縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

今回のストライキに見るフランスの矛盾

2006-03-30 21:44:38 | 海外で今
・第一の矛盾:初期雇用契約(CPE)の内容
 以前、アメリカのレーガン大統領は「税率を下げると税収が増える」と主張した。つまり、税率を下げると個人の可処分所得が増えて個人消費が増える。すると企業の売上が伸びて収支は改善し景気が良くなる。その結果個人の収入そのものが増え、さらに可処分所得が増える。こうした好循環により税収は増える。といった理由からで、いわば「風が吹けば桶屋が・・・・」の話だが、このときのアメリカは実際この通りになった。
 今回のストライキの原因となったCPEもこれに近い。なぜなら「解雇しやすくすることにより若年層の雇用を増やす」という逆説的な内容だからだ。そしてこれは経験的には有功な政策と言われている。

・第二の矛盾:低い労働組合の組織化率とストライキ天国
 フランスの労働組合の組織化率はわずか8%に過ぎない。一方、労働組合の弱体化、形骸化が著しいと言われるわが国の組織化率は20%を割り込んだものの未だ2桁である。にもかかわらず、ストライキの規模や行う業種の多様さはフランスの方が1枚も2枚も上である。今回のような公共交通機関、それにトラック運転手、先生、タバコ屋、果ては公務員まで、誰も彼もがストライキをする。
 これには二つ理由がある。一つは憲法でストライキの権利が保証されていること。フランスは共産党の力が強かった。極右勢力は第二次世界大戦でナチに協力したと非難されて力を失い、左派が勢力を強めたのである。そこで労働者保護のためにストの権利が規定された。組合員であろうとなかろうと権利は変わらない。憲法で認められた権利だからストによって責任を問われ職を失う心配もない。早い話、「ゴネ得」ならぬ「スト得」の国なのである。
 もう一つはストに対する寛容な国民感情であろう。自分もストをやるかもしれないという気持ちから、自然と他者のストにもやさしくなる。お互い様なのである。

・第三の矛盾:CPEと直接関係のない人間だけがスト
 CPEで直接的なメリットを受けるのは移民の若者である。彼らがストに参加しないのは当然としても、ストに抗議する様子もない。そして実際にストをしているのは、直接CPEに関係のない、組合員を中心とした労働者や学生である。
 フランスの大企業では、労働者は2年半×2回という5年の試用期間を経て、無期限の雇用契約を結ぶ形が多い。よって大部分の大企業労働者にCPEは関係ない。中小企業は日本の終身雇用に近い形であり、やはり労働者にCPEは関係ない。学生にしても彼らが就職面において他より恵まれた立場にいることは事実であり、又、CPEの対象となる26歳近くまで大学に残り働かない可能性だって考えられる。しかし彼らはストをしている。これが最後の矛盾に繋がる。

・最後の矛盾:「自由、平等、博愛」は建前だけ?
 労働者や学生が直接関係のないCPEに反対するのは、多くの移民が労働市場に参入することにより、自らの賃金や福利厚生など労働環境の悪化を懸念するためであり、又、学生にとっては自らの就業機会が狭まるからである。「自由、平等、博愛」の理念はフランス人にしか当てはまらないのだろうか。

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