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◇企業システム◇NTTデータなど国内SI企業6社が「非機能要求グレード」を公開

2009-06-01 09:39:20 | システム開発

 【システム開発】NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、OKIの国内SI企業6社が参加する「システム基盤の発注者要求を見える化する非機能要求グレード検討会(非機能要求グレード検討会)」は、非機能要求に対して情報システムの発注者(ユーザー)と受注者(ベンダー)が共通の認識を得ることを目的としたツール群である「非機能要求グレード」を、09年5月26日から公式Webサイトにて公開したが、今回新たに「非機能要求グレード」を公開した。これは08年9月に公開した「システム基盤の非機能要求に関する項目一覧」に、主要な非機能要求を早期に発注者と受注者で確認するための「システム基盤の非機能要求に関するグレード表」を新たに追加したもの。「非機能要求グレード」を活用することで、発注者と受注者で非機能要求を段階的に確認でき、発注者の利用目的により合致したシステム基盤の構築に貢献することができる。 (NTTデータ、富士通、NEC、日立製作所、三菱電機インフォメーションシステムズ、OKI:09年5月26日発表)

 【コメント】非機能要求とは、システムの障害時の耐性や応答速度などの性能といった、情報システムの強度や品質などについての発注者がシステムに求める要求のこと。この「非機能要求グレード」を実際の多種多様なプロジェクトで利用できるようにするために、Webサイトにて「非機能要求グレード」に関するパブリックコメントを募集し、寄せられたコメントは「非機能要求グレード」のさらなる改善・改良に向けて、成果物に反映していく予定となっている。非機能要求グレード検討会の最終成果物の公開は09年度下期を予定。

 同検討会は、システム開発において、非機能要求の見える化と確認方法を共同検討するために08年4月に発足。これまで企業ごとやプロジェクトごとに行われていた情報システムの非機能要求の見える化と確認方法について、国内SI企業6社が結集して発注者と受注者の両者で共通の認識を持つための方法を検討し、IT業界ならびに発注者企業まで広く利用されるものにすることを目指している。同検討会では各社の持つシステムの非機能要求の事例や知見をベースに検討し成果物第一弾として08年9月に「非機能要求項目一覧」を公開した。また、経済産業省主催の発注者企業7社などが参加し、同検討会も協力した非機能要求グレード「ユーザビュー検討委員会」からの改善要望を受けて検討を進めてきた。これらの結果、「非機能要求項目一覧」に具体的な選択肢を発注者へ提示できるように要求の実現レベルの段階を設け、より早期に重要な非機能要求を検討できるようにすることを狙ったツールである「グレード表」を新たに策定し、今回「非機能要求グレード」として公開したもの。

 同検討会の活動は地道な活動であるが、システム構築に取り組む場合に避けて通れない問題だけに、今後市場での定着をにどう取り組むかが成否のカギを握っているいるといえる。ある意味では問題点を抽出して、機能の策定をすること自体は、大変な作業ではあるが何とか実現できる内容である。問題は完成した成果物が実際に使われるかどうかだ。

 100年に一度の不況に直面している各企業は、IT予算を極端に切り詰めようとする。そうなるとSI企業の営業マンは、無理に受注を取ろうとすると、システム化の中身を煮詰める前に案件の成立を狙いがちだ。そして一旦受注を決めた案件は、問題点があっても目をつむり、進行させがちとなる。このような状況で、同検討会の案がどこまで活用されるかの保証は全くないといってもいいほどだ。そこをどう切り抜けるのか。実際は「どう運用するかは各SI企業の自覚に待つ」だけというのが本音の
ところだろう。

 これまで大規模なシステムがトラブルが起きるたびに、SI企業とユーザーのシステムの認識の食い違いが取りざたされてきた。もうこの辺で法制度化も検討していいのではないか。マンション建設でミソをつけた建築業界であるが、IT業界も建設業界並みの法制度をつくらなければ、同じ過ちは今後も起きると思うのだが。(ESN)