企業システム・レビュー・ネット

企業経営を左右する企業情報システム(経営+ITソリューション)のデータバンク作りを目指す

◇企業システム◇日立製作所がレッドハットと提携し、基幹システム用Linuxの強化を図る

2009-11-11 09:42:10 | SI事業

 【SI事業】日立製作所とレッドハットは、このたび、基幹系システムへのLinux適用が進む市場状況に対応し、基幹系Linuxシステム向けのサポートサービス分野での提携を強化することで合意した。今回の合意に基づき、Linux予防保守の負担を軽減し、サポート期間を延長する新サービスを両社が連携して商品化し、日立から提供開始する。これによりLinuxシステムでの保守コスト最適化と長期にわたるシステム安定稼働を図り、基幹系システムへのさらなるLinux適用を支援する。今回の提携強化では、さらなる保守コストの最適化や長期安定稼働を求める市場ニーズに対応して、日立がレッドハットの基幹システム向けLinuxサポートプログラム「Advanced Mission Critical Program」に参画し、このプログラムに基いた基幹システム向けの新たなLinuxサポートサービスを日立から提供する。(日立製作所/レッドハット:09年11月5日発表)

 【コメント】最近のIT界の話題は、クラウドに席巻された感があるが、その陰ではオープンソースソフトウエア(OSS)市場は、着実に前進を見せている。というより、OSS市場を確立されたから、今日のクラウド市場が誕生できたと見ることの方が実態に近いであろう。もし、既存のシステムであるオンプレミスの状態に市場全体が踏みとどまっていたら、クラウドのような自由なシステム空間に到達するには、相当長い時間を要していたに違いない。そういう意味で、仮想化ソフトとともにOSSが企業システムに果たした役割は大きいといえる。

 OSSの代表的なソフトはLinuxであり、これまで基幹システムに耐えうるようにLinuxの改良が加えられてきたが、今回日立製作所はこれをさらに一歩進め、レッドハットと提携し、レッドハットの基幹システム向けLinuxサポートプログラム「Advanced Mission Critical Program」に参画し、①予防保守の作業負担を軽減する「アップデート拡張保守オプション24 for Red Hat Enterprise Linux」②Linuxメジャーバージョンのサポート期間を延長し、長期安定稼働を支援する「バージョン固定保守オプション24 for Red Hat Enterprise Linux」の2つのサービスを提供を開始するところに意義がある。既にノベルとマイクロソフトが提携し、具体的な基幹システム用のLinuxに向けたサービスを提供していることに対抗したともとれる。もっとも、最近仮想化ソフトでマイクロソフトとレッドハットが提携するなど、単純に、敵だ、味方だということだけでは、論じきれない面もあるのも事実だ。ただ、今後大手ITベンダーがレッドハットと提携し、レッドハットの基幹システム向けLinuxサポートプログラム「Advanced Mission Critical Program」に参画するとなると、レッドハットの基幹システムにおける優位性が一層鮮明になるわけで、今後注目する必要があろう。

 最近、独SAPも、OSS市場強化に取り組むことを発表したことが注目される。独SAPは、幅広く採用されている実証済みのオープンソース・テクノロジーへの取り組みを強化し、オープンソース・ソフトウェア・プロジェクト独立財団であるApache Software Foundation(アパッチ・ソフトウェア財団)の多数のプロジェクトに参画すると発表した。SAPは開発者とユーザーからなるApacheコミュニティと協力し、業界内の標準化を推進し開発者が成功するために必要なツールを提供するために、オープンソリューションの開発と活用をさらに支援することを計画している。SAPは、Maven、VXQuery、Tomcat、OpenEJB、ActiveMQなどのプロジェクトにさらに貢献し、これらのテクノロジーを、今後発表されるSAP NetWeaver Application Serverコンポーネントに活用し強化していく考えでいるという。

 IT業界にあっては、ブームが去ってから本格普及が始まると、これまでよく言われてきたが、OSSも正にこのことが当てはまるのではなかろうか。つまりOSSはこれから本格普及期に入るということがいえるかもしれない。そう考えると企業システムを対象としたクラウドは、今がブームの時期で、本格普及は大分後になりそうだ。(ESN)