江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

江戸時代を中心とした、面白い話を、探して、紹介します。

猫が嶽の妖描  「土佐風俗と伝説」

2023-02-25 22:40:52 | カッパ

猫が嶽の妖描

             2023.2

今は昔 香美郡奥西川(おくにがわ)村に猫が嶽と言って、断崖がそそり立って、高さは百間に達し、古
木老松が生い茂げり、かって人跡の至ったことがない難所があった。

古(いにしえ)よりの話に、ここに猫王と言う大猫が棲息し、その大さは、三歳駒のようであった。
数多くの小猫がいて、その手下になっていた、と言われていた。

今より一百五十年(この書が出版されたのは、大正14年、1925年)前の昔の明和九年(1772年)に、隣村の富家(ふけ)村の男で与三右衛門と言う二十五六歳の元気な若者が、この嶽下(たけした)を通った。
ふと仰ぎ見れば嶽の岩角に梟(フクロウ)が一羽止まっていた。
もともと、与三右衛門は狩猟好きで、ちょうどその時猟銃を一挺、肩にかけていた。
それで、これ幸いと、猟銃を取下ろし、ねらいすまして打ったが、美事に命中した。
フクロウは落下したので、取りに行ったが、梟ではなくて蝦菜(えびな)を束ねたものであった。
奥三右衛門は合点が行かず、と上の方を見あげれば、梟は傍の木の枝にいた。

更に一弾、打ったが、又命中して、落ちた。
それを拾いあげれば、鞠(まり)のような木片であった。

与三右衛門も少し不思議に思い、こんな場所に長居は無用と、元来た道を顧りみると、梟は依然として元の岩角にとどまっており、何事もなかったかの様子であった。

世人は、このことを聞いて、これは猫王配下の若猫等が退屈まぎれのいたずらに、ちょっと、人を化かしたものだろう、と言いはやしたとのことである。

より



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