縁側でちょっと一杯 in 別府

東京から別府に移住してきました。
のんびり温泉に浸かり、美味しい魚で一杯。
夢に見た生活を楽しんでいます。

ペコちゃんに明日はあるか

2007-03-04 23:55:24 | お金の話
 不二家の消費期限切れ原料使用問題発覚から1ヵ月半が過ぎた。発覚後の状況、次から次へと同社のずさんな生産管理体制が明らかになったことは皆さんご存知の通りである。それが、山崎製パンの技術支援の下、今月初めに加工菓子の生産を再開し、23日からは生洋菓子の生産も順次再開するという。
 まずは目出度しであるが、何分 口に入る商品であり、衛生面の問題という今回のダメージは計り知れない。信用を築くには長い時間が必要だが、信用を失うのは一瞬である。

 最近、同族会社の評判が頗る悪い。不二家、中毒事故のパロマ、業績悪化に苦しむ三洋電機、社内の対立で週刊誌沙汰になっているセイコーインスツル等々。又、ちょっと前になるが西武鉄道も同族経営だった。
 が、即、同族経営は悪だ、と考えるのは早計である。同族会社の中にも良い会社はあるし、逆に一般の会社の中にもひどい経営の会社はある。要はトップに立つ人間が、何を考え、どのように行動するかではないだろうか。

 不祥事を起こした不二家やパロマに通ずる問題は、直接的には危機管理の甘さ、そしてその根底にある価値観のズレだと思う。
 即ち、事件や問題の発生を前にしたとき、外に漏れたら、マスコミに漏れたら大変だ、会社(注:顧客ではない)の一大事だと狼狽する、あるいは(次元が低いが)社長に知れたら怒鳴られる、自分の将来が無くなるといった恐怖心が先に立つのである。
 勿論、こうした傾向は大なり小なりどこの会社にでもある。しかし、そうした状況に直面したとき、会社はどうあるべきか、自分はどう行動すべきかを決める判断軸が、不祥事で信用を失くす会社と、不祥事によるダメージを最小限に止める会社とでは決定的に違うのではないだろうか。

 社長が独裁的な力を持って君臨している会社では社長本位の判断軸になりやすい。同族会社のオーナー社長は絶大な権力を持っており、社長が自らを厳しく律する姿勢を示さない限り、その危険性が極めて高い。社員は都合の悪いことをすべて隠し、耳障りの良いことしか社長に伝えなくなる。その結果、現実を知らない“裸の王様”の社長と、社長がどう思うかを唯一絶対の判断基準とする、つまり顧客のことを後回しにする社員が生まれる。
 誤解してはいけないが、同族経営という仕組みが自ずとこうした悪、弊害を産みだすのではない。それは、そうした行動を引き起こす企業風土というか企業体制を作った、あるいはそれを変えることのできない社長の責任なのである。
 因みに監査でも、会社の内部統制評価で真っ先に着目する、重視するのは、企業の価値観や倫理観、経営者の姿勢、組織体制、人事育成など企業の経営環境、一言で言えば、企業風土、企業文化といったものである。

 で、今回、不二家を支援する山崎製パン。ここは山崎家の会社かと思いきや、それは違った。社長は飯島氏という。と、ほっとしたのも束の間、なんと同社は飯島家の会社、つまり同族会社だったのである。専務は飯島社長の義弟、社長の長男が取締役と、なかなかのものである。
 不二家が以前から資本関係のあった森永製菓ではなく、山崎を支援先に選んだのは、実は、山崎の方が同族経営の度合いが強い点に安心、居心地の良さを感じたからではないか。だとすると、ちょっと心配だ。
 もっとも、山崎製パンのことはよく知らないが、同族会社だからといって捨てたものではない、もとい立派な会社の可能性もある。小さい頃、ちょっとした贅沢の象徴であった、ペコちゃんの明るい未来を祈りたい。
(明日5日より、神楽坂下の不二家でペコちゃん焼きの販売を再開するそうだ。何はともあれ、嬉しい知らせだ。)