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◇企業システム◇3人のシステム担当者しかいない企業が、クラウドシステムを導入し成果

2009-06-15 10:06:06 | システム開発

 【ユーザー】米穀を使った加工食品を製造・販売する、はくばく(本社:山梨県南巨摩郡、代表取締役社長: 長澤 重俊)は、「Force.com」で問い合わせ管理や出張申請アプリケーションなど、合わせて約10種類のクラウド・アプリケーションを開発してITインフラを再構築、業務の効率化とスピードアップを実現した。外出の多い営業担当者はこれらのアプリケーションを利用して、取引先からの最新の問い合わせ内容などがリアルタイムで確認できるようになり、顧客満足度の向上につながっている。また、外出先からも稟議の承認などが行えるため、社内情報の停滞もなくなった。同社では、今後も「Force.com」で、さまざまなクラウド・アプリケーションを構築し、全社にわたる業務の効率化、コスト削減を目指している。 (セールスフォース・ドットコム:09年6月9日発表)

 【コメント】福田学園に続きセールスフォース・ドットコムのクラウドシステムを使った成功事例が今回の米穀加工販売業のはくばくの導入事例である。同社の社員数は約260名で、全国に営業所を10拠点、自社工場を山梨県とオーストラリア(1998年操業開始)に構えている。しかし、システム管理担当者は3名しかおらず、既存システムや全従業員のPC管理に業務の大半を費やしていたため、課題解決に向けた新たなシステム構築に注力することが難しい状況であった。

 はくばくでは、これまで紙やExcelで管理していた消費者や取引先からの問い合わせ情報の一元化をはじめ、さまざまな業務の効率化やコスト削減が課題となっていたという。 同社では同社は以前から「Salesforce CRM」を活用していたが、その基盤となっている「Force.comプラットフォーム」がサービス化されたのを受け、アプリケーション開発と利用をクラウド環境に集約することで自社の課題が解決できると判断、「Force.com」上でのアプリケーション開発に着手した。 この結果、約1年で10種類のアプリケーションを構築、さまざまな業務の改善を実施。

 一般消費者や取引先からの問い合わせ管理では、お客様相談室と品質保証部門が共有するアプリケーションを開発したことにより、これまでよりも迅速かつ的確な対応が可能になったという。また、稟議書の回覧、出張申請など、社内情報を掲示するアプリケーションを開発して、従来のグループウェアを廃止、保守管理コストをゼロにすることができた。その結果、システム担当者の負担も軽減され、さらなる業務効率化に向けたシステム開発に注力できるようになった。

 同社のようにシステム担当者が3名しかいない企業にとって、社内アプリケーションを開発しシステム運用管理することは、意外に難しい。よくグループウエアの活用ということが議論に上るが、同社の場合、グループウエア導入の成果は得られなかったようだ。このようなシステムネックを一挙に解決する手段としてクラウドシステムは大いに効果があるということが、今回の同社の事例が証明して見せた。つまり、従来のグループウエアを廃止し、保守管理コストをゼロにすることに成功したのである。

 クラウドシステムを導入して、その成果が如実に発揮できるのは、同社のようなシステム担当者が少ない企業であろう。しかし、大企業においても一つの事業部門を取ってみるとシステム担当者が少ないか、いないケースが多い。つまり、大企業においてもクラウドシステムの導入は検討に値するシステムといえるのではないだろうか。(ESN)