妻には弱い食材がある。苦手という意味ではなく、これを見たら食べずにはいられないという意味である。ホワイトアスパラ、手長エビ、すっぽん、ポルチーニなど、考えたら結構沢山ある。五十嵐シェフの「マノアール・ダスティン」に行ったのは、その一つ、すっぽんがきっかけだった。
すっぽんといえば鍋が定番だが、「マノアール・ダスティン」はフランス料理の店である。無論、すっぽん鍋はない。ここでは冬にジビエとともにすっぽん料理を出している。ある雑誌で“冬の海の幸とスッポンの煮込みマノアール・ダスティン風”というのを見て、絶対これ食べる! と言って、二人で出かけたのだった。
まずアミューズのブータン・ノワールに感動した。言葉で説明すれば豚の血のソーセージであり、ちょっとおどろおどろしい感じがする。だが焼きリンゴの酸味とともに頂くブータン・ノワールはとっても上品な味わいだった。オードブルの後にメインのすっぽん。白子、黒トリュフ、とこぶしなども入っており、いずれも濃い味だが、すっぽんの旨みとのハーモニーが絶品だった。
食事の後、妻が本当においしかったのでシェフによろしくお伝えくださいとお店の人に言ったところ、それではシェフを呼びましょうと言われ、五十嵐さんが出ていらした。熊を思わせるような(失礼)、大きく、やさしい感じの方だった。そして妻は、例のごとく、あの料理には何が入っていて驚いたとかいった類の話をシェフとしていた。僕はちょっと微笑みながら黙って聞いているしかない。最近CMで見た、英語がわからないのに解った振りをし笑っている日本人にそっくりだ。それ以来、ここには何かの記念日などによくお邪魔している。
2年近く前だろうか、偶然近所で入った店が五十嵐さんのお店だった。聞けば、パンをメインにやりたいとオープンした店とのことである。半分がパン屋さんで、半分がレストラン。フランス語のラジオが流れていて、洒落た雰囲気だ。店の名前は「ヴィエイユ・モンターニュ」。八丁堀の交差点のすぐ側にある。今は変わられたが、当初は五十嵐シェフの弟さんがシェフをされていた。
ここはブラッセリーということで「マノアール・ダスティン」より値段が安いが、料理はどれもおいしい。こちらは普段行く店なので「マノアール・ダスティン」よりも行った回数はずっと多い。お店の人にも覚えられており(実は初めて行ったときにワインをしこたま飲んだからだが)いつもよくして下さる。
唯一の心配はこの店がなくなることだ。八丁堀のこの場所、あまりフレンチのお店に向いた場所とは言えない。八丁堀、新川とオフィス街だが、会社の同僚が男同士でフレンチを食べにはまず行かない。行くなら居酒屋だ。一方、自分の会社の近くで彼女や彼とフレンチは食べない。知っている人間には見られたくない。さらに八丁堀というのは他からわざわざ人が食事に来る街ではない。勢い、店に来る人間は限られてしまう。
八丁堀近辺の皆様、男同士でも、大人数でも構わないので、是非「ヴィエイユ・モンターニュ」にお出掛け下さい。それもこれも偏にお店存続のため。ワインの品揃えが充実し、より美味しいワインが飲めるように。
ところでお願いしておいて何だが、この店ですっぽんを食べることはできない。今はブータン・ノワールも出していない。(といっても本家「マノアール・ダスティン」でも今度の冬まですっぽんを食べることはできないが。)
この店が続き、また皆さんの記憶が冬まで続くことを願わずにはいられない。
すっぽんといえば鍋が定番だが、「マノアール・ダスティン」はフランス料理の店である。無論、すっぽん鍋はない。ここでは冬にジビエとともにすっぽん料理を出している。ある雑誌で“冬の海の幸とスッポンの煮込みマノアール・ダスティン風”というのを見て、絶対これ食べる! と言って、二人で出かけたのだった。
まずアミューズのブータン・ノワールに感動した。言葉で説明すれば豚の血のソーセージであり、ちょっとおどろおどろしい感じがする。だが焼きリンゴの酸味とともに頂くブータン・ノワールはとっても上品な味わいだった。オードブルの後にメインのすっぽん。白子、黒トリュフ、とこぶしなども入っており、いずれも濃い味だが、すっぽんの旨みとのハーモニーが絶品だった。
食事の後、妻が本当においしかったのでシェフによろしくお伝えくださいとお店の人に言ったところ、それではシェフを呼びましょうと言われ、五十嵐さんが出ていらした。熊を思わせるような(失礼)、大きく、やさしい感じの方だった。そして妻は、例のごとく、あの料理には何が入っていて驚いたとかいった類の話をシェフとしていた。僕はちょっと微笑みながら黙って聞いているしかない。最近CMで見た、英語がわからないのに解った振りをし笑っている日本人にそっくりだ。それ以来、ここには何かの記念日などによくお邪魔している。
2年近く前だろうか、偶然近所で入った店が五十嵐さんのお店だった。聞けば、パンをメインにやりたいとオープンした店とのことである。半分がパン屋さんで、半分がレストラン。フランス語のラジオが流れていて、洒落た雰囲気だ。店の名前は「ヴィエイユ・モンターニュ」。八丁堀の交差点のすぐ側にある。今は変わられたが、当初は五十嵐シェフの弟さんがシェフをされていた。
ここはブラッセリーということで「マノアール・ダスティン」より値段が安いが、料理はどれもおいしい。こちらは普段行く店なので「マノアール・ダスティン」よりも行った回数はずっと多い。お店の人にも覚えられており(実は初めて行ったときにワインをしこたま飲んだからだが)いつもよくして下さる。
唯一の心配はこの店がなくなることだ。八丁堀のこの場所、あまりフレンチのお店に向いた場所とは言えない。八丁堀、新川とオフィス街だが、会社の同僚が男同士でフレンチを食べにはまず行かない。行くなら居酒屋だ。一方、自分の会社の近くで彼女や彼とフレンチは食べない。知っている人間には見られたくない。さらに八丁堀というのは他からわざわざ人が食事に来る街ではない。勢い、店に来る人間は限られてしまう。
八丁堀近辺の皆様、男同士でも、大人数でも構わないので、是非「ヴィエイユ・モンターニュ」にお出掛け下さい。それもこれも偏にお店存続のため。ワインの品揃えが充実し、より美味しいワインが飲めるように。
ところでお願いしておいて何だが、この店ですっぽんを食べることはできない。今はブータン・ノワールも出していない。(といっても本家「マノアール・ダスティン」でも今度の冬まですっぽんを食べることはできないが。)
この店が続き、また皆さんの記憶が冬まで続くことを願わずにはいられない。