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◇企業システム◇富士通と米レッドハットがLinuxで提携し世界戦略推進

2008-11-26 16:50:03 | SI事業

 【SI企業】富士通と米レッドハットは、ミッションクリティカル領域でのLinuxサポートサービスにおけるグローバルな提携関係を強化した。具体的には、これまで富士通が培ってきたメインフレームの保守サポートのノウハウを基に、サポート期間の拡大やスピードアップを図った基幹業務システム向けの新たなLinuxサポートサービスを両社共同で開発し、富士通を通じ日本国内から販売を開始し、順次グローバルに展開していく。 (08年11月18日発表)

 【コメント】NECに続き富士通がLinuxのミッションクリティカル分野の強化に乗り出した。しかも、今回の強化は米レッドハットと提携し、世界市場を視野に入れての展開を図るものだけに、その位置づけはNEC以上に注目される。具体的にはサポート期間の延長で、これによりユーザーは長期間の利用年数を必要とするミッションクリティカル分野でのLinux利用が可能となる。今回の2社の提携の背景には富士通がメインフレームでの豊富なノウハウを有していることが挙げられる。メインフレームのリーダー役を担っているのはIBMであることは今も昔も変わらないが、昔は複数のIBM互換機メーカーが米国内および日本に存在していたが、徐々に淘汰され、最後はIBM、ユニバック(現ユニシス)、富士通、日立、NECの5社に絞られてしまい、現在に至っている。この中で米ユニシスは経営的危機に陥ったこともあり、実質はIBMに日本の3社が残ったことになる。IBMはメインフレームにLinuxを搭載させ延命策を図っており、レッドハットにとってIBMは、ミッションクリティカル分野では協業よりも競合するといった側面を持つ。そこで残ったのは富士通と日立であるが、現在、富士通は社運をかけて海外市場進出を成功させようとしており、レッドハットとしても組みやすい相手となったのではないか。

 今後、ミッションクリティカル分野においては、Linuxが大きく市場を拡大して行くことになろう。富士通はメインフレームについては、今後長い時間をかけLinuxサーバーにソフトランディングさせていく腹をくくったのではなかろうか。問題はIBMである。IBMはメインフレームにLinuxを搭載させて延命策を図り、これがまんまと成功して一息ついた。さらにIBMは、事業自体のグローバル化に取り組み、全世界を対象にして得意分野をごとに各国のIBMを再編し、これも今のところうまくいっているようだ。そしてロシアなどまだまだメインフレームが売れる国はたくさん残っているので、当分の間、左団扇の状態にある見ていいであろう。問題はメインフレームの市場が飽和したときIBMはどうするかである。多分Linuxサーバー市場を目指すであろう。ということは富士通は今がLinuxサーバーを全世界に売る絶好の機会だとは言えまいか。鬼の居ぬ間の洗濯ではないが、IBMがメインフレーム市場を諦める前に全世界でLinuxサーバーを売り、ユーザーを獲得することが急務となる。

 このことは富士通一社のことではなく、日本の次世代の産業の牽引役を情報産業が担わねばならない運命にあるからだ。これまで日本の産業を牽引してきた自動車産業は今後厳しい状況になる。また航空機・宇宙産業も中国、ロシア、インドなどの台頭でそう簡単には伸びられそうもない。家電産業も韓国のサムスンなどのような巨大な競業メーカーが今後現れれてくる可能性がある。こうした消去法で考えると残るのが部品産業と情報産業である。昔日本のメインフレームメーカーの生き残りをかけ通産省と各メーカーがスクラムを組み、うまく乗り越えることができたという実績がある。今回の富士通と米レッドハットの提携は、単に2社だけの提携に終わらせず、他のメーカーおよび経産省を含めた国家プロジェクトに格上げする必要があるのではないか。Linuxサーバーを日本が世界に普及させるには今しかないのだからだ。

 ところで日本IBMの業績がはかばかしくない。これは一日本IBMのことだけでないように思われてならない。というのは既に国内の情報産業は飽和状態で、今後伸び続けるのは非常に難しい局面に入りつつあるからだ。日本IBMは打開策としてこれまで比較的手薄であった中堅・中小市場を開拓する方針を打ち出しているが、これまでのIBMの文化で中堅・中小市場を開拓するのは難しいのではないか。このことは国産の大手ITメーカーにも言えることだ。ただ、国産の大手ITメーカーには世界市場という“逃げ道”が残されている。しかし、この“逃げ道”はそう簡単には前に進めない
道であることだけは確かなことだ。(ESN)