【クラウド】日本HPは、アプリケーションをインターネット上のサービスとして利用できるクラウド・コンピューティングに最適化した専用クライアント端末「HP t5730wi Internet Appliance」を発表した。今回発売する新製品「HP t5730wi Internet Appliance」は、国内外を問わず多くの高い導入実績持つHPシンクライアントのノウハウを活用した、業界初のクラウド・コンピューティング専用端末。Sun Java6.14やAdobe Flash10などのWeb化されたアプリケーションを利用するのに必要なソフトウェアをプリインストールしているほか、ハードディスクドライブ(HDD)や光学ドライブ、冷却ファンなどの駆動部品を搭載していないため、静音性が高く壊れにくい環境を提供する。また、ユーザーごとに必要なモジュールを組み込んだ、ユーザー専用のマスタイメージをプリインストールし出荷するサービスをあわせて提供することで、ユーザーの初期設定作業の工数を低減できる。(日本HP:09年10月5日発表)
【コメント】 “クラウドコンピューティング専用端末”と称した製品がいよいよ市場にお目見えした。その名誉ある第一号製品となったのが、今回の日本HP製のクラウド・コンピューティング専用クライアント端末「HP Internet Appliance」である。しかし、クラウドと付くと何か目新しく感じるが、よく見るとそう大げさなクライアント端末ではない。というのも、Webアプリケーションをすぐに利用できるソフトウェアをプリインストールしてある点と、同社がかねてから注力してきたシンクライアント端末機能をドッキングさせたところがポイントなっているからだ。
日本HPでは、端末にデータを保持しないセキュアなソリューションとして、データセンター内の1台のブレードPCを1台の端末に割り当てて最大限のパフォーマンスを実現する「HP CCI (HP Consolidated Client Infrastructure)」、プロセッサーのマルチコア化によって性能向上が進んだブレードサーバーのリソースをCitrixやVMwareなどの仮想化ソフトウェアによって各端末で共有するクライアント仮想化ソリューションなどを、ソリューション「HP RCS(Remote Client Solution)」として提供しており、今回のクライアント端末「HP Internet Appliance」は、これらと組み合わせて活用することで威力を発揮する。クラウド環境は、仮想化、シンクライアント、ブレードサーバーなどの技術・製品の統合化によって初めて実現できるものであり、その意味では、クラウド時代では、真に総合力のあるベンダーだけが最後に生き残れる、過酷なサバイバルレースとなってくる。
その意味から、クラウドサービスは、グーグルやIBMを例外として、1ベンダーだけではとても生き残れそうにもない。日本HPは、今回のクラウド・コンピューティング専用クライアント端末「HP Internet Appliance」の事業のスタートに際しては、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)とパートナー戦略をとった。CTCは、ホスティング型オフィスツール「Google Apps Premier Edition」と今回の日本HPのクラウド・コンピューティング専用クライアント端末「HP Internet Appliance」を組み合わせ、企業のクラウド・コンピューティング実現に向けたトータルなインテグレーションサービスの提供を、日本HPの発表とあわせ09年10月5日に発表したのである。CTCでは、09年7月にGoogleと販売代理店契約を締結し、Googleが提供するホスティング型オフィスツール「Google Apps Premier Edition」の販売、サポートを開始しており、今回日本HPのクラウド専用端末「HP Internet Appliance」をラインナップに加えたもの。
グーグルが世界的に提供するクラウドサービス「Google Apps」が、いよいよ日本での本格展開がスタートしようとしている。一部ではこれらの新しい動きに懐疑的な見方があり、現に最近米国で大量の顧客データの消滅事件が発生したばかりだ。しかし、このような“事故”を乗り越えてでもIT全体がクラウド化することは違いはない。日本で最初の本格的SaaSユーザーとなった郵便局会社もさらに拡大の意向を示しており、キリン、東急ハンズ、ローソン、ユニクロなど大手企業がこぞってクラウドサービスを導入し始めていることが、このことを証明している。(ESN)