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◇企業システム◇セールスフォース・ドットコムが「OEMパートナー・プログラム」を発表

2009-12-21 09:15:18 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】セールスフォース・ドットコムは、クラウド型のビジネスアプリケーション開発および提供を支援する「OEMパートナー・プログラム」を発表した。同プログラムは、システムインテグレーターやISV(独立系ソフトウェアベンダー)が、ERP(統合基幹業務)や人材管理などのアプリケーションをエンタープライズ・クラウドプラットフォーム「Force.com」上で迅速かつ低コストで開発して市場全般に提供できるようにし、パートナー企業のクラウドビジネスを支援するもの。すでにNEC、日立ソフトウェアエンジニアリング、富士通、ジラッファ、日本オプロがOEMパートナーとしてアプリケーションの開発・提供開始を決定している。(セールスフォース・ドットコム:09年12月15日発表)

 【コメント】クラウドがどこまで普及に加速度をつけるのかが、企業システムの2010年の最大のテーマになりそうな情勢になってきた。09年はベンダー各社が先を争ってクラウド製品やサービスの発表を行い、“クラウド元年”の様相を深めた。つまり、これまで長年にわたって自社導入が基本となってきた企業システムは、自社にはサーバーは置かずに、外部のセンターのサーバーを使い、ソフトウエアについてもSaaS化した製品を導入するスタイルが、本当に企業システムの当たり前の姿となるのかどうかが、2010年には問われることになってくる。言ってみれば、企業ユーザーは、ベンダー各社が提案したクラウド製品を導入しますか?ということが問われているのである。

 ベンダー各社が発表しているパブリッククラウド製品やサービスには、まだまだ精査しなければならない要件がたくさんある。最大の問題はセキュリティだろう。各企業の顧客データや経営データがセンターに集中するわけで、これらのデータをどう保護するかが課題になる。世界中に散在しているセンターのいったいどこに自社のデータが置かれているのか、皆目分らない状態に置かれてしまうからだ。万一、データの漏洩が発生した場合に、センターが設置してある国の法律によって裁かれるのかどうか。さらに、クラウドの扱うデータ処理は“自動”が基本となるが、誤ってクリックするとデータが一人歩きするといった、最近起こった株売買システムのトラブルのようなことも起きかねない。

 このような中、セールスフォース・ドットコムは、Salesforce CRMのプラットフォームである「Force.com」上で開発されたアプリケーションの流通を狙いとした「OEMパートナー・プログラム」を発表した。これはかつてマイクロソフトがWindows上でのアプリケーションの流通を促進させ、世界制覇を成し遂げたスタイルとよく似ている。クラウドは標準化がうまく機能しないと、ユーザーにとってはあまり旨みはない。しかし、これまでの例だと、ISOなどでの標準化にはかなりの時間がかかり、日進月歩の技術革新には追いつけないきらいがある。こんなときにセールスフォース・ドットコムが発表したことは、「Force.com」をクラウドアプリケーションの事実上の世界標準にしてしまおうという同社の意図が垣間見える。「Force.com」を、“クラウドのWindows”にしようとしているのかもしれない。

 今回、OEMパートナーが提供するアプリケーションとして、次のようなものが発表された。NECは、企業・自治体等向けのソリューション開発の環境としてForce.comを活用し、次ののアプリケーションを提供する。「ITILをベースとした簡易サービスデスク」「ダイレクトマネジメント」「イノベーション促進のためのディスカッション」。日立コンサルティングは、グローバル人材管理データベース。日立ソフトウェアエンジニアリングは、No.1販売パートナーとしての実績をもってForce.com上でのグローバル情報共有基盤(グローバル対応グループウェア及びグローバルOA業務支援)を提供。富士通は、販売管理システム。富士通は、関係会社である米国Glovia International, Inc.において、「Force.com」上のアプリケーション「glovia.com Order Management」を米国にて既に販売し、約50社での稼働実績を持っているが、今後、国内での展開も計画しているという。現在、「Force.com」上で開発されたアプリケーションは全世界で135,000を超えているというから、今後猛威を振るうのは確実のようだ。(ESN)