縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

西武とサーベラスの淋しい(さもしい?)争い

2013-04-07 10:51:56 | お金の話
 以前西武鉄道の人事の方から聞いた話だが、西武には親子で働いている人が多いという。聞いたのは、例の総会屋事件や虚偽記載事件の前なので、今がどうかはわからない。しかし、かつての西武は、従業員に自分の子供も西武で働かせたい、あるいは従業員の子供に自分も父親と同じ西武で働きたい、と思わせるような良い会社だったのである。
 その西武が上場問題を巡り筆頭株主である米国のファンド・サーベラスと揉めている。

 事の発端は、3月12日付けで開始されたサーベラスの公開買付(TOB)。西武の32.4%の株式を保有するサーベラスが、更に4%の株式を買い増すというのである。1/3超の議決権比率を確保し定款変更やM&Aなど特別決議の拒否権を得るとはいえ、なんとも中途半端なTOBである。
 同社が発表した「公開買付説明書」によると、その目的は、西武のコーポレート・ガバナンス及び内部統制を強化し企業価値向上を実現すべく支援と助言を行ってきた同社が、引き続き西武を支援して行く意思を有していることを示すためだという。正直、何を言っているのかよくわからない。マスコミ報道によれば、言うことを聞かない西武の後藤社長を辞めさせるため、サーベラスが揺さぶりをかけているらしい。
 背景には、早期の株式上場を目指す後藤社長と、現在想定される株価では利益が出ないから上場するな、なりふり構わず収益を上げ、もっと高値で上場しろというサーベラスとの対立がある。
 3月26日に西武側はサーベラスのTOBに反対する旨の文書を公表しているが、サーベラスは西武にリストラによる収益改善を提案していたとのこと。具体的には、駅員の削減や不採算路線の廃止、西武ライオンズの売却等が挙げられている。また、プリンスホテルのサービス料値上げ、鉄道の特急料金値上げといった増収策や、鉄道・ホテルの本社人員削減等の提案もあったらしい。目先の収益を増やし上場時の株価が上がれば後はどうなっても構わないというのが、サーベラスの考えなのであろう。

 ところで、サーベラスが西武の筆頭株主となった経緯であるが、西武は有価証券報告書虚偽記載事件を受け2004年に上場廃止に追い込まれた。西武の親会社であったコクドは解散、西武グループは再編され、その際サーベラスが1,100億円の資金を投じ、西武の32.4%の株式を握る筆頭株主になったのであった。以来、西武の再建・再上場という共通の目標の下、両者の関係は良好であったが、再上場が目前に迫った中、上場時の株価を巡り対立、今の事態に至った。今後は6月の株主総会に向け、他の株主の支持を集めるプロキシーファイト(委任状争奪戦)に発展する可能性もある。
 西武には約14,000人の株主がいる。元オーナーの堤義明氏や取引銀行は西武支持を表明しているが、株主の過半を占める個人株主の動向はわからない。ただ従業員に愛されていた西武であり、おそらく個人株主には従業員やOBが多いと思う。もっとも既に代替わりした株主、つまり株式をただ相続しただけで西武に特に愛着のない株主もいる。彼らはどのような決断を下すのだろう。

 しかし、この争い、会社が、そこで働く社員のもの、社会のものと思われていたのどかな時代から、会社は株主の物であり、株主の利益最大化を目指すべきという金融資本主義が跋扈する時代に変わった中での淋しいというか、さもしい争いと思えてならない。


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