縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

インドの悲しい現実 ~ レイプ問題について

2014-07-13 22:57:10 | 海外で今
 『女盗賊プーラン』という本がある。盗賊というと戦国時代とか中世のイメージがあるが、なんとこれは現代の話。盗賊団の首領から、1996年に国会議員になった女性、インドのプーラン・デーヴィーの自伝である。
 彼女の人生は壮絶である。彼女はカーストの最下層「シュードラ」の出身(もっともその下というかカースト制度の外側に「不可触民(アンタッチャブル、ダリット)」が存在する)。彼女は教育もろくに受けられず、11歳で嫁に出されるもそこで虐待され家に戻った。が、周りは冷たく、しまいには両親の目の前で男たちにレイプされた。警察は相手にしてくれない。そして彼女は盗賊団に入り、復讐に立ち上がるのであった。

 これだけでは彼女の人生の悲惨さ、あるいは不条理はなかなか伝わらないが、僕はこの本を読み、今の世の中でこんなことがあるのだと大きなショック、衝撃を受けたことを、10数年経った今でもはっきり覚えている。
 しかし、更に悲しいことに、インドのシュードラや不可触民の女性にとって、レイプや警察の無視は日常茶飯事なのである。殺されなかっただけ運が良かったのかもしれない。実際、最近もレイプの後に殺されて木に吊るされた、焼かれた等の記事をネットで見た。犯人たちは口封じのため殺すのが良いと考えているのだろうが、まったく極悪非道としか言いようがない。

 インドでレイプが多い理由は、カースト制度や強い男尊女卑にあると言われる。つまり、最下層カーストやそれ以下の者には何をしても構わない、たとえそれが犯罪であろうと警察も取り合わないという悲しい現実。一方男尊女卑については、女性を男性の付属物としか考えない風習がインドにはあるようだ。夫が死んで火葬されるとき妻も一緒に火に入るサティーという儀式・しきたりが最近まであった。今でも女性が結婚するにはダウリーという多額の持参金が必要である。一般に(男性に?)、女性は男性に逆らうべきではないと考えられているのだ。

 現在のインドではカーストによる差別は憲法で禁止されているが、悲しいかな、差別は厳然と続いている。もっともカースト制度と強く結び付いているヒンドゥー教がレイプなどの犯罪を勧めているわけでは勿論ない。しかし、現世への絶望や諦めが、こうした犯罪に繋がっているのではないだろうか。
 ヒンドゥー教は輪廻と因果応報を基本とする。つまり、人は、死後、天国に行くのでも地獄に行くのでもなく、生まれ変わる。そのとき何に生まれ変わるか、どのカーストに生まれ変わるかは、現世の行為、努力によって決まる。よって現在のカーストは前世の行為の結果であり、変えることは出来ず、甘んじて受けるしかない。これでは、今が最悪だ、これ以上悪くなることはないと考えたとき、その行為を止めるものがない。そんなことをしたら天国に行けないぞ、成仏できないぞ などと言ったところで、インド人の心にはまったく響かないのである。

 では、我々に何が出来るのだろう。インドに行って政府にレイプ問題への対応について抗議のデモをする時間もお金も僕にはないし、そもそも僕の貧弱な英語力では言いたいことの半分も伝わらないだろう。
 僕には、インドで何が起きているのかを知らせることしかできないが、それでも何もしないよりは良いと思い、ブログを書くことにした。


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