縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
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藪の中 ~ ジダンと移民問題 ~

2006-07-23 17:51:09 | 海外で今
 サッカーW杯決勝でのジダン(フランス)のマテラッツィ(イタリア)に対する頭突きは衝撃的な事件だった。両者が二人の間で何があったかを詳しく話さなかったことから、「汚いテロリスト」とか「テロ売春婦の息子」とか人種差別的発言があったのではないかとの憶測が流れ、大きな話題になっていた。
 その後の二人の発言から、どうやら人種差別的発言はなかったらしいが、ジダンが自身の最後の試合、かつW杯優勝がかかった試合であれだけの暴挙に出たということは、何もかも忘れ頭に血が上る発言をマテラッツィがしたことだけは確かである。

 さて、20日、FIFAが両者に処分を下した。ジダンには3日間の社会奉仕と罰金SFr.7,500(約70万円)、マテラッツィには2試合の出場停止と罰金SFr.5,000(約47万円)。けんか両成敗である。これでめでたしめでたしかと言うと、フランスを除き、驚きや不満が多いようである。
 その内容は大きく二つ、一つは挑発した人間まで罰を受けるのはおかしいというもの、もう一つはジダンの処罰が軽すぎるというものである。前者は、サッカーで相手を挑発するのは常套手段であり、マテラッツィを責めるのはおかしい、挑発に乗る方が悪いとの理由である。一方、後者は両者の比較感からジダンの処分が軽い、暴力を正当化するようだとの理由である。

 僕もこの処分には驚いた。確かに度を越した侮辱行為は許されるものではない。が、それに対し暴力で応えて良いのだろうか。今回のFIFAの処分では両者に大きな差はなく、ある意味、暴力を肯定しているかに見える。自信の名誉を守るためなら暴力もあり、と。
 又、ジダンのようなスーパースターの行動は子供達にも大きな影響を与える。実際、ジダンをかっこいいと思い、サッカーの練習そっちのけで頭突きの練習をするサッカー少年が多くいたと聞いた。

 思うのだが、本当は人種差別的発言があったのではないだろうか。移民問題に苦しむヨーロッパの状況を勘案し、それを伏せたのではないだろうか。であれば、ベテランのジダンが大切な試合で挑発に乗って暴挙に及んだこと、マテラッツィ本人から処分への反発が聞かれないことなど、合点がいく。
 ジダンはアルジェリア系移民である。98年にフランスがW杯で優勝した当時、移民問題は今ほど深刻ではなく、ジダンはじめ移民の力によりフランスは優勝できたと彼らはもてはやされた。しかし、その後のテロや、移民に強く同化を求める政府の方針もあって、移民問題は大きくクローズアップされてきた。2005年の大規模な暴動はまだ記憶に新しい。ジダンや家族の移民としての苦労に、こうした移民問題、移民への風当たりが強まったこととが相俟って、今回の頭突き事件のきっかけになったのかもしれない。両者の発言内容は公表されず、真相は未だ藪の中である。

 ところで、W杯が行われたドイツはトルコからの移民が多く、今年、ドイツ国歌のトルコ語版を作ろうとの話が持ち上がったそうだ。反対の方が圧倒的に多いらしいが、国家とは何か、言語を含め国民としてのアイデンティティが必要なのか、多様性を許容すべきか、ヨーロッパの多くの国では判断が求められている。少子化の進むわが国でも、いずれ起きる問題かもしれない。

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