縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

サン・セバスチャンでバル巡り(バスク旅行その6)

2017-09-26 23:24:38 | もう一度行きたい
 美食の街、サン・セバスチャン。人口18万人の小さな街に、なんとミシュラン3つ星レストランが3軒! 1つ星、2つ星の店と合わせ、人口当たりの星の数は世界で1、2を争うという。
 が、セレブとは程遠い僕らは、3つ星レストランには目もくれず(というか相手にされず?)、向かうはバル街。正味2日半の滞在で10軒(うち1軒は2度行ったので延べ11軒)のバルに行った。

 バル(bar)とは、以前書いた通り(詳しくは、ジャパバル(?)、恵比寿『たつや』 をご覧ください)、日本の喫茶店とレストランと居酒屋を足して3で割ったような飲食店である。
 バルの聖地サン・セバスチャン、そのバル巡りのバイブルは 植松良枝『スペイン・バスク 美味しいバル案内』。バルのいろはが書かれており、これさえあれば初めてでもバルを満喫できる。サン・セバスチャンの20軒のバルが紹介されており、その店を選べばほぼ間違いはない。
 “ほぼ”と言ったのは、1軒だけ個人的にお勧めしない店があるからだ。それは某キノコを売りにした店。よく雑誌でも採り上げられているが、僕は、普通の人には、つまり美味しいキノコのためなら金に糸目を付けないという人でなければ、お勧めはしない。そう、高いのである。僕は前回行って懲りてしまった。山盛りのキノコには圧倒されるし、確かにとても美味しいが、如何せん高い。バルの良さは、手軽さ、美味しさ、そして安さである。この店は他の店なら2、3軒行ける値段だった。

 さて、詳しいお店の紹介は本を見て頂いた方が良いので、ここでは特に印象に残った店だけ紹介したい。
 サン・セバスチャンのバルには、食べ物を串に刺したり小さなパンに載せた“ピンチョス”主体の店のほか、最近は小皿料理、それもちょっとしたレストラン顔負けの本格的な料理を小皿で出す店も多い。
 前者では何といっても『ベルガラ』。ここはピンチョス発祥の店と言われており、さらに今もなお新しいピンチョスへの挑戦を続けている。カウンターに並ぶピンチョスはどれも美しく、かつ美味しい。極めて完成度の高い店である。バル街から少し離れているが、散歩がてら是非訪れたい店だ。
 一方小皿料理だと『ボルダ・ベリ』。ここは大変な人気店で、料理の美味しさとともに、隣りに来た子連れ客との縄張り争いで印象に残っている。バルではカウンターのスペースを如何に確保するかが最大のポイント。特に言葉の問題がある僕らにとって、お店の人とのコミュニケーションを考えるとカウンター越しに陣取ることが重要なのである。
 あと『アルベルト』の魚介のスープは絶対おすすめ。甲殻類をつぶして作った濃厚な味。身も心も温まるし、日本人には落ち着く味である。おまけに安い! 実は妻が店に忘れ物をし、お店の方がそれを息を切らしながら走って持って来てくれた。そんなやさしく、温かい人柄が料理にも出ているのだと思う。

 最後に“チャコリ”の話を。因みにアクセントは最後の“リ”にある。チャコリはバスク地方の微発泡の白ワイン。酸味が強く、アルコール度数は10%前後と低い。日本で飲むと高いし、おまけに何故かまずいが、現地で飲むチャコリは美味しい。スカッとさわやかな味わいで(注:コカ・コーラではない!)、食事が進む。
 チャコリは注ぎ方がオシャレ。ボトルを頭上に持ち上げ、そこから勢いよくグラスに注ぐ。空気に触れることで泡立ちは強くなり、また香りが立つ。視覚や嗅覚にも訴える注ぎ方だ。ところでビルバオでチャコリを頼んだところ、注ぎ方はごく普通だった。ワインと同じ。どうもこの注ぎ方はサン・セバスチャン特有のようだ。

 「オラ! チャコリ ポル・ファボール!」
 この言葉はバル巡りの入場券。これに笑顔と、チャコリの“リ”を強く発音することを忘れなければ、貴方もお店の方に一目置かれるのは間違いない(かも?)。