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◇企業システム◇米大手旅行会社がUNIXに代えレッドハットLinuxを採用

2008-08-28 15:51:16 | ユーザー

 【ユーザー】世界的旅行会社の米セーバーホールディング社は、このほど基幹業務をUNIXサーバーからRed Hat Enterprise Linux5を搭載した数千台のHPx86サーバーにリプレースした。これによりコストの削減効果と3倍の性能向上を実現すると同時に、システムの信頼性およびスケーラビリティの向上も実現した。新システムの処理能力は、数百万人のオンライン顧客に対し、最高32000件/秒、週7日24時間利用可能で、稼働率はファイブナイン(99.999%)に達している。 (08年8月20日発表)

 【コメント】これまで大手企業の基幹システムは、長い間メインフレームが中心に構築されてきた。これはシステムの信頼性、流通ソフトの豊富さ、技術者の蓄積などがその背景にあり、そう簡単には他のマシンに切り替わることはなかった。しかし、IBMが独占するメインフレーム市場は競争原理が働かず、コストの面から徐々にユーザー離れが始まった。そして、ユーザーがメインフレームに代わり選択したのがUNIXであった。UNIXはベンダーごとに異なる仕様のOSを生み出してしまったという弱点を持ちながらも、サン、HPなどのIT企業の発展を促し、結果的にはユーザーの選択肢を拡大させるというメリットももたらした。UNIXはもともとメインフレームの使用環境を個人レベルで実現できないかというニーズから生まれたもので、オープンシステムが基本に据えられており、この意味からは大きな前進であった。

 メインフレームをDECのミニコン上で実現したのがUNIXだとすると、UNIXをパソコン上で実現した一つがLinuxである。このときリーナス・トーバルズはインターネットを介して全世界の技術者に共同開発を呼びかけ、今で言うオープンソースという考え方でLinuxを完成させたことが成功のカギとなった。オープンソースのLinuxのカーネル部分は無料である。コストの点でメインフレームからUNIXに移行したユーザーが、今度はUNIXからLinuxへと向かうことは必然な動きである。Linuxは当初企業システムでは末端のシステムで使われてきたが、最近になり都市銀行の勘定系システムなど基幹システムとして十分機能することが実証されつつある。今回、米セーバーホールディング社が基幹システムにUNIXに代えLinuxを選択したのは、この実証例の一つとなるもの。

 メインフレームからUNIX、そしてLinuxへという流れは、最後にWiodowsにたどり着く。ここでユーザーとしてはLinuxを選択すべきか、Windowsを選択すべきか、迷うところとなる。Linuxは低価格で、オープンソースというスピードある技術革新の恩恵を受けやすい。一方、Windowsは一つのポリシーの下、既に確立された安定した基盤を活用できる。これからの企業システムはLinuxが勝ち残るのか、Windowsがクライアント市場と同様にサーバー市場でもイニシアチブを握るのか、大きな岐路に立たされている。(ESN)