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◇企業システム◇日立システムアンドサービスが新しいクラウドサービスを開始

2009-10-05 09:27:34 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】日立システムアンドサービスは、クラウドコンピューティングへの企業ニーズを見据えた事業を拡大するために、SaaS事業の企画、営業、システムインテグレーション、構築、運用保守を一貫して推進する新組織、「SaaS事業推進センタ」を10月1日付けで発足、次世代クラウドコンピューティングを統合した「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」を提供を開始する。「ハイブリッドインテグレーション」は、①仮想化技術を使った既存設備のインターナルクラウド②日立グループ内外のデータセンタを利用したプライベートクラウド③ビジネスプロセスのアウトソ-ス対応④使用量課金によるSaaS型の提供などを取り揃えていき、これらをユーザーに最適な形に組み合せることで、従来型の資産所有型ITシステムの利点と次世代クラウドコンピューティングの資産利用型ITシステムの利点との双方を生かしたITシステムを提供していく。(日立システムアンドサービス:09年10月1日発表)

 【コメント】クラウドコンピューティングにユーザーの関心が高まる中、各SI企業ともこれに対応した部隊の新設およびサービスの提供を本格化させている。今回日立システムアンドサービスでも、クラウド事業の新しい組織とサービスを発表したもの。これまでは、クラウドサービスを開始しただけでもニュースになり、それなりの存在感を植えつけられたが、これからは、ただ単にクラウドサービス開始といっても、一時ほど注目度はなくなり、何らかの特徴付けが欠かせなくなってくる。

 その点、今回の日立システムアンドサービスの「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」の発表は、単にクラウドサービスを開始するという意味以上の内容があり、注目される。「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」とは、“Hybrid System Integration”の略で、オンプレミス開発とクラウドコンピューティングを統合するサービス名の造語である。ここでいうオンプレミス開発とは、従来型の自社の専用システムによるシステム開発を指す。つまり、自社内にサーバーを設置してアプリケーションを走らせる従来型のシステムとデータセンターを使ったクラウドサービスとを、同じ環境でユーザーが使うことができる、これまでにない新しいサービスを提供しますよという意味である。

 日本の企業は、情報システムについては、保守的な側面を有しているケースが多い。よくメインフレームの保有数は日本が世界の中でも突出していたことが引き合いに出される。メインフレームからオープン型サーバーに切り替えるのに相当時間がかかったというわけである。確かにそういうことが日本の企業ユーザーにいえるかもしれないが、私は、日本の企業ユーザーはかなり厳密にシステムにつくり込みをして、愛着を持つ。そうなると新しいシステム環境にそう簡単には乗り移れなくなる。このことが大きく影響しているように思えてならない。このことは車にも言え、海外では車は単なる移動手段としてとらえるが、日本ではぴかぴかに車を磨き上げ、車内装飾にも凝るという違いがオーバーラップして映る。

 今回、日立システムアンドサービスが提供を開始したクラウドサービスは、そんな性格を持つ日本の企業ユーザーにも容易に取り入れられるのではなかろうか。ようやく、メインフレームからオープン型のサーバーシステムに切り替えたばっかりなのに、また今度はクラウドサービスといわれても、そう簡単には切り替えられないユーザーでも、徐々にクラウドの世界を取り入れることが可能な今回の日立システムアンドサービスの「ハイブリッドインテグレーション(Hybrid_SI)」ような混合型なら抵抗は少なく済むかもしれない。一部では「クラウドでは、メインフレームの轍は踏まない」といったようなことも囁かれているようだし、いかにタイミング早く新システムに取り組むかが問われている。(ESN)