江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

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新説百物語巻之五 3、神木を切りてふしぎの事

2023-07-02 17:45:21 | 新説百物語
新説百物語巻之五 3、神木を切りてふしぎの事
                 2023.7
丹州(丹波:京都府北部)の事であったが、一村の郷士で、気も丈夫なる者がいた。
その村の社(やしろ)には、決まった神主はいなくて、その村より、老婆一人に???をわたして世話をさせていた。

この郷士は、我が屋敷を新築しようと、
「この宮の前の大木を切って、新築の材木としよう。」と申しこんだ。
それを、彼の老女が、
「この大木はいつの頃よりといふことを知らぬ古い木ですよ。切ったら、祟りがあるかもしれませんよ。」と止めさせようと言った。
しかし、郷士は、気にもせず、あっさりと切り倒した。
そして、大工事は、ほどなく完成した。
「崇るのも、人によるものだ。」と、不信心な事などを言った。

一二ヶ月も過ぎると、彼の郷士は、少しずつわづらい出し、時々はとんでもない事などを口ばしったが、終に程なく、死亡した。
淋浴して棺に入れ、僧を頼み、寝ずの番の人を置いあた。
しかし、夜中に幾度ともなく棺よりはい出て来て、つけ木に火を付け、そこらを見あるき、又は帚を持って座敷などを掃除する事が、夜の内に六七度であった。
「とにかく、早く葬儀をして、埋葬しよう。」と、一門の者たちは言って、その明くる日に葬礼をした。

その屋敷の門を出るやいなや、稲光が何度もした。
大きな雷(かみなり)であったので、一向に目も明けられなかった。
やっとのことで、埋葬して帰って来た、とその村の人が、語った。

  


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