遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「神話的」

2010-11-11 | 現代詩作品
神話的ー入院中に散らかしたメモから



未生


(生まれるまえの
解纜に背を向け
雨上がりの
夏の夕暮れにモザイクをかける
うすむらさきの
あの山巓のさびしさ
まだ乾かないジーパンが
孤独な囲繞の風に揺れながら
ゆっくりと移乗する
霊のあとさき
……、
ふりかえる烏兎の速さにあおられて
掘削を待っている
不壊の魂)



冬の人


寒い巷の想像力には限界がある
彼は国家の国語管理者(?)の感性や能力を
あげつろう分けではないし、友人の
国語教師の高い能力を賞賛するのでもない
《冬の人には口がない(の口、
 だから思ったことが云えない(の「云」、
 そしてあれきり会えない(の「会」、》の、
字画も凍える寒冷の朝
立ち往生の囚人の護送車にであった
偶然の記憶にしばられたままで、すべては
異形なもの邪悪なものの他愛なさを
密かに擁護する漢字の生い立ちに
口のない冬の人の哀しみが 滲みでている



抱擁


(いずれ客として
伺います
泉下は未知のところですが
お出迎えは無用
ただ丸木船と櫂をお貸し下さい
ほかに何もいりません
臆病者の気がかりは
はじめて合う曽祖父母の
抱擁だけ
思いっきり嗤って下さい
泣かないで下さい)