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◇企業システム◇シスコとEMCとヴイエムウェアの3社、仮想化/クラウドの新組織を結成

2009-11-09 09:56:38 | クラウド・コンピューティング

 【クラウド】米シスコと米EMC、ならびに米ヴイエムウェアは、情報技術(IT)業界の大手のこれら3社が協力する、まったく新しい連合組織「Virtual Computing Environment (バーチャル コンピューティング エンバイロメント:仮想コンピューティング環境)」の設立を発表した。同連合は、大規模なデータセンター仮想化とプライベートクラウド基盤への移行を実現することにより、IT基盤の柔軟性を強化し、IT、エネルギー、不動産関連のコストを削減することで、ユーザーのビジネスの俊敏性の向上を支援することを目的に設立された。 (シスコ/EMCジャパン/ヴイエムウェア:09年11月4日発表)

 【コメント】今回のシスコとEMC、ヴイエムウェアの3社の提携の発表は、満を持したものと考えられる。これは、クラウド時代の幕開けの現在こそ、これら3社がその存在感を発揮しなければ、埋没しかねないような大きな変革の時代を向かえつつあるからだ。シスコはネットワーク製品の拡大の絶好の機会と捉えているはずだ。また、EMCは、ストレージ製品を単体として販売するのでなく、これからはネットワーク、すなわちクラウドの中の一つのコンポーネントとしての位置づけを狙うであろう。また、ヴイエムウェアは、これまでは仮想化ソフト市場でトップシェアを誇ってきたが、今後マイクロソフト、シトリックス、オラクルなど、強力なライバルとの熾烈なシェア争いに巻き込まれることは避けられず、強力な援軍が必要になっていたという事情があろう。

 大規模なデータセンターの仮想化とプライベートクラウド基盤への移行を実現することにより、IT基盤の柔軟性を強化することを目指すことになるが、今回これを実現するため検証済みの「Vblockアーキテクチャ」を提供することになる。このVblockアーキテクチャは、即座の使用と拡張が可能な完全統合型の基盤パッケージとなっている。また、シスコとEMCのソリューション合弁会社として「Acadia」を設立することにしている。このAcadiaは、仮想化やプライベートクラウド コンピューティングの普及を促進しながら、同時に運用コストを削減したいと考える組織向けに、Vblock基盤の構築・運用・移管を行う。顧客活動の開始は2010年第1四半期を予定している。

 今回のVirtual Computing Environment連合の成否のカギを握っているのは、パートナー戦略が成功するかどうかであろう。同連合では既に強力なパートナー体制が確立しており、その中には、システムインテグレータ、付加価値リセラー、サービスプロバイダー、独立系ソフトウェアベンダーからなるパートナー エコシステムの代表が含まれ、発表時点において、Accenture、CapGemini、CSC、Lockheed Martin、Tata Consulting Services、Wiproの6社がパートナーとして参加 していることを明らかにしている。今後、これらのパートナーを軸に、どこまで組織を拡大できるかが課題として残ろう。

 ところで、クラウドの普及の見通しは、今のところ楽観論(夢)が先行しているが、今回の発表の中では実態と見通しが述べられているので紹介しよう。McKinsey and Companyの試算によれば、データセンター技術基盤とサービスに対する年間支出額は全世界で3,500億ドルを超え 、その内訳は資本コスト(製品)と運用コスト(サービスと労働力)が半分ずつとなっている。さらに、それらのコストの約70%もしくはそれ以上が既存の基盤に対する保守に当てられており、企業の画期的な差別化を可能にする新しいテクノロジー構想やアプリケーションの導入に回されるのは30%に満たないのが現状。また、2015年までに、市場規模の20%に当たる約850億ドルがデータセンターの仮想化やプライベートクラウド技術に充当される可能性があると試算されている。(ESN)