遙かなる透明という幻影の言語を尋ねて彷徨う。

現代詩および短詩系文学(短歌・俳句)を尋ねて。〔言葉〕まかせの〔脚〕まかせ!非日常の風に吹かれる旅の果てまで。

現代詩「遺響のしぐれ」

2010-11-18 | 現代詩作品
遺響のしぐれ



異境の雨は……異教か……月の遺響そのしずくに、ちがいなく……《ふるさとは遠くに


ありて思うもの》降りしきるしぐれが一瞬に止んで……黒く大きな瓦屋根が濡れて反射す


ると見えて……急に空が曇り……片町方面からふたたびの……しぐれである……コーヒー


店の雨宿りで……《よしや/うらぶれて異土のかたいとなるとても》……杏のすっぱい甘


さが季節外れの口中にひろがり……旅の男は……白髪交じりの店主の……丁寧な金沢弁に


……うなずいている……犀星のしぐれを論じた……菅谷さんの言葉を……ふと思いだす…
 

…金澤は「しぐれ」よりも「みぞれの」のほうが似合うとおもいながら……「みぞれ」の


まだ明るい望みある犀星の詩より……「みぞれ」の遙かに冷たい氷雨のほうが……深い哀


しみが潜んで見えて……金澤……異郷の街だけど……似合っているのではないか……男は


振りかえる……やや明るい薄紫の西の空……時雨のはれた午後のひとときを……《ひとり


都のゆうぐれに/ふるさとおもい涙ぐむ》……断片の日々が……記憶の彼方から……暗誦


していた……亡き母の声か……旅の遺響に……耳を打つ……想いが溢れる……金澤十一月