかピント、色、トーン、ボケなどあらゆる表現を

自動化させ画像処理エンジンで最適化する

不要なものを消し、ブレを無かったことにし、ピント位置を変更する

あとは何(モチーフ)を撮るのかまで行きついた

でも考えて欲しい

仕事でやっているのなら表現の幅が広がる素晴らしい進化だけど

ボクがしてるの趣味の話だ



オートバイのトラクションの問題はエンジンの特性とジオメトリーで解決すべきで

200km/hで60度以上にバンクさせてコーナリングする

レース用車両と同じ電子制御なんかじゃない

ブレーキングを最大効率でいつも安全にを担うのは本来はABSでなく

まずはライダーの技量だ

安全にブレーキングを練習し習熟するための施設と機会が必要なのだ

低速バランスや立ちごけだってそうだ

一輪車を考えて欲しい

安全に乗るために補助輪を前後左右に取り付けますか?

バランスをとるためにジャイロとサーボモーターで制御しますか?

ヘルメットとプロテクターを付けて安全な場所で練習あるのみ

誰だってわかる論理だ



これからの未来でもオートバイに気軽になんて乗らなくていい

オートバイは楽しくて楽しくて、そしてあぶない乗り物なのだよ

それでも、それに跨り走り出そうとするヤツは

これからも絶対にいるはずなのだ



今の工業製品に感じるのはニーズへの応答というより

利益至上主義的な安易なトッピングビジネスに見える

チャーシュー1枚、ナルトにシナチクの「普通のラーメン」500円に

チャーシューを5枚にした「チャーシュー麵」800円というやつだ

チャーシュー4枚で300円のほとんどは利益だ

ABSは装着義務だから仕方ないとして

「(無いより)有ったほうがいい」の装備で利益を生んでいるようにしか見えない

排ガス規制やカーボンニュートラルへの対応でメーカーの苦労も理解するが

オートバイという乗り物を一体どう考えているのだろう

と、消費者の立場からだが疑問に感じている

ハイプライスのモノを購入して優越感を得たいヤツらにすり寄らなくていい

金(カネ)だけがこの世界のすべてなはずが無い

金で愛(人の気持ち)は買えないと分かっているのに

一目置かれるためならいくらでも金と時間を使う消費者が多すぎやしないか



好きだからあえて云わせてもらうけど

オートバイだけはクルマのように

他の工業製品のようになってもらいたくない

あのモーターサイクルショーを見て

「何か違うな」

「何かおかしいな」

と感じた違和感をメーカーに突きつけて欲しい

と、間もなくこの世を去るであろうジジィは溜息をついているのだよ



いくら天邪鬼でも満開のサクラにうんざりだなんて言うな

2023年04月03日 | R100Trad (1990) クロ介


早朝、花冷えの空気の中

伊勢道を南下していた

大袈裟かな、と思ったけどライトダウンを着てきたのにサブい



あのちゃんSA

正確には安濃サービスエリア

朝食に外のベンチでサンドイッチをつまんでいたら

震えがくるくらい身体が冷えて

仕方なくもう一度中へ行ってアツアツのコーヒーを一杯

それでもちょっとマシかレベルだ

経験上走ってるほうがサブくない気がするので走り出すことにする



それにしてもサクラだ

松阪IC辺りのすごいサクラ並木を皮切りに

今日はどこもかしこもサクラの大渋滞だ

熱烈歓迎 桜花爛漫

サクラ絵巻の走馬灯を見ているようだ

もうエエねん、ってくらいのサクラだ

日本人のサクラに対する情念を思い知らされる

過ぎたるはナンチャラ、ちょっとうんざりする

なんて贅沢なボヤキも出そうだ



勢和多気ICで高速を降りて国道166号線を西進する

参宮街道とも呼ばれている古い街道だ

もう兎に角ここもサクラ、サクラのオンパレード

おまけに日差しが一杯の青空

日頃の心がけの良さの賜物というより他ない日和ですよ

もうダウンもいらない

パニアからスイングトップを出して着替える



国道166号線は

中央構造線の中を激しく屈曲を繰り返す櫛田川を辿って

うねるようなワインディングが続く

もちろん大好きなヤツだ

交通量もほとんどなくて独り占めの快走

やがて前方には紀伊山地の山並みが幾重にも重なって迫る

谷筋が狭まり

民家が途切れると

国道は一気に高度を上げて高見峠へと向かう

全長2470mの高見トンネルを越え吉野へ出た

県道16号線を使ってショートカット

熊野街道 国道169号線に合流する

季節がら吉野山へ向かうクルマが多いのかなと思ったけど

なかなかどうしてこっち方面もクルマが多い

そのためペースはぐっと落ちたが、まあ仕方ない

おおたき龍神湖を見下ろしながらのろのろ進む

さらに上流の大迫ダムを過ぎると熊野へとさらに峠を越える

ずいぶんむかし、竜神スカイラインが有料だったころ

そこから見た「V字谷」のすごさは印象的だったけど

国内有数の降雨地帯の水量にはまったく圧倒される

ゴリゴリと隆起する紀伊山地をあんなにも深くえぐり取っていく水の力

紀伊半島の大部分を占めるこの山と谷の険しさは想像以上だが

国道は尾根から尾根へとループ橋でつないでワープするかのように

ダイナミックにルートをつなぎ

いとも容易く峠を越えていく

日本の公共事業費は防衛費とほぼ同額

この二つを足しても社会保障費には全く届かない

あ、どうでもいいか

交通インフラは行政の重要な柱

ま、ちょっと公平性の部分で地方に過剰かなと感じる

あ、またどうでもいい話

前後に伸びたのろのろの車列に交じって走ると集中力が落ちる



大峰山と大台ケ原に挟まれた北山川の谷を下っていくと

その川幅が徐々に広がっていることに気づく

この先にある巨大な池原貯水池の端部だろう

立派なトラス橋を渡るたびにさらに川幅が広がる

ダムは近い



「池原ダム」はアーチ式ダムの中で総貯水量国内第1位

洪水吐が別の斜面に設置されるため

ダム堤はすっきりとただ美しいアーチを描く

けれど堤高が111mもあるため恐怖しか感じない

そして総貯水量3億3840万㎥!の水量だ

夏に豊根ダムのことを書いたときに貯水量4040万㎥が

途方もなく想像できないと驚いたけど

この池原貯水池は桁が違うのだよ!



巨大なダム湖の向こうに

無数のサクラに埋め尽くされた下北山スポーツ公園が見えた

なんだここは

このクルマやオートバイの多さの意味をここに来てやっと悟った

下北山はサクラの名所だった

「ものスゴーい!」

こんなアホな形容詞がぴったりの桃源郷(桜だけど)

今日の行程のまだ半ばにも達していないのに

もうすっかり走る気喪失しちまったわさ



「カーブの店」という洒落た名前のコンビニでアレを手に入れる

アレだよ、アレ



思わぬ花見となった

サクラ目的でなくここに来てるのはこのオッサンくらいだろう

きてるというか、来てしまってるんだけどね

でもいい

花見だ



イスを広げ湯を沸かしている間もなぜか不思議な笑みが止まらない

なんなら鼻歌でも歌いだしそうだ

たくさんの人が来ていて、皆一様に楽しそうだ

―――みんな!いい日に来られたね!

サクラ、うんざりだ、なんて云ってゴメンナサイ