江戸観光案内

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穴八幡宮

2016-01-09 | まち歩き

穴八幡宮は、新宿区西早稲田に在る神社です。北は早稲田大学早稲田キャンパスに、南は早稲田大学戸山キャンパスに挟まれる形で、早稲田通りと諏訪通りが分岐するところの高台に建ちます。牛込の総鎮守で、江戸名所図会には、高田八幡宮の名で記されるとともに、「世に穴八幡とよべり」との添え書きがあり、切絵図[1][2]にも穴八幡の名が記されていますので、当時から穴八幡の名は広く用いられていたものと想像されます。

この穴八幡の「穴」という名。何とも興味を引かれますが、この「穴」とはいったい何のことでしょうか。答えは、穴八幡宮の建つ台地に開いた洞穴を示しています。穴八幡宮が配布する「穴八幡宮参拝の栞」では「神穴」と紹介される穴で、寛永十八年(1641年)に、宮守(江戸名所図会では社僧(=神社で仏事を修めた僧侶))の草庵を作るために山裾を切り開いたときに発見されました。この神穴は、現在は、出現殿(平成十八年竣工)という建物内部に祀られています(非公開)。

穴八幡は、鬼平犯科帳(二十二)「迷路」(池波正太郎著、文藝春秋)にも登場する神社です。迷路の「法妙寺の九十郎」の章では、主人公長谷川平蔵の息子辰蔵が、剣術の稽古帰りに穴八幡前の茶店で甘酒を飲む場面があります。稽古嫌いの辰蔵でしたが、最近は腕を上げ、茶店帰りの夜道で突如曲者に襲われるものの、難なくこれを撃退します。

穴八幡が登場するその他の作品

  • 鬼平犯科帳(七)、隠居金七百両、池波正太郎著、文藝春秋
  • 鬼平犯科帳(十)、追跡、池波正太郎著、文藝春秋

 

[1] 大久保外山高田辺之図(嘉永四年/1851年)
[2] 牛込市谷大久保江図(嘉永七年/1854年)

 

穴八幡宮 東京都新宿区西早稲田2-1-11
東京メトロ東西線早稲田駅から約200m 徒歩約3分