江戸観光案内

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新大橋

2013-12-07 | まち歩き

歌川広重の浮世絵に「大はしあたけの夕立」という傑作があります。題名からは思い出せない人でも、大きな橋に雨が降る絵をどこかで目にしたことはあると思います。この浮世絵に描かれた橋が、隅田川に架かる新大橋です。


新大橋は元禄六年(1694年)に、千住大橋、両国橋に次いで隅田川に架けられた三番目の橋で、当時の橋は現在よりも200メートルほど下流に在りました。新大橋の名前は、当時は大橋と呼ばれていた両国橋に次ぐ橋ということで名付けられたものです。


「大はしあたけの夕立」は隅田川西岸から新大橋を眺めた構図で、「あたけ」は画面奥に見える隅田川東岸の幕府の御船蔵が在ったあたりのことを言います。かつてこの地に、幕府の巨大軍艦・安宅丸(あたけまる)が係留されていたことにちなむ地名です。


藤沢周平著「孤剣 用心棒日月抄」(新潮社)の一章「債鬼」の中では、雇い人の強欲さに嫌気がさした主人公・青江又八郎が、西本願寺近くに住む雇い人から手間賃を受け取った後に、新大橋に向かい、火事で焼けた両国橋の片付けをする工事場で働く用心棒仲間の細谷と米坂を訪ねる場面が登場します。また、藤沢周平著「消えた女」(新潮社)の一章「やくざ者」の中では、「あたけ」が登場します。青江又八郎は、「大はしあたけの夕立」に描かれた橋を渡り、伊之助は「あたけ」の辺りを探っていたということです。


新大橋西詰 東京都中央区日本橋浜町2-57-7

都営新宿線浜町駅から約400m 徒歩約5分


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夕立ならぬ雪の新大橋