泥む、脳髄ー入江まで
(ナズム、ノウズイ)
……許せないことがある
許すべきだという人がいて
不遜の傷みに
強靱な憤りは抑えがきかない
夢なら時またずして醒めるはずが
喉の奥深く滞留し
泥む、
脳髄がある
……入江のひと(たち)よ
その苦悶を代弁するのではないが
許せざるものの根拠は
排砂の滞積によるものかどうか
おそらく比類のないダムの死に水の
答えなき循環性にも
泥む、
魚群の屍があるというのか
渚に
しかし
それでも
うさん臭い
異界からの漂流物は
椰子の実ばかりではない
洗剤用のポリの容器にバケツ
すり減った歯ブラシや破れたポーチ
必死で脱出する意志を波打ち際にひけらかされ
男はひとりあてない海沿いの仮定空間という波間の
霧ふかい夢隣りを走ってみることは愚の骨頂なんだと
まるで行旅死亡人になりそこなって惜しまれるばかりの
夜行列車「北陸」や「能登」号が急に冥土に至ったことぐらいで
新生の故郷喪失者たちよ純情な文学のように歎いてみせるな!
深い負傷も郷土の特権的な幽霊のせいと気づかいながら
水府的な国家側の甘い見識、気弱な双子のダムの
不可解は排砂による裁きの元凶もみえぬまま
行旅死亡人を黙ってはこぶ泥だらけの
孤独に滅びそうで滅びないいまも
静かに波と波が火花を散らす
不安な他国からの贈り物で
あふれる、愚鈍な
わたしと
私の
……二重の許されざるものの
不運を乗り越える道筋は一向に見えず
厳冬期の朝の挨拶として
許せないものの欺瞞に差し出す
掌のうえの
一片の淡雪にも透明な牙の
憤りがあった
……ただ一瞬にして
光に還る眩しい天のしずくを目蓋に受け止める今朝は
泥め、泥め!
こたえなき脳髄(なずき)に
うなずく無縁のまぼろし(死者たち)の
永久に滞留する声なき声の
悲鳴を訊け!
(ナズム、ノウズイ)
……許せないことがある
許すべきだという人がいて
不遜の傷みに
強靱な憤りは抑えがきかない
夢なら時またずして醒めるはずが
喉の奥深く滞留し
泥む、
脳髄がある
……入江のひと(たち)よ
その苦悶を代弁するのではないが
許せざるものの根拠は
排砂の滞積によるものかどうか
おそらく比類のないダムの死に水の
答えなき循環性にも
泥む、
魚群の屍があるというのか
渚に
しかし
それでも
うさん臭い
異界からの漂流物は
椰子の実ばかりではない
洗剤用のポリの容器にバケツ
すり減った歯ブラシや破れたポーチ
必死で脱出する意志を波打ち際にひけらかされ
男はひとりあてない海沿いの仮定空間という波間の
霧ふかい夢隣りを走ってみることは愚の骨頂なんだと
まるで行旅死亡人になりそこなって惜しまれるばかりの
夜行列車「北陸」や「能登」号が急に冥土に至ったことぐらいで
新生の故郷喪失者たちよ純情な文学のように歎いてみせるな!
深い負傷も郷土の特権的な幽霊のせいと気づかいながら
水府的な国家側の甘い見識、気弱な双子のダムの
不可解は排砂による裁きの元凶もみえぬまま
行旅死亡人を黙ってはこぶ泥だらけの
孤独に滅びそうで滅びないいまも
静かに波と波が火花を散らす
不安な他国からの贈り物で
あふれる、愚鈍な
わたしと
私の
……二重の許されざるものの
不運を乗り越える道筋は一向に見えず
厳冬期の朝の挨拶として
許せないものの欺瞞に差し出す
掌のうえの
一片の淡雪にも透明な牙の
憤りがあった
……ただ一瞬にして
光に還る眩しい天のしずくを目蓋に受け止める今朝は
泥め、泥め!
こたえなき脳髄(なずき)に
うなずく無縁のまぼろし(死者たち)の
永久に滞留する声なき声の
悲鳴を訊け!
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