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◇企業システム◇日本IBMとノベルがサンのSolarisユーザーをLinuxへ移行作戦

2009-08-17 09:13:13 | SI事業

 【SI事業】ノベルと日本IBMは、基幹業務にSolarisのユーザーを対象に、「SUSE Linux Enterprise Server」OSを搭載したIBMのスケールアップ型サーバー製品群へ移行し、移行コストと期間を最適化しながら運用・管理コストの削減を支援するための、共同コンサルティング・チームを組織し、移行に関する無償アセスメントから有償移行作業までを含んだ包括的な移行支援プログラム「リナックス搭載スケールアップ型サーバー移行支援プログラム(SUPRI:SUSE Linux Enterprise Server Scale Up Migration Program Running on IBM)」を提供する。ノベルと日本IBMでは、基幹システムの中でも特にデータベース・サーバーの移行が最もコスト削減効果が大きいと考え、今回のプログラムは主にデータベース・サーバーの移行を対象としている。 (日本IBM/ノベル:09年8月6日発表)

 【コメント】サンのSolarisユーザーをターゲットにするプロジェクトは、既に日本HPやレッドハットから相次ぎ発表されているが、今回の日本IBMとノベルによる発表も、サンのSolarisユーザーをLinuxサーバーに移行させようとするプロジェクトである。サンにとっては正に受難の時代が始まったわけである。きっかけとなったのはオラクルによるサンの買収事件だ。まさかサンがオラクルに買収されるなんて誰が考えただろう。IBMがサンを買収したならなるほどと、多くの人も納得せざるを得なかったかと思うのであるが・・・。

 それにしてもビジネスというのは何と非情なことか。ちょっとでも弱みを見せれば、そこを突いてくる。少しはスポーツマンシップでも見習ったらどうなのかとも思ってしまう。しかし、HPやIBMやノベルにしてもいつ何時襲われるかもしれないのだから、仕方がないのか。いずれにしてもIT業界というのは、弱肉強食のジャングルにいるようなもので、すこしでも弱みを見せたら終わりなのかもしれない。

 今回の日本IBMとノベル連合の戦略は、データーベース・サーバーに絞った作戦のようだ。日本IBMの試算では、Solarisで稼働する16台のデータベース・サーバーを、IBMのスケールアップ型サーバー1台へ統合することにより、サーバーの保守料金やソフトウェアの使用料金も含めた5年間の総所有コスト(TCO)を約70%削減し、CO2排出量も約80%削減できると見込んでいるという。コスト削減、CO2排出量削減は、最近の殺し文句なので、これによってSolarisサーバーをLinuxサーバーへの移行を狙っているようだ。

 コスト削減、CO2排出量削減は、最近の機種になればなるほど有利なわけで、この点での移行作戦は特別目新しいものではない。問題は、OSがUNIXからOSS(オープンソースソフトウエア)のLinuxへと移行しつつあることだ。現在、話題の焦点となっているクラウド/SaaSの有力ベンダーであるグーグル、セールスフォース・コム、ネットスイート(先ごろ富士通と提携し、今後セールスフォース・ドットコムの対抗馬になるものとみられる)は、すべてLinuxをベースにビジネスを展開している。さらに、スパコン分野でもLinuxをOSとする機種が主流となり始めている。

 調査会社の予測によると、今後のOSの勢力分野はWindowsがトップを走り、その後をLinuxが追い、UNIXは頭打ちか微減ーというストーリーが示されている。しかし、今後クラウド/SaaSの存在感がIT市場で大きくなっていくと、急速にLinuxの比重が増してくるかもしれない。これはOSSという考え方が背景にあるからである。クラウド/SaaSというのは、これまでの最先端のITの成果を、思う存分取り入れて初めて成り立つビジネスである。そのときオープンでないITは邪魔者そのものになってくる。そうなるとOSSをベースとしたLinuxが最後の勝者になるという結論に達するのであるが・・・。(ESN)