江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

「肥前水虎語」での河童  

2021-06-20 19:33:44 | カッパ
「肥前水虎語」での河童  
                         2021.6
肥前の島原の神社の神主の某が語ったことである。

肥前の国にも河太郎が多くいる。
年に一、二度ぱかりは、必ず人を海中に引き入れて、精血を吸う。その後、死体を必ず返すそうである。

誰が、このことに気が付いたのかは、分らないが、こんなことが伝えられている。

河童に殺された死体を棺に入れず、葬らず、ただ板の上にのせ、草庵を結んで、死体をそこに安置する。
そして、香花をそなえずにそのままにし、この屍の朽ち果てるまでの間に、その人を捕らえ殺したカワタロウの体は爛懐して、おのづから死に至る。

このことを知らなけらば、カワタロウを人間の手で捕らえることは、出来ない。
これは、大変に不思議な術である。

カワタロウは、体が腐りつつある間、かの死骸を置いてある草庵の周囲を、悲しみ泣きながら回る。
人には、その姿が見えず、ただ声のみが聞こえる、と言う。

もし誤って、誰かが香花をそなえれぱ、カワタロウは、その香花をとって帰る。
それを、食べれば、体は、腐敗しないとの事である。
死体を、棺に入れて葬れぱ、この場合も、カワタロウの体は、腐敗せずに死なない、という。

おおよそカワタロウは、身をかくす術を得ているので、死ななければ見る事ができない。
カワタロウは、力が強く、姦悪の水獣であると言う。

以上
「肥前水虎語」 古事類苑動物部の7.河童 より
「肥前水虎語」とは、肥前=佐賀県での水虎(カッパ)の物語、と言った感じ。

閑意自語 近江水虎語

2021-06-20 19:31:43 | カッパ
閑意自語 近江水虎語    
               2021.6            
近江の人が語ったことである。

湖水にカワラ(水虎、俗にカワタロウ、カッパなどと言う)が多くいる。
人をとり、あるいはかどわかす。又は夜更けに、人の門戸に来て、人をよびなどする。
これを避けるのには、麻がらを置いておけば、寄ってこない。
また、ささげ(大角豆)を嫌う。これを身に付けておけば、近寄ってこない。
又、舟に鎌をかけるのも、河童を避けるまじないであると言う。

「閑意自語 近江水虎語」 古事類苑動物、河童 より

駿國雑志(二十五巻)での河童 

2021-06-20 19:28:33 | カッパ
駿國雑志(二十五巻)での河童  
2021.6 
河童については、このようなことが伝えられている。
庵原郡巴河(いはらぐん ともえがわ:静岡市清水区巴川)にあり、里人は、河童と呼んでいる。その姿其形は五六歳の小児のようであり、全身が生臭く、肌は滑りて鯰の皮膚のようである。眼は円く、瞳は尖っていて光り、手足の指水かきがあって鰭(ひれ)に似ている。
いつもは水底に潜んでいて、姿は現さない。
たまたま陸に上がって人と争う時は、力が強く、走るのを追えば、早くて捉えられない。
或いは、組みあって勝つ事があれば、発熱して苦しみ煩う。
もし河童のために害せらる者は、必ず肛門より臓腑を引出されて、死を免れられ事はない。云々。

河童についての風説は、どこでも同じようであろう。

以上、「駿國雑志(二十五巻)」古事類苑動物、河童 より