遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「無用の威嚇」

2010-11-26 | 現代詩作品
無用の威嚇



たとえば下駄箱の隅に
追いやられている履き物が
ゲタ、ゲタと笑い
ソーリ、ソーリーと叫ぶ
下駄と草履の下手な擬人化も
無用という存在の否定にはあらずだ
素足美人もいるが
下駄や草履を脱ぎ捨てて
灼熱の渚で溺れる者を救う
安易な想像を超えて
無用なものが威嚇する淋しさも
戯れとおもえば、
無限の遠さをめざすものの中にあって
毎朝、熱心なジョギングの男女が家の前をかけぬける
シューズになんの問題があろう
ゲタ、ゲタと笑い
ソーリ、ソーリーと叫ぶ
つま先一歩か二歩の微妙な差の
スローモーションにも
他人の視線にまどわされることはない
雪国には
暖かい藁の沓もあればゴムの長靴もある
下流も上流もない
厚い情けの夜の瀧もある