遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「白文」

2010-11-25 | 現代詩作品
白文



夜明けに開いた
白文は
午後になれば 崩れる


蜀の馬氏の子による故事では
五人の才名ある 兄弟のなかで
もっとも 傑出していた
馬良 その眉毛の中の明示である
白い異色の不可解さ


まえぶれの霰や雹はなく
いきなり白文を
突きつけられても きみはもはや驚かない


腕を競い合うこともなく
庭いちめんの朝の雪のように
句読・訓点を施さない白字の美しさ
意味などは無用で人煙希にみえてくる
白読のはじまり
 吐く毒でも
 掃く得でもない


真冬の木曽路のさむい民宿で
今朝は 白文の夜明けを向かえたけれど
遠い日の
句読・訓点を 振り返りながら
きみは白眉になる


それも午後には 決別の旅の空が
霙に変わる
未生の 予感もあろう